第6話 どこかで会った人?と初めて会う人
「きみ、オレとどこかで会ったことある?」
目の前にいた男の人が私に声をかけてきた。どこかで…そう言われれば会ったことはあるのかもしれないが記憶力に自信があるわけでもない…一度や二度すれ違った人をカウントするのでなければ全く覚えがなかった。
「汐路先輩、ひと昔前のナンパの手口ですよ」
香織が苦笑しながら話しかける。
「あれ、立川?じゃあ立川の友達?」
「そうですけど…知ってて声かけたんじゃないんですか?」
「うん…いや、あっ、ごめんね、困らすつもりはないんだけど…大学で何回か見かけてて…こんなところにいるからびっくりして」
「こんなところって…彼女には今日手伝ってもらってたんです」
「同じ大学…なんですね…」
「その反応…ってことは…」
「知らないってことですよ。史愛はっきり言っていいよ」
「ごめんなさい、会ったことはないと思います」
「そっか、そうだよね…うーんそっか」
「史愛、この人は汐路先輩、男子ラクロス部に在籍してて、決して怪しい人じゃないから。女子の指導もしてくれてて今日は手伝いに来てもらってたんだ」
「…うん」
「先輩、彼女は私と同じ学部の神木史愛です。今日は人が足らないって言うんで無理言って来てもらったんです」
「…かみきしあちゃん」
「仲良くなりたいなら正攻法でいかないと嫌われますよ」
「確かにそうだな、立川お前いいこと言うな。あの、俺、汐路って言います、よろしく」
「神木です、よろしくお願いします」
なんとなく挨拶をして、その場は終わった。帰り道、香織がご飯を奢ってくれると言ってくれたが思ったより体力を消耗してて断った。家に早く帰ろうと薄暗い道を早歩きで帰ってると車が私の横で止まった。
「史愛!」
助手席の窓が開いて名前を呼ばれた。
「悠乃?」
車に乗っていたのは悠乃で、道の途中だから早くと促されて後部座席に急いで乗りこんだ。
「史愛、こちら桐生先輩」
運転席の男性が軽く会釈したのに合わせて会釈する。
「もう家にいると思ってたら、歩いててびっくりした。今日言ってた話覚えてる?」
「うん」
「それが桐生先輩で…」
「でも来週って…」
「それが今日、いろいろあって15時以降の授業が飛んだんだ」
「飛んだって…なくなったってことだよね?なにかあったの?」
「ああ、ちょっとした事件があって授業どころじゃなくなったんだ」
「事件?!なにそれ」
「まあ、それは後で教えるよ。まあそれで時間が空いたから先輩にお願いしたんだ。今日ならゆっくり時間があるしね」
「そっか、でもどこで話す?家は…」
「わかってる、史愛んちはみんなが心配するから、俺んちで」
あと少しで我が家だったが、手前の道を曲がって悠乃の家に向かうことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます