第1章:残火
第1章一話:風の随に
VRMMO、大規模(M) 多人数型(M) 同時接続(O) 仮想(V) 現実(R)。例えばそう、ゲームやメタバースに使われた表現......過去の産物に比べて今回プレイするのは段違いにリアリティがあり、仮想世界と呼ばれる物。
「これだけの物を無料で......か」
ある意味、思い切りが良い。無課金者は養分であり課金者が育つ土壌を作る、無課金者が居ないと課金者は買い切りゲームで良いやと過疎化するから......[惑星と言う名でガラリとゲーム性を変える]形式を取るのは困惑した。
「......惑星によっても難易度が違うのか」
ピースフル=平和な惑星。
ベリーイージー=敵は居るものの容易い相手。
イージー=簡単な敵だが油断し過ぎれば手痛い目に遭う。
ノーマル=多少頑張れば強敵も倒せる難度。
ハード=難しい敵が出て来る。
ベリーハード=生きていくのも困難な惑星。
エクストリーム=極端に困難な惑星。
インフェルノ=地獄の様な環境。
ルナティック=もはや狂気的な人以外残れない惑星。
ナイトメア=ただの悪夢でしかない、生存不能領域。
インポッシブル=不可能、やるだけ無駄。
難易度が上がるほど惑星の数は減り、最高難易度の[インポッシブル]は3つしかない。
「どこに行けば良いんだ......?」
スっとネット回線へ接続し、検索を掛けてみる。
[ピースフル]や[ベリーイージー]には畑作りとかの、のんびり開拓系だったり。現実の環境を模した動物園っぽい惑星があったり、と多様な形を成している。
ザッと見れば剣と魔法のRPG系だったりSF系やら死にゲーまで、メインのアバターを創った惑星に所属され他惑星へは観光の体をなすとか何とか。
「要するに......メインの惑星を進めなきゃステータスが上がらないって事か?」
他惑星でレベル上げしても意味が無いとか何とか、ただ[難易度が上がるほどに豪華な報酬]があるとかで。ルナティックの住人がピースフルで無双するとかあるらしい。
それでも[観光]以外の何物でもないので、ルナティック惑星の攻略を進めないとピースフルで色々制限がある。とか何とか。
「まあ別の星でメイン張るなら課金して枠を買うか、アバターデリートで初めから、ね?」
アバターデリートは特に何のリスクもなく出来るらしい、地味に配慮が行き届いている......
最高難易度の3つは[消滅惑星]と[炎氷惑星]に[塵鉄惑星]、消滅惑星は文字通り惑星が消滅していて宙へ生身のまま放り出されるとか、炎氷惑星は灼熱の世界へ放り出されて骨の髄まで燃えるとか......恐らく恒星に近いのと常に同じ面を向けてるのが合わさり表は激アツ、裏は極寒と予想されてる。
でもって塵鉄惑星は唯一生存の可能性があったが、大規模な攻略部隊が諦めた事によって今は無人。曰く嵐によって何もかも吹き飛ばされる一面真っ平らな世界で、超遠距離から狙撃され続け巨大なナニカによって蹂躙されるとか。
「......リスクが無いなら、最高難易度に行ってみるか」
ポンポンと現実のデータから引用したアバターを作成し、ログインして見る。自動配信?OKOK、後で自分でも見返せるしプレイヤー同士の衝突も記録を見返せば良くなるからな。
ここまでの技術これほどの完成度、何かあるに違いない。
もし無かったとしても[プレイする事自体に意味がある]のだ。
《塵鉄惑星》
[難易度]インポッシブル
[敵性物体]有
[攻略深度]0.00......18%
[プレイヤー]0人
[年齢制限]18歳以上の方に限定
[警告]持病のある方、心肺の弱い方、VR馴れしてな
・・・
・・
・
・
真っ先に感じた事は息がし辛い事だ。大きく息を吸って吐いて居るのに息苦しい。もっともっと吸えと息が荒くなる、ゼェゼェと言うよりはハッハッハッと犬の様だ。
