第29話 実は優しいタミー

 フェルーナの慰安旅行先でタミーちゃんにちょっとしたイタズラをして泣かせてしまった僕、そのせいで他の4人からの評価も下がったのは当然の結果だった、イズミちゃんは「経験が足りないから仕方ない」とお姉さん目線・・・


 慰安旅行は一泊二日、今日は近場を楽しんで夕方帰るだけだったはずなんだけど、昨夜のタミーちゃんの一件で僕はとてもじゃないけど残り時間を楽しめる気分じゃなかった・・

 イズミちゃんたちは5人がまとまって、女子らしくいろいろな店を覗いてまわってる、そこから数メートル後ろをひとりでトボトボついて行く僕、傍から見たら僕はどう見えてるんだろう?

「こんなことになるんだったら、来ないほうがよかったよな・・・」

 僕が独り言をつぶやくと、それに反応したのは意外にもタミーちゃんだった。

「ユウト、どうしたのよ? 元気出しなさい! せっかく旅行にきてるだし、楽しまないと損ヨ!」

「えっ? ま、まぁそうなんだけど・・タミーちゃん、夜のことは悪かったよ、ゴメン・・」

「あぁ~、あれね、わたしって小さい頃アメリカで暮らしてたから、あそこみたいに古民家風って苦手なのよね、だからユウトに頼っちゃったってわけ、ユウトにはかえって悪いことしたわね、わたしこそゴメンさないね、ウフッ」

 タミーちゃんからゴメンなんて言ってくるとは想像もしてなかったから僕は一瞬耳を疑った・・・

「え? え~と、タミーちゃんがゴメンなんて言うことじゃないよ、あれは全部僕が悪かったんだからさ、ホントにゴメン!」

 僕はこう言って深く頭を下げた。


するとタミーちゃんはつづけて・・

「ユウトってホントに優しいのね、あの時もストーカーするためにフェルーナを覗いてたわけじゃないんでしょ?」

「えっ? あの時? あぁ、初めのことか、あれは夢にタミーちゃんが出てきたから・・」

「それは聞いたわ、それで心配になって・・だったわよね?」

「うん・・」

「実は、わたしもユウトが言ってた理由を聞いたときは疑ったけど、そのあと疑いは無くなってたのよ」

「そうなの? じゃあ、疑ってないの?」

「えぇ、まぁ、今はユウトへの変な先入観みたいなものはないわ、でも勘違いしなで、わたしはイズミや薫のようにユウトのこと好きって言ってるわけじゃないから、判って?」

「あ、あぁ、わかってるよ・・」

「素直でよろしい、ウフフ」


 イズミちゃん達から少し離れてタミーちゃんと昨晩のことを話してると、イズミちゃんがそれに気付いて近づいてきた、タミーちゃんはそれを見て、イズミちゃんと入れ替わるように小走りで薫ちゃん、梨絵ちゃんのほうへ離れていった。

「あら、ユウト君、タミーちゃんと何話してたのかしら?」

「あ、え~と、昨日の夜のことを謝ってたんだよ」

「ふ~ん、それでタミーちゃんはなんて?」

「うん、許してくれるって言ってた」

「あら、良かったじゃない、まぁ、言葉ではきつく言うけど、ああ見えてタミーちゃんは優しい子だからね」

「うん、それと・・最初のストーカーの疑いのことも、もう疑ってないって言ってくれた」

「そっちも解決したのかぁ~、ならこの慰安旅行も十分役に立ったっていえるんじゃないかしら? ウフッ」


 そう言いながらイズミちゃんは絵里ちゃんたちの元に戻って行った。

「あぁ、そろそろお昼よ、この近くに美味しいお店があるの、そこへ行くつもりよ、ユウト君も気に入ると思うわ、ウフフ」


「タミーちゃんとは少しだけ距離感が縮まった、でも、完全に分かり合えるまのはまだ先って感じかな・・」

 僕はこれからの女子たちとの関係性をいろいろ考えながら、イズミちゃん達について行って美味しいって言ってた店でお昼を食べた・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る