『LOVERS&WEATHER(2)』深夜の陽光~Sunny~
陽溜まりの6匹猫~T子&佳代~
第1話 【私の文章】
真夜中1時だというのに、この大都会は瞳を見開きながら瞬き(まばまき)もせずに、華やかでゴージャスな喧騒を不動明王のように見続けている。
【夢を見続けても良い街、東京…朝も昼も夜も。】
そんな誘(さそ)いフレーズを並べているのを知っているかのように、田舎から若者達が移り住み、未だ見ぬ明日(あす)への夢と希望を乗せて、都会に染まりながら溶け込んでいく。
ドアが開き、派手なルージュの唇が甘い言葉で、千鳥足と会話しながら作り笑いを浮かべて、挨拶をしている。
「(このオジサン、馬鹿ねっ。
貴女は所詮ブランド物の腕時計に過ぎないのにっ。)」
内心は悪魔でも、表面は美しい天使なのだ。
透明な窓ガラスの四角い個室では、画面を見ながらマイクを握りしめて、楽しそうにはしゃぐ学生達の姿が見える。
コンビニでは、店員がレジ打ちをしながら息抜きをするかのように欠伸をしている。
この都会(まち)に馴染めば、誰もがまるで自分が最初から都会人で有るかのような錯覚の妄想を一瞬でもするものだ。
カラフルな照明が目まぐるしいぐらいにチカチカする空間で、大音量で鳴り響くアップテンポミュージックに合わせながら、様々な容姿の陽気な男女達が色々なダンススタイルで、現実の怒りと哀しみを忘れるかのように、夜更けまで踊り明かしている。
すると、気を良くしたDJがターンテーブルを廻しながら、
「今夜は朝まで踊り続けよう!!
もっともっと盛り上がろうぜっ!!」
と言いながら、フィーバーを煽っている。
すると、大きな眼・涼しげな眼・厚い唇・薄い唇・高い鼻・低い鼻・白い顔・黒い顔が、一斉に歓声を上げながら、溢れる笑顔でアンサーをする。
「見ろよ!!
あれ、超人気ダンスグループEMERALD MOON(エメラルド ムーン)の神村 健斗(かみむら けんと)だぞっ!!
あれだけの有名人なのに、こんなクラブに未だ出入りしているんだなあ。」
目を丸くしながら口々に話す姿からも、神村健斗が、どれ程現在をときめく存在なのかを物語っていた。
スポットライトを華やかに浴びながら、真珠のような汗を流し、美しく爽やかに少しのズレもなく、一心不乱に踊る姿は、やはり雲上の人なのだと誰もが羨望と感嘆で、溜め息を漏らしてしまう程に素晴らしかった。
香水が辺りを芳しくさせながら、神村が通ったことを知らせながら、誇示しているかのようだった。
そこを通過するだけで人々は、まるで王子様が真新しいレッドカーペットを敷かれて、襟を正して闊歩しているかのような錯覚をしてしまうのだった。
一頻りパフォーマンスした後に、爽やかな汗と笑顔を振り撒きながら、オーディエンスの視線を気にも留めずに、1人の美しい女性の元へと歩み寄った。
「理彩、待たせてごめんっ!!」
すると、その女性は、
「お疲れ様!!
今日も素敵なパフォーマンスだったよ!!」
と、微笑んで言いながら、躊躇することなくスポーツドリンクを差し出した。
「有難う!!
理彩が見ているって思ったら、いつもよりダンスに気合いが入ったよ!!」
輝く瞳から溢れるような笑顔が、ライトに照らされているかのように銀色に輝いて、剰りにも眩しくて、脳裏に焼き付いて離れなかった。
「もう~、そんな嬉しいこと言ってくれたら、恥ずかしくて照れちゃうよ!!」
はにかむ女性は、モデルか何かと見間違うぐらいに美しくて、色白で華奢な長身をしていた。
その2人の姿は、眩しいぐらいに煌めく宝石のように美しくて、剰りにも畏怖の心境が先行してしまい、誰も近寄れなかった。
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