第7話白い海の決戦

健一と檸檬は、深海覇者との激闘に突入してからしばらく経過していた。白い霧に包まれた船内は、まるで異次元に迷い込んだかのような不安定さを呈していた。深海覇者はその広大な翼を羽ばたかせ、時折その鋭い爪で船内のあちこちを引き裂きながら、二人に容赦ない攻撃を繰り返していた。


「このままじゃどうにもならない…!」健一が叫びながら、周囲の白い霧をかき分けて深海覇者の姿を捉えようと必死になっていた。霧が濃いせいで視界が完全に遮られており、敵の動きが分かりづらい。


「健一、どうにかして!」檸檬が叫びながら、影のナイフを避けるために必死に動き回っていた。彼女は肩に深い傷を負っており、その血が船内の床に滴り落ちていた。


「これが深海覇者の力か…!」健一は息を切らしながら言った。「でも、まだ負けるわけにはいかない!」


深海覇者は、再び「ペイント」の技を使って、船内の空間を真っ白に変えてしまった。視界が完全に失われた状態では、方向感覚も失われ、二人はまるで迷路の中にいるような感覚に襲われた。


「どこだ、どこにいるんだ…?」檸檬が声を震わせながら、手探りで周囲を探った。


深海覇者はその間に「カゲロウフライ」の技を再び発動させ、無数のナイフを飛ばしてきた。それらのナイフは船内を疾風のように飛び交い、金属音が響き渡った。ナイフは船の壁や床に激しく衝突し、火花を散らしていた。


健一は反射的に体をひねり、ナイフをかわしながら攻撃の隙を探した。彼の体力も限界に近づいており、もう一度の攻撃を決めるために必死に考えを巡らせていた。


「檸檬、俺の方へ!」健一が檸檬に声をかけた。「一緒に行動しよう!」


檸檬は健一の声に応じて、彼の元へと向かいながらも、深海覇者の攻撃をかわすために全力で動いた。二人は協力して深海覇者の動きを抑えようと試みたが、その力は圧倒的だった。


「このままじゃ倒せない…!」健一は戦いの中で焦りを感じていた。「何か方法があるはずだ!」


健一は深海覇者の動きをよく観察し、その隙を見逃さないようにしていた。すると、彼はある事実に気づいた。深海覇者の「ペイント」の技が発動するとき、その周囲にわずかながら隙間が生じることがあることに気づいたのだ。


「これだ…!」健一がつぶやいた。「この隙間を突けば、何とかなるかもしれない!」


健一はその隙間を狙うために、精一杯の力を振り絞って深海覇者に接近した。檸檬も彼に続き、攻撃のチャンスを伺っていた。深海覇者は再び「ペイント」を発動し、船内を真っ白に変えたが、その隙間はやはり存在していた。


「今だ!」健一が叫びながら、隙間を突こうとした。


しかし、深海覇者はその動きを察知し、すぐに反撃に出た。白い霧の中から、鋭い爪が伸びてきて健一を襲った。健一はその爪をギリギリで避け、身をひるがえして反撃の態勢を整えた。


「俺の攻撃が当たるまで、全力で耐えろ!」健一が檸檬に叫んだ。「一緒に頑張ろう!」


檸檬はその言葉に応え、全力で深海覇者の攻撃を防ぎながら、健一のサポートを続けた。二人は息を合わせて、深海覇者の動きを封じ込めるために必死に戦った。


戦いが続く中で、健一は再び深海覇者の隙間を突こうとした。深海覇者の攻撃が激しくなる中で、健一はその隙間を狙って、最後の一撃を放つために集中した。


「これで決める!」健一が叫びながら、一気に攻撃を放った。彼の力が込められた一撃が、深海覇者の弱点に直撃した。


深海覇者は激しくうめきながら、体を震わせた。白い霧が徐々に消え、船内に再び視界が戻ってきた。深海覇者は力尽きたように、その姿が次第に消え去っていった。


健一と檸檬は、息を切らしながら互いに顔を見合わせた。深海覇者との戦いがようやく終わり、船内に静寂が戻ってきた。


「…終わったのか?」檸檬が息を切らしながら言った。


「おそらく…」健一も疲れた声で答えた。「でも、まだ油断はできない。」


二人は深海覇者が消えた場所を見つめながら、これから先に待ち受ける試練に備えた。まだこの冒険の終わりは見えないが、彼らは確実に一歩前進した。

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