最後の抵抗
サンドロテイム王国か僕。
ヴァレンフォードによって、その二つのどちらが大切なのかを突きつけられたレイラは、動揺した様子で口を閉ざしていた。
だけど……僕の中では、その答えが絶対的に決まっている。
「聖女様!ヴァレンフォードに資産なんて渡さないでください!」
「っ……!ルーク様……」
僕の方を向いたレイラは、続けて言った。
「しかし、それでは、ルーク様の身が────」
「僕一人の身よりも、大事なのはサンドロテイム王国です!それに、ここで僕が捕まってしまったせいで、エレノアード帝国がサンドロテイム王国を侵攻するための資産を増やしてサンドロテイム王国が今以上に危機的な状況になってしまったりしたら、僕はサンドロテイム王国の人たちに顔向けできません!」
サンドロテイム王国の王子である僕の失態のせいで、サンドロテイム王国がより危機的状況になること。
そんなことは絶対に許容できないし、あってはならない。
「……約束を破る形にはなってしまうけど、やっぱり僕には、サンドロテイム王国のことを見捨てるなんてことはできないよ」
「ルーク、様……!……しかし、そんなルーク様であるからこそ、私は……!」
レイラは僕の方を向くのをやめ、堂々とした姿勢でヴァレンフォードと向かい合う。
すると、ヴァレンフォードがレイラに向けて言う。
「心は決まったようだな」
「はい……私は、ルーク様をお助け致します」
「っ!?」
僕を……助ける!?
「待ってください!聖女様!僕は────」
「ですが、ヴァレンフォードさんに資産を譲渡するつもりもありません」
……え?
そのレイラの答えに僕が困惑していると、ヴァレンフォードが言った。
「ほう、つまり、君は私の出した二つの選択肢ではなく、第三の選択肢を選び取るというわけか」
「はい……私は────ここで、何としてでもあなたを負かし、ルーク様をお助け致します!」
力強く言うと、レイラは剣を構える。
「そうか」
短く言うと、ヴァレンフォードも改めて剣を構え直す。
「ならば、来ると良い」
「言われずとも……!ルーク様のため、全身全霊を持って剣を振るわせていただきます!!」
「っ!聖女様────」
僕が言いかけたのも束の間。
レイラが素早い斬撃を繰り出し、ヴァレンフォードが見事にそれら全てを受ける。
「先ほどよりも速さが出ているな……感情の昂りによるものなのか、それとも先ほど私を剣を交わしたことで何かを学んだのか、もしくはその両方なのか────格上だとわかっている私に挑んできた君には敬意を表するが、それでも」
「っ!!」
ヴァレンフォードはレイラの剣を弾き飛ばして、手から剣を奪うと、その隙を突いてレイラの背後を取った。
その瞬間、レイラは僕の方を向いて言う。
「ルーク様……申し訳ございません、私は、あなたのお力に────な……でし……た……」
「聖女様!!」
ヴァレンフォードによって睡眠薬を吸わされたレイラは、意識を失ってその場に倒れた。
「っ……」
レイラ……
僕が倒れたレイラを見て心を痛めていると、ヴァレンフォードはレイラから離れ。
コツコツと黒のヒールの足音を立てながら僕に近づいて来て言う。
「この睡眠薬は君に吸わせたものと同じものだ、ステレイラも一時間以内には目が覚めるだろう……そして、内乱行為を行ったことについてだが、そのことについても心配は要らない」
続けて、僕のベッドの上に座ると、僕と目を合わせて。
「私にとって意に沿わない点があると言っても、ステレイラはこのエレノアード帝国にとって極めて貴重かつ優秀な人材だ」
「……つまり、レイラにはこれ以上何かをするつもりは無いということか?」
「あぁ……だから君も、ステレイラのことを考えるのはやめ、今は目の前の私にだけ意識を向けてくれ」
先ほどと同様に僕の膝上辺りに跨ると、ヴァレンフォードは頬を赤く染めて言った。
「もはや、これで本当に邪魔者は居ない……ルーク、今度こそ、私と共に初夜を迎えよう」
「っ……!」
「さぁ、ルーク、君が男である部分を私に見せてくれ」
そう言ったヴァレンフォードが、息を荒げながら僕の紳士服のパンツを下ろす。
……もはや、僕の貞操に関しては、もう諦めるしかない────と思いかけたけど。
「……ん?」
下着越しに僕の僕を見たヴァレンフォードは、困惑の声を漏らす。
そして、続けて凝視しながら。
「さっき、私の胸を見せたことで性的興奮にそれなりの刺激を与えたつもりだったが……」
そう────僕の僕は、普段通りの状態だった。
ヴァレンフォードの体は間違いなく魅力的で、正直その時だったらどうなってしまっていたかわからないけど……
レイラとヴァレンフォードの剣戟に加え、サンドロテイム王国と僕の命どちらが大事かということについて考えていたこと。
それらによって、僕の頭からは完全にそういったことが抜けていた。
「君のあの時の反応を見るに、私の体が君の目に敵わなかったというわけでは