第11話

 今俺は、デカい土の塊の上に横たわる半裸の美少女を凝視している。


 絵面としては最悪に近い。


 社会的な死一歩手前だ。




 でもさ、これただの人形だから!リアルだけどさ!


 いや、ダッチワイフって考えると猶更ヤバいか?


 うーん……。




 現実逃避はやめよう。


 とりあえず、魂を付与してやんねーと。


 万が一誰かに見つかった時に俺は悪くないって擁護してもらう必要がある。


 俺がどれだけやってない!って言った所で誰も聞いてくれないだろ多分。




 一応材料が神粘土だから、腐ったりはしないっていうのは直感的にわかる。


 それでも、もし誰にも見つからないにしても人間一人運ぶのも面倒だし、自分で動いてくれないとなぁ。


 ただ、全くの未経験で女神様の依り代に魂付与するのもちょっと怖い。




 というわけで、練習用にもう1人女の子型の人形を作ろう。


 そうだなぁ、とりあえず年齢設定は18歳にしておこうか。


 合法だよ?


 それ以外の設定も考えないとなぁ。




 おっぱいは大き目。これは外せない。


 だれか一人だけ小さいなんて可哀想だ。


 いや、俺は割と小さいのも好きだけど、女の子自身がどう思うかを考えるとさ?これは慈善事業なの。




 身長は高めにしよう。


 165cmから170cmって所か?


 今のダロス君よりちょっとだけ高めだけど、背伸びすればつり合いとれそうな絶妙な関係がいいかな。


 別に下心とか無いよ?


 お姉さんと男の子の関係性に憧れがあるとかそいうわけじゃないよ?




 手足はスラっと長くて、スポーツ万能。


 筋肉質だけど、服を着てればわからない程度で。


 ただ、腹筋はちょっと割れてる。ちょっとだけだ。


 バッキバキに割れてるのは好きじゃない。


 ……あ、女の子自身がそうじゃないかなってことね?




 顔は、クールなタイプが良いな。魔法が使えたら絶対氷魔法の使い手って感じのビジュアルがいい。


 でも、戦闘方法は近接が得意なほうがいいな。


 これは、純粋に俺たちを守るボディガード的な事をしてもらいたいからだ。


 当然、クソデカい武器持たせたいね。




 髪の毛は、銀髪のロングかな?目は赤にしよう。




 体の作りは、1/1 アフロディーテを参考に限りなく人間に近いものにする。


 というか、他の作り方が今のところ分からないからこうするしかない。


 アフロディーテ様から押し付けられた知識で作っているわけだが、このまま作ると魂さえ付与すれば妊娠出産まで可能らしい。


 神様の技術怖い。


 でも、下手に弄ってバランス崩れても可哀想だから、やっぱりこのまま作るか……。




 神粘土を出現させる。


 今日はもう精神的に大分疲れてきたので技名叫ぶのは無しだ。


 人一人分出現させたら、すぐに人形生成で女の子型に成型する。




 うん、とてもキレイにできました。




 いやだからまた全裸だよ!


 服も一緒に作ればよかった!




 再度神粘土を出現させて衣装を考える。


 冷静に考えると、この状況なら競泳水着が一番だろうか?


 うん、一般的な女冒険者みたいな格好にしておこう。




 革製っぽい地味なパンツ、麻布っぽい地味なシャツ、そして皮っぽいものでできた鎧を装着させた。


 見えないけど下着もちゃんとつけたぞ。


 これ全部粘土製です。


 多分本物より数段頑丈だけど。




 さぁ!お楽しみの魂付与だ!


 女神様的にはランダム生成がお勧めって言ってたし、そうしてみよう。




 魂付与を発動すると、頭の中に色々な項目が浮かび上がる。


 ……いやいや、色々ありすぎてわかんねーよ!


 なんだよこの『義理のお兄ちゃんが幼馴染の女の子が好きなのが分かってるけど、諦めきれない14歳の女の子』ってやつは!?


 こんな細かい設定まであんのかよ!?




 よし、ランダムで行こう。


 あーそれと、自殺禁止と俺以外との性交禁止も入れといた方が良いんだっけ?


 できるだけ本番に近いものにしておかないとな。


 これに関しては、ランダムの場合あんまりイメージを固める必要が無いらしい。


 人形生成と比べるとガバガバで楽だ。




 練習という事で、気軽に魂付与を実行する。


 さてさて、どんな娘になるかな?




 様子を伺っていると、練習用女の子型人形の目が開いた。


 どうやら、魂の付与は成功したらしい。




「初めまして。キミを作ったダロスだ。意識はある?」


「ハイっス!ジブン!精一杯主様のために頑張るっス!よろしくお願いします!」




 ……ん?


 氷の微笑が似合いそうなビジュアルにしたのに、炎タイプの技しか使えなさそうな口調だぞ?




「あー、うん。よろしくな。因みに名前ってあるの?」


「名前っスか!?それは主様が決めてほしいっス!」


「そっか。じゃあ、順番的にアフロディーテ様が6号だから、7号……ナナセにしよう。」


「了解っス!ジブンこれからはナナセって名乗るっす!」




 暑い。唯々雰囲気が暑苦しい。


 美人だし、作ったの俺だから許すが。




「ナナセは、特技は何かあるのか?ランダムで魂作ったから俺もわかってないんだ。」


「殴り合いなら負けないっス!」


「そっかー。」




 今度何か武器を持たせないと。


 野生すぎる。


 あとは、テニスとかも得意かも?




「ナナセ、これからアフロディーテ様の依り代にも魂付与するから、その間周り警戒しててくれ。」


「了解っス!」




 まあ暑苦しいけど、面白そうだから嫌いじゃないし、ランダム設定はガチャ感があっていいな。


 魂ガチャとか神々の遊びっぽい。




 練習は、問題なく成功できたという事にして、サクッと本番行こうか。


 自殺禁止と俺以外との性交禁止設定にしてGO!




「おお!ジブンの妹が生まれるんスね!?」


「妹……まあそうか。体は先輩だけど、魂は妹でいいか。」


「……あ!ちょっとぴくぴくしてきたっス!」


「うんそうだな。」


「目開いたっすよ!おめでとうっス!」


「うんうんありがとう。」




 中々騒々しい。


 鬱になってる時には便利そうだなコイツ。




「気が付いたか?俺はお前を作ったダロスだ。自分の事が理解できているか?」


「…………はい。」


「お前の体は、女神アフロディーテの依り代だから、自分を大切にするように。まあ、依り代じゃなくても自分を大切にしてほしいとは思ってるけど。わかった?」


「…………はい。」




 うーん、今度はすごい大人しいな。


 喜怒哀楽あるんだろうか?




「お前の名前は、そうだな……ガラテアにしよう!」


「ガラテア……わかりました。」




 お?少し笑ったな。


 めっちゃ可愛い。


 流石俺製アフロディーテボディ。




「……あの。」


「どうした?」


「私は、ここで主様の子を孕めばいいのでしょうか……?」


「……どうして……?」


「……え?いえ、服が……大事な所が隠れていないので、てっきりそういう目的で生み出されたのかと……。」


「うんちげーから。服は今作り出すから待ってろ。」




 俺の上着着せただけだったの忘れてたのは悪かったけど、そんなにぐいぐいしたい雰囲気出てるんだろうか俺は……。


 とりあえず適当にワンピースタイプの服を作って着せておいた。


 999円で売られてそうな服でも、美人でスタイルもいいと似合って悔しい。




「今日は、もう疲れちゃったからこのまま帰るよ。先頭は、俺が操作する3号で、その後ろが俺。次にガラテアで、殿はナナセだ。ついでにナナセは、食えそうな獲物見つけたら狩っておいてくれ。」


「ハイっス!」


「……わかりました。」




 よし帰ろう。太陽の位置的にまだ朝の9時頃だけど、本当に疲れた。


 頭ダロスしそうになって、女神様降臨イベントみて、魂2つも作ったからな……。


 大型ロボ……作りたかったなぁ……。


 混じりけの無い神粘土つってもやっぱり限界はあるだろうし、20mは無理だよなぁ……。


 次作る時は6mくらいにしとくか。




 通ってきた獣道を逆にたどり、森を抜ける。


 途中、ナナセがウサギを3羽と、謎のデカい鳥を1羽狩っていた。


 素手で。


 うん、こいつは普段は好きに狩りさせておこう。


 その方が楽しんでそうだ。




 小屋にたどり着いたので、中に入る前にナナセが狩った獲物の処理をしてしまう。


 ナナセも生まれたばかりだというのに知識があるらしく「任せてくれっス!」とか言っていたのでその通りにする。


 素手で腹を掻っ捌いて内蔵取り出してるのは見なかったことにしよう。


 俺がウサギ1羽片付ける間に残りを全部処理してたのはなかなかいいな。




 井戸で汲んだ水で手を洗ってから小屋に入る。




「ただいまー。」


「「おかえりなさいませ。」」




 美少女2人に笑顔で迎えられてしまう。


 いやー、幸せだなー。


 幸せ過ぎてもうすぐ死にそう。


 サロメは見た目クールっぽいのにデレデレの美人だし、イレーヌちゃんは、優しそうな感じと凛とした感じが共存してて素晴らしいね。


 流石社交界で人気なだけあるわ。




「…………。」




 よし、スルーしておこう。


 朝ごはんまだだったし、さっきとってきた肉で朝食の準備だな。




「ダロス様、イレーヌ様がお待ちです。」


「はい。」




 ダロスは回り込まれてしまった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る