第40話  笑い声、高らかに

「エノキさん!」


イロハ先生と、ぼくは重症なエノキさんに駆け寄った。

エノキさんの黒い斑点は、みるみる内に大きくなり今にも全身を飲み込もうとしている。


「くっ、しゅ、修行がまだまだ、、、たりないっす」



「エノキさん!エノキさんのおかげで、ヨコグラさんはお客様たちと一緒

避難ができたわ」


「怪異も、イロハ先生とぼくで、なんとか閉じ込めました」



「ぅうぅゔ」



「エノキさん!喋らないでいいから!」


「とにかく、何か応急処置をしましょう」



ぼくらが、エノキさんの手当てをしようと動こうとしたとき、

イロハ先生の表情が変わった。


「待って、何か、何か嫌な予感がする」


「嫌な予感?」


「えぇ、精霊のカンってやつよ」




「わっはっはっは!!!!!」

だ、だれ?!

「い、いけません!お客様!」

ヨコグラ師匠の声だ!

「お客様には、安全な場所へ避難していただかないと・・・」


「あーーーーー!お風呂のときの!!」

イロハ先生の叫び声も虚しく、高笑いの人は続けた。


「避難?はっはっは!笑わせるな!最強で最高な妾に向かって !怪異はどこじゃ、怪異は!わっはっは!なぁ?アスナロよ」


「はぃぃぃぃぃぃぃぃ!お師匠様ぁぁ!怪異を見つけてやりましょう!」


「ヒノキ様、ここを一刻も早くお離れになりましょう!」

ヨコグラノキの説得も空しく。


「アスナロ!構うな、探せ!探すのじゃ!こんなに面白いことはない。ん?んん?」


ヒノキは、こちらの存在にようやく気がついた。


「エノキ?そなた、息災か?」


「あのねぇ!!アンタ!無事なわけないでしょ!?状況を見て分からないわけ?」


イロハ先生は迷惑そうな表情を浮かべた。


「はっはっは!エノキよ」


ヒノキはしゃがみこんで、エノキの顔を覗き込んだ。


「そなたがやられるとはな。よっぽどの不意打ちを喰らったか、もしくは現を抜かしておっかじゃな。はっはっは!面白いな。どれ。妾がその怪異を懲らしめてやろうじゃないか」


そういうと、ヒノキとアスナロはあたりをくまなく探した。


「ここか?」

イスやテーブルの下を覗き込む。

「ここかのぉ?」

引き出しの中も探していく。


「ふむ、おらん。ではここじゃな」


あの扉に手を掛ける・・・。


「う!!そこはダメだ!扉を開けたら怪異を閉じ込・・・」


と言い終わらないうちに、


ガチャっ!



「あぁ!」


「あぁ!」


イロハ先生とぼくが叫び声をあげるのは、ほぼ同時だった。


「やめろーーーー!」


扉の隙間から、あの黒い液体めいたものがまた飛び出してきた。


ぷしゅぅぅぅぅぅう!


叫び声をあげたぼくらの方へ襲いかかってくる!


「よ、よ、よけろーーーーー!」


「わっはっはー!!出たな、怪異」


ヒノキは、ニヤリと笑みを浮かべ、


「宴じゃあー!派手にやるぞぃ、アスナロよ」


「はいぃぃぃぃぃぃぃ!お師匠さまぁ!!!」

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