第39話 ステンシルアート

 もうすぐやってくるクリスマスに向けてクリスマス飾りの進むフェルーナ、今日も閉店したあと、飾り付けをする僕たち・・


 今日のフェルーナはイズミちゃん/梨絵ちゃん/薫ちゃんの3人体制だった。


>閉店後・・

「店のクリスマス飾り、もうちょっと早めないとクリスマス間に合わないわね」

 店の状況を眺めながらイズミちゃんがボソッとつぶやいた。

「そうよね、街はもう完全にクリスマスムードって感じなのに、ウチはまだ飾り付けの途中・・」

 イズミちゃんに同意するように梨絵ちゃんも・・

「そもそも出だしが遅すぎだったわ、いまからステンシルアートをするようじゃ、完全に出遅れね」

 薫ちゃんも大きめのバックから大学から借りてきてくれたステンシルを出しながらキビシめのひとこと・・



 そんな感じで薫ちゃん達がステンシルアートにとりかかろうとしてるところに今日は非番のタミーちゃんがやってきた。

「おつかれ~」

「あれ? タミーちゃんどうしたの、こんな時間に?」

「え? イズミから閉店後クリスマス飾りをするって聞いてたから来たのよ、あんたに任せたらダッサダサにされそうで心配なのよ!」

「あぁ、そうですか・・」

 タミーちゃんに来て早々キツ~イ一撃をくらい、僕は意気消沈で倉庫へ逃げた・・

「まぁ、確かに僕が飾り付けなんてしてもダサいモノにかならない気もするけど、手伝いくらいはできるはずだけど・・」


 僕が倉庫でかたずけやら荷物の整理をしてると、店のほうがなにやら騒がしい・・

「店のほうが賑やかだけど、何かあったかな?」

 僕は店が気になって倉庫の作業を一時中断して厨房を覗いてみた、するとフロアのほうから二人分の声が聞こえてきた。

「この声は薫ちゃんとタミーちゃんだな、いったいどうしたんだ?」

 僕は気になってフロアのほうを覗くと、そこでは薫ちゃんとタミーちゃんがステンシル画の位置や配置のことでぶつかっていた。


>フェルーナフロア

「いやいや、そこはバランス的に無しよ、こっちにするほうが絶対イイ!」

「いいえ、ここに空間があるからここの画が生きてくるのッ!」

「ここがこんなに空いたら、バランス悪すぎでしょ、センス無しねっ!」

「わたしは現役の美大生なの、美的センスはタミーには負けないわッ!」

「え~、これで~?? あんたホントに美大行ってるの~?」

 薫ちゃんとタミーちゃんが罵り合ってる、まさに女の戦い!

「これは触れないほうがよさそう・・」 

 僕は厨房から覗くだけにして、すぐさま倉庫へ戻ろうとした、しかしそれをタミーちゃんに感づかれてしまった。

「あ、ユウト、ちょっと来て、あんたはどっちがいいと思う?」

(あぁ~、見つかっちゃった・・神様~お守りくださ~い)

「え、え~と、何がイイって言ってるのかなぁ、ハハハ」

 僕はマズいとこを見つかっちゃったって思いながら、フロアに出た。

 僕が薄ら笑いをしながらフロアに出たこともタミーちゃん的には不満なようで・・

「ユウト、ちゃんと見て意見を聞かせて!」

 と語気が強い・・

「わかったよ、で、何について言い合ってたの?」

「ここのステンシルアートだけど、わたしは空間を活かしたほうが優雅に見えると思うんだけど、タミーちゃんはここにも雪の結晶の画を入れるほうがイイて言うの、ユウト君はどっちがイイと思う? 男子目線の意見を聞かせてくれる?」

 空間を生かしてとかかなりハイレベルなことを聞いてくる薫ちゃん、さすが美大生!

 でも、ダサダサセンスって言われてる僕にそれ聞くかなって思いながらも、一応僕も意見を言ってみようと思って、しっかり窓ガラス全体を見渡した。

「どう?」

「ユウト?」

 ふたりはせっつくように僕の左右から迫ってくる。

 僕はどっちの意見に合わせても、後が困るのが目に見えてるので、ここは折衷案で乗り切ることにした。

「え~と、ここの空間は空いてることがスッキリ感に繋がる感じがするよ、でもお客さんによっては空き過ぎって思う人も出てくると思うんだよね、だから、ここには小さめの画を配置したらいいんじゃないかな? どう?」

 僕は自分で言ってる案に自信がないもんだから薫ちゃんとタミーちゃんの顔を伺いながら恐る恐るだったんだけど・・

「ふ~ん、小さい画を配置ね、まぁそれならイイと思うわ、たまにはいいこと言うのねユウト」

「やっぱり意見は多く出してみるほうがいいわね、小さい画を配置するなんてわたしには思いつかなかったわ、ユウト君グッジョブ!」

と薫ちゃんから好評価&満面の笑みをもらった

(うわぁ~、薫ちゃんのほほえみイイなぁ~、疲れが消えちゃったよ~)


 僕のとっさの思いつきでタミ―VS薫のステンシルデザインバトルは決着できたわけだけど、それでも僕にはクリスマス飾りについては何も求めてきてくれず、僕はその後もひたすらに倉庫作業を続けるのでした・・・(泣)

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