第3章十二話:展望/塵鉄惑星

「まだやり合ってるのか......」


飽きれとも言うべきか、今だにドッカンドッカンビームなのでそんな音はしないと壊すモノへ砲撃してるらしい。


『安心して!相手の密度も減って、そろそろ打ち止めが見えて来てるのよ?』


そんな事を言われてもよく分からない、関係があるのは地上が使えるか使えないかで......よく考えれば定期的に襲来が起こったら街づくり所では無い、のでは?


(地上に私は関係無いが、渡り人プレイヤーがこの惑星から離れてしまうとAIに制限が掛かってしまう......)


想定される日常品質の低下。更にそこから人が去り、もっと品質の低下が発生し悪循環を生む事は嫌でも想像させられる。


(規模の縮小化によって、どれだけこの状況を耐えられるか)


小さなグループでは無く、大きな枠組みが必要だ。ルールを作る理由はそうしなければならない意味がある、例えばそう無尽蔵に拡大してしまって星を喰い潰す可能性だって。


それに他人が考え付く懸念点なんて、その道のプロが既に考えた道筋だろう。なら聞けば良い。


「エディン、壊すモノは確か文明の光で照らすとか何とかディアンが言ってたけど、これから襲来は定期的に起こる物なのか?」


『ちょっと待ってね。そうねぇ、恐らくこの規模の襲来は今回が最後になるかしら?』


「それまたどうしてだ?」


『壊すモノを撃退した後になるけど、宇宙空間用の船が出来る予定なのよ!星系内航行船も、じきに造られるでしょうし生産力がグンと上がるわ!』


思ってたより技術力が高い、そもそも宇宙船造るとか聞いてない。


「宇宙船造るのか......てか造れたのか」


『あら?ディアンったら伝えてなかったの?造船は以前から進めてたプロジェクトのはずだけど『ここからは私がお話しましょう』噂をすれば、ってヤツね!』


ヌッと話へ入って来たディアン。色々と言ってない事がありそうだけれど、私の立場としては全面的に信用するしか無い。個人的には信頼したいが。


『造船プロジェクトは不確実な物でしたのでお伝えしませんでした』

『本来なら別の惑星で造った船を利用するのが基本でしたので資材に合った設計を一から作る事になり、期待されては精神上の観点から宜しくないと判断した結果』

渡り人プレイヤーの皆様に共有はしませんでした』


「今共有してくれたって事は」


『出来れば他の皆様には黙っていて下さい』


なんでや!?ただの伝達ミス?!エディン、お前さん......


「......やれやれ、知ってしまったものは仕方ない。聞く限り造船プロジェクトは順調なのか?」


『はっきりした事は言えませんが、そうですね。このまま進めば宙空要塞として扱える様になります』


『まだ星の近くだけど、技術の修得が出来れば恒星系内を自由に行き来出来る様になるわ!恒星間航行だって夢じゃない!造船が行われてた惑星に行けば快速船のデータだって入手出来るでしょうね!』


何だか一気に世界が広がってしまった様な感覚、この速度に着いて行けるだろうか?


「[壊すモノ]はもはや敵じゃ無くなるのか?」


『いえ。宇宙船は[壊すモノ]へ対抗する為の要塞であり、根本的解決を図る為の調査船でもあります』


「壊すモノってあんまりよく分かってないのか」


『はい、現状判明してる事は[真似る事][壊す事][銀河の中心から来た何か、から発生する事]です。あと恐らく[対処出来る事]も含まれるかと』


ふ〜、ん?


「銀河の中心から来た何かって......何だ?」


『不明です。直接観測も接触も出来ませんが極僅かな重力を発生させ空間に満ちる何か、です』


え、なにそれは。そんなよく分からない物が空間に満ちてるの?ダークマターとか呼ばれる類いの何か?


『それ等を含めて調査するため銀河の中心へ船を向かわせる予定です』


『この辺りは銀河の中で田舎でも無いけど中心地から近くも無いのよね〜、先ずは快速船を造れる様にならないと時間が幾らあっても足りないわ!』


それはそう、逆にどう言う理屈で時空の整合性や寿命を迎えず行けるのか気になる。


「人は乗れるのか?」


『元々人が乗ってたのよ!廃れてしまってすっかり使われなくなってしまったけど......』


なるほど......?


「......廃れた理由は?」


『やっぱり故郷が1番なのよね、新天地や物見をしたい人達は電子の世界で情報へ浸かる事によって満足してしまうの。どれだけ速くてもやっぱり遠いのね』


若者は新しい経験を求め、老人は古い記憶を懐かしむ。懐かしむ若者や新しい経験を求める老人も居るには居るけど、絶対的な数では劣る。


(若者は全てが新鮮に映る、行く理由が無いのだろう)


情報量の飽和化。今を生きる人々でエベレストへ挑戦した人数は、現時点の人口と比べてどれだけ差が出来るだろうか?危険が過ぎるから比べられ無いか?


富士山は?安全重視ならいっその事、海外へ旅行した人は?人生に1回か2回あれば良いと考える人は多いだろう、そういう事だと思う。


「宇宙船は色々な事に使われてたのかい?」


『そうよ!惑星間の貿易や情報共有なんてのもあって!』


いずれは宇宙船の飛び交う様子が見れるだろうか?それはそれとして、ここまで技術力のあった塵鉄惑星がこんな状態になるとか薄ら寒い恐怖を感じる。


「ディアン、正直に答えて欲しい」


『はい、なんでしょうか?』


「君はこの惑星をどうしたいんだ?」


『............質問の意味がよく分かりませんが、私達は人類によって作られた[人類の為の補助機構]です』


[根本的解決を図る]、確かに理知的で理屈が通ってる様に見える。しかし見えるだけだ、現状で[対処出来ている]。


特に再利用技術が発達して居て資源問題が浮き彫りな訳では無く、究極的に言えば地上へ進出する事だってシェルターとしては逸脱してる。


造るだけで膨大な資材が必要な宇宙船、本来はやらなくても良い様な調査、私もやる手法いいわけだからよく分かる。


「......変な事を聞いてすまんな」


『いえ......』


お前さん、結構感情豊かな部類だな?怒ったり恨みだってする性格だろう、塵鉄惑星がこんな状況になった根本的な原因は[壊すモノ]だ。


あれさえ無ければアウルムだって動かなかった。どうしてなのか知りたいだろう、納得行く応えを知りたいのだろう、だから調べてる。


「まあ協力はするよ、宇宙船に関しての資料はあるかな?知ってる物と変わりなければ役に立つと思うよ」


『少々お待ちください』


嫌と嘆く程に宇宙船の図面を引くのは慣れてる。


『あ!晴れたわね!』


『まだ[壊すモノ]が残存してる可能性もあります。空間の冷却も必要ですので、地上へ出られる様になるにはしばらく掛かります』

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