美結と手錠でつながれて

🌳三杉令

第1話 手錠でつながれて……

「こんにちは。私、声優の早瀬はやせ美結みゆ。今日は、あるホテルでアニメのイベントがあって参加してたんです」


「みんな! 今日はありがとー! また会おうね! バイバーイ」


「スタッフさん、お疲れ様ー。暑かったですねー、汗かいちゃったあ」

「あ、飲み物ありがとう。たくさん飲んだ方がいいですよね?」


 美結みゆさん、飲みすぎるとあとで大変です……


//SE:ゴクゴク飲む音


「でも……聞いてくれますか? それから十分後、ロビーでとんでもない事件が起きたんです。銃を持った集団がロビーを占拠して、私達を人質に立てこもったんです!」


 その日、ある犯罪グループがホテルで立てこもり事件を起こした。有名声優を含めロビーに居合わせた10人が人質として監禁された。人質はスマホを取り上げられ壁際に並べられた。さらに「これを飲め」と全員が一錠の薬と水を渡される。犯人監視の元、仕方なく人質全員が薬を飲んだ。そして犯人は5個の手錠を手にしていた。


「私って本当に運が悪い……そう呟いた時です」


//SE:投げられた手錠が床に落ちる音


「え? 隣の人と手錠をかけろですって!? 逃げられないように? そんな……」


 美結みゆは隣の男性に語り掛ける。 


「あ、あのう。あなたと私で手錠を掛けることになりました……」

「すみません、お願いします」


 //SE:カチャリという手錠を掛けた音、2回



 ◇ ◇ ◇



 美結達は入口から離れた奥の壁に離れて座るように命じられた。犯人グループは入口近くで外の様子を伺ったり、仲間同士で話したりしている。こちらの声は遠くて聞こえていない。美結は手錠でつながれた男性に話し始めた。


「こ、こんにちは。大変なことになりましたね……私、今日はたまたま仕事で来ていただけなんですけど……」


「あ、そうなんですか? あなたはここの宿泊客だと……」

「あの人達、何が目的でこんな事するんでしょうか?」


「そうですよね、わからないですよね」


「さっき飲まされた薬は何なんですかね? ちょっと美味しかったけど」


「え? 睡眠薬かもって? いやですね」


「あの私、声優の早瀬はやせ美結みゆです」


「え、知りませんか?」


 男性は微妙な反応。美結を知っているのか知らないのか。


(この男性、一般の人みたいだけど、どこかで見たような気がします)


(それにしても私達、これからどうなるんだろう?)

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