叶ったけど敵わない
フレンド申請したであろう人のプロフィールにはひらがなで3文字 「はるか」 とあった。
このアプリではどうやらフレンド申請をする際に自己紹介として短文を同時に送れる機能があるらしく、一言メッセージ、と書かれた欄にはこう書かれてあった。
『結城、だよね?このメッセージが届いちゃったってことはもう私はとっくに死んでて結城もそれ知ってるんだもんね、ごめんね。だけど前に友だちが教えてくれたの、もし自分が死んだとき自分と両想いの人が居たらその二人のスマホにチャットアプリが入るんだって。私このこと全然信じてなかったけど本当なんだね。結城が私のこと強く想ってくれてる人だなんて思いもしなかったよ。』
俺はしばらく放心状態から抜け出せなかった。
死んだはずの春香から連絡が来ている。
春香と両想いであることが利用条件のアプリが俺のスマホに入っている。
春香とまた喋れる...
春香と、春香に...
想いを伝えられる。
叶った。叶っちゃった。
いきなり人生のどん底に突き落とされたかと思ったが少しだけ回復できそうだ。
早速フレンド申請を認可してこちらからもフレンド申請を送った。
すぐに認可され、今までなかった 「チャット」 と書かれたアイコンが出てきた。
俺はすぐにそのアイコンをタップし、春香にメッセージを送った。
『本当に春香なのか?』
『逆に私が聞きたい。本当に結城なの?』
『俺は本物の結城だよ、ていうか春香と両想いっていう真実と春香とまた喋れるっていう真実が大きすぎてまだ実感湧いてないんだけど』
『それ私もびっくりしたんだよね』
『というと?』
『嫌われてない自信はあったけど好かれてる気しなかったもん』
『大好きだけど?』
『だって笑ってなかったじゃん、私達が付き合ってるってからかわれたとき。』
『だって本当に好きだったからこそ、笑えなかったんだよ。』
『私は嬉しかったけどね?』
『春香が"そんな関係じゃないよ"って言う度悲しかった。』
『そんな関係になりたいけどなれないんだ、って意味で言ってたんだよあれは。』
『そんなの分からないし...』
『ねぇ結城、提案なんだけどさ?』
『いきなりだね、どうしたの?』
『今からでも私達付き合わない?』
『え?』
『このアプリがいつまで使えるかわからないけどさ、せっかくまた結城と喋れるならその間だけでも恋人同士でいたいな、って。』
『春香からそう言ってもらえてすごい嬉しい、ありがとう。あと、その間だけでもじゃなくてずっとね?このアプリ使えなくなってからも春香の事以外好きになれなさそうだし。』
『こら、まだ若いんだからちゃんと恋愛しないともったいないでしょ?』
正直に言って俺はかつてここまで色々な感情を一気に味わったことがなかったので未だ混乱状態だったがこれからも春香と喋れることが嬉しすぎて、春香と気持ちが通じ合ったことが幸せで、今は、今だけは
「時が止まればいいのに。」
つぶやくと同時か、少し遅れたくらいのタイミングで春香からメッセージが届いた。
『このまま時が進まなかったら良いのに』
同じことを考えていたことに驚き、すぐにメッセージを送る。
『そうだね、』
『って結城なら考えるんじゃないかなって送ってみた。』
やられた!
やっぱり春香には敵わないや。
『なんだ、春香は思ってないの。』
『思ってないね、私は時が戻ればいいと思ってる。』
『それ言うなら俺もなんだけど?』
『まねっこだまねっこだ、結城くんが私のまねっこした!』
『うるさい、そう思ってるのは本当だから良いじゃん。』
『まぁそれはそれとして、今そっち何時?』
『いきなりだな、午後11時53分だよ。』
『明日学校は?』
『ふつうにあるけど?』
『寝なさい。』
『もうちょっと話してようぜ~』
『だめ、ただでさえだいちゅきな私がいなくなって寝不足なんでしょ?』
『寝不足どころか飯も食ってないから体力値はもうマイナス限界突破だよ。』
『なおさら寝なさい。』
『まだ眠たくないし、』
『ちっちゃい子みたいなこと言わないの、明日もきっと喋れるんだから。ね?』
『わかった、寝りゃ良いんでしょ。寝ますよ、はい寝ます。』
『素直じゃないなあ』
『なぁ春香』
『何?』
『おやすみ、愛してるよ。』
『そんなの反則じゃん!!』
『ねぇ待ってよ!』
『結城!?』
『言い逃げは酷いと思うんだけど...』
『その言葉私も言いたいのにな。』
~
『メッセージの送信が取り消されました』
『メッセージの送信が取り消されました』
『メッセージの送信が取り消されました』
『メッセージの送信が取り消されました』
朝、目が覚めると通知がすごいことになってた。
「何だこの取り消しの量...」
とりあえず見なかったことにしてもう春香が居ない学校へと足を向けた。
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