「......?」
白い、白いゴツゴツした山が周りを囲んでいる。灰色でとっても明るい空が足下を照らす。
「......」
マネキンの様だ、一面全て白い物がマネキンだ。取り敢えずマネキンで出来た山に登って外の様子を確認して見る。
何せ、どんな世界なのかまだ分かって居ないのだから。
「......??」
先ほど思考出来たのはそこまで、[頭を出した瞬間に頭が弾け飛んだ]ようでまたマネキンの中心でリスポーンして居た。
「......」
声が殆ど出ない、ある意味それで良かったのかも知れない。色々思う所があるのでネット検索で詳細な情報を探す。
1つ、ここにあるマネキン全てがアバターデリートした際に出現したマネキンである。
2つ、マネキンを利用した防壁を建てて安全地帯として利用した名残りらしい。
3つ、壁(崩され今はただの山)の外に安全な場所は結局見つからなかったらしい。
なるほど、正直思ったより悪そうだ。
でもってクエスト、この世界で何をすれば良いのか?の手引き書として[リスポーン地点の地面にある鍵の開いた金庫からキーを取り出すと開始される]とか何とか。
「......!」
あった、マネキンを退ければ少々黒く乾燥してひび割れた地面に金庫の様な物が埋まってる。中の古びた鍵を取り出せば......
【シェルターの鍵を入手した】
【シェルターへ向かいこの世界で何があったのか調べよう!】
[残り距離10km]
んんん?なんか距離遠くね?徒歩で約2時間の距離、走りでも1時間程度だったと思う。アレの中を通れと?頭が吹き飛んだ時の光景を思い出せば豆粒の様な位置から来た狙撃が同時に8つ、虫に機械がゴテゴテと付いた巨大な何かが闊歩する場所。
(無茶を言う......)
座ったままジッと考えを纏める、可能か不可能かで言えば[可能]だろう。これよりもっと酷い状況を知っている、腐蝕性の感染症から逃れたり常にレーザーが飛んで来る地獄に比べれば......まあ。
(......よし)
先ずは1歩、とても......それはもう、とても軽い足取りで山から飛び出す。ジャンプはしない、足も殆ど踏み場から離さない、ただ軽やかにステップを踏む。
左脚の外側へ右足を置き瞬く間に横へズレる、カクンと自然に置いた左足を曲げてそのまま前進しつつ顔を左右に振ったり頭を曲げて弾丸を避けつつ身体を捻って胸を狙ったのも避け、グッと駆け出すのと同時に右足を左側へ大きく振って更に横へズレる。に合わせて右足は次の一歩を出来るだけ早く動かしながら途中でスライドする様にクンッとズレて弾丸を避けながら......etc
・・・・・
気付いた人数は結構居た、インポッシブル惑星にヒラヒラ煌めく[配信数1]の文字。
(またかよ......)
発見した人物達は既に飽き飽きして居た。名を挙げる為だけにちょっとやって来て、別の惑星へ行く配信者や何も知らない初心者が多く映ってきた場所。
(どうせいつもと同じ)
気付いた人の8割が避けた。残りの2割は冷やかし以外の何者でもなく、数えるまでも無い数人が純粋な興味だ。
─無茶だ。
─何をやっている?
─頭がおかしいんだろ
否定、否定、否定、存在自体の否定がなされ、金銭目的だと勝手に嫌悪して、他人の無知をバカにして嗤う。
─チートだ!チート!
─通報しました
─気持ち悪い動きしてる......
舞踏の様なその動きに魅せられた者が数人、それ以外は嫌悪した。自分に出来ないのだからズルをした、他人に出来ないのだからズルをしたと。
認めず、否定し、拒絶する。ただ彼等は叩きたいだけ、誰でも良いからサンドバッグにしたかっただけ。攻略なんて見に来たヒトは数える程しか居ない。
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