第14話 検査結果

うっすらと光が見えたと思ったら、すぐにまぶしくなる。

何色も光が混ざり、ところどころ透明になる。

どのくらい待てばいいんだろう。まぶしくて目を閉じそう。


「もう終わったぞ。手を離してもいい」


光がおさまりかけたところで、検査は終わったらしい。

手を離したら、後ろからジルベール様に持ち上げられる。


「よく頑張ったな」


「はい!」


またジルベール様の腕の中に戻り、ほっとする。

検査はどうだったんだろう。


「見てて。結果が浮かび上がってくる」


「浮かび?」


見たら、石の上に文字が浮かび上がってきた。


『上級五の位 成長の可能性あり』



え?上級?五の位って、どれだけすごいの?

だって、ドリアーヌは中級二の位って。

位が一つあがると魔力量は倍になるんじゃなかった……?


「ほほう、上級五の位とは。

 六人目の上級魔術師になることが決まったな」


「えええ?」


院長様の言葉に思わず叫んでしまう。

私、魔術師になるの?


「ジルベール、これがわかっていたのか?」


「はい。少なくとも上級以上だと思っていました」


「なるほどな。伝言はそれのせいか」


伝言?なんのことかなと思っていたら、

ジルベール様は話を途中でやめた。


「シャル、マリーナと俺の塔に行っていてくれるか?」


「え?」


「ちょっと院長と相談があるんだ。すぐに戻る」


「わかりました」


気になるけれど、そう言われたらマリーナさんと先に行くしかない。

マリーナさんに抱き上げられ、院長様の部屋を出て階段を下りる。


「シャル様、大丈夫ですか?驚いたのでは」


「うん、すごく驚いた。あれって本当なのかな」


「もちろん、本当です。

 各教会で上級だと判定された結果も、

 もう一度ここで検査をし直すくらい正確です」


「そうなんだ……本当に上級なんだ。

 じゃあ、ジルベール様の邪魔にならないで済むかな」


「え?」


「魔術のこと何も知らなかったから。

 研究対象だとしても、そばにいたら邪魔になるんじゃないかと思って。

 上級なら、少しはお手伝いできるようになるかな?」

 

「シャル様!もちろんです!」


なぜかうれしそうなマリーナさんに、私もうれしくなる。

マリーナさんは嘘をつかない。だから、これも本当だと思う。


ちゃんと魔術を学んだら、ジルベール様の役に立てる。

まだ子ども向けの本しか読んでないけど。

時間はかかっても、それでも可能性があるなら。


「マリーナさん、ジルベール様の塔には本ある?」


「シャル様が読むための本は持ってきていますよ」


「ありがとう!」


早くジルベール様の塔に行って、本を読もう。

わくわくする気持ちで院長様の塔を出て、ジルベール様の塔へ向かう。

だが、ここが魔術院だということを深く考えていなかった。


「おい、そこのガキ」


「え?」


後ろから何か言われたと思ったら、そこにはエクトル様がいた。

私をにらみつけるように赤い顔で立っている。


しまった。

エクトル様も魔術院の魔術師だって忘れていた。

どうしよう。すごく怒っている気がする。


あの時、ジルベール様に追い返されていたけれど、

納得してくれるような人じゃないと思っていた。


じりじりと近づいてくるエクトル様に、

マリーナさんが警告する。


「さがりなさい、エクトル」


「うるさい!侍女は下がっていろ」


「前も言いましたが、私も魔術院の魔術師です。

 先輩に対して言う言葉ではありませんね」


「それがどうした。今はただの侍女だろうが!」


見下すようなエクトル様の言葉に、腹が立って言い返してしまった。


「マリーナさんは侍女の仕事をしているけど、

 ちゃんとした魔術師なんだから!」


「そんなことはどうでもいい。用があるのはお前だ!」


「え?私?」


そういえば、ガキって……私だ!?


「お前、ジルベール様の助手になるって本当なのか?」


「え?」


そんな話は知らないけど、研究対象だってことを、

そういう風に説明しているのかもしれない。


「助手になるために育てられているのかって聞いてんだよ!」


「マリーナさん、これ、どうしたら?」


「答えなくて大丈夫ですよ。

 エクトル、助手を辞めさせられたのだから、もう関係ない。

 即刻、立ち去るように」


「うるさい!いいか、助手にと言われても断るんだ。

 お前のようなガキが役に立つわけがないだろう!」


「エクトル、黙りなさい!」


言い合いになってしまって、どうしよう。

でも、何を言われたとしても、答えは決まっている。


「私は、ジルベール様に従います。

 助手にと言われたのなら、断ることはしません!」


「なんだと!」


「決めるのはジルベール様です!」


だから、こんなところで言い合いしても意味がない。


「お前、ふざけているのか。顔も見せないで、生意気だ!」


何か魔術を使われたと気がついた時には遅かった。

びゅうっと前から風が吹いて、フードがめくれあがった。

ぱさりと後ろに落ちて、隠していた顔があらわれる。


「あっ」


「黒髪?お前、魔女なのか!?」



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