自由を求めて
大和の手の温もりを感じながら俺は今まであった思い出をぽつぽつと語ることにした。
「初めて会った日に告白するってよく考えたらなかなかやばいことしてるよね。」
「だけど好きになっちゃったから仕方ないことだよ。」
「ていうかなんで告白OKしてくれたんだっけ、ってこれ聞いた事あるか。」
「いや、あの時は本当の理由は教えてないんだ、恥ずかしかったし。」
「そうなの?じゃあ今教えてよ。」
「ちょっと恥ずかしいけどいいよ、あれは去年の話なんだけど。」
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「僕はその日体調不良で保健室で休んでたんだ。そこに現れたのが怪我をした少年の君だった。」
「せんせー膝すりむいた!」
「あーあ、だから気をつけなさいって言ってたじゃない...ほら消毒するからこっちおいで。あと、体調が悪い子も居るから保健室では静かにね?」
「はーい。...っいてててててて!!!!!!!」
「大げさねぇ、お風呂入ったら絆創膏張り替えるのよ?」
「わかってるって、ところでそこのベッドに寝転んでる君は大丈夫?あんまり無理し過ぎちゃだめだよ?」
「ん、初めましてだよね...?」
「そうだよー、でもしんどそうだったから心配になっちゃって。ごめんね!じゃ、また会おうね~!」
「その時から僕は少しだけ好きだったのかも知れない。」
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「ところで斗真くんは僕のどこが好きになったの?」
「え、俺も言うの?はずいんだけど。ってか去年のことなんて覚えてないや。ほぼ毎日怪我して保健室行ってたし。」
「当たり前じゃん、僕だけ聞かれるのは不公平だよ?」
「わかったよ、言えば良いんだろ?」
「今日はなんか素直だね?」
「隠してもしょうがないからな。俺は大和の目が好きになったんだよ。そのちょっと垂れた目の形とか透き通るような黒目とか。その目の中を俺で埋め尽くしたくなった。まぁ一目惚れだよ。」
「...」
「自分から聞いといて照れて無言は無いわ~」
そういった瞬間強く抱きしめられた。
「んー、やっぱり斗真くんの匂い好きだな...」
胸元に熱い息がかかる。
「ちょっ、何嗅いでるの!ハズい!恥ずいからやめて!!」
「ヤダ。まだ足りないもん。」
しばらく俺はなされるがまま吸われ続けていた。
大和の顔が離れるとさっきまで熱かった胸元が一気に冷やされる。
「ねぇ斗真くん。」
「ん?」
「体育祭のときのご褒美ちょうだい!」
「あぁそういやそんなこと言ってたな。何が良いの?」
「言うのちょっと恥ずかしいけど...引かないでよ?」
「引かないよ、絶対。」
「じゃあ言うね?」
「うん」
「...」
「...」
「あぁ~やっぱ言えない!」
「絶対引かないから教えてみ?」
「違う...勇気が出ない...」
「頑張れ!幸い時間なら大量にある。」
「...ん、はぁ...」
大和が深呼吸をする。
「あの、斗真くんに、」
「うん」
「...を、」
「ん?」
「体を...触ってほしくて...」
「え?」
「だから...」
「あ、いや聞こえた、うん、大丈夫。」
「嫌、だよね。」
「嫌じゃない、むしろご褒美だよ。俺にとっても。」
「良かった...」
じゃ、触るね と告げ俺は大和の首をなぞった。
「っっ~!!!」
大和が体を震わせる。
「い、嫌だったか?」
「んーん、なんかゾワッてした...」
「じゃあほかも触る、よ?」
「うん...」
首筋、お腹、足、背中、腰、どこを触っても大和は体を跳ねさせる。
「ぎ、ぎぶ...」
大和から降参宣言が出された。
「えーもう触るのおしまい?」
「あたまふわふわしてへんになりそ...」
「じゃあキスして良い?」
「今はむr...」
言いかけた大和の口をふさぎ込むように唇を重ねた。
互いの舌が口腔内で絡み合いなんとも言えない音を立てる。
息が苦しくなった頃、俺は大和から口を離した。
大和の顔は紅潮し息が上がって目も潤んでいた。
「大和、今幸せ?」
「すっごい幸せ。」
「じゃあ飛ぼうか。」
「その前にもっかいぎゅってして?」
俺は強く大和を抱きしめた。
その後、橋の欄干の上に立って大和の指と俺の指を絡ませた。
大和が静かに、しかし力強く言う。
「もう終わりなんだね。」
「これは自殺じゃない。自由を求めて旅立つんだ。」
「自由を求めて、か。良いねそれ。二人で声合わせてそれ言って飛ぼうよ。」
「せーの、で言おうか。」
「うん!」
「じゃいくよ、せーの」
「「自由を求めて」」
体は重力を忘れたかのように軽くなる。
まるで羽が生えたかのようだ。
しかし無常にもダムが迫ってくるのが見えてしまう。
「おつかれ、今までありがとう。大和。」
きっと聞こえないだろう。あまりに風の音がうるさくて。
「おやすみ。」
ドザッ...
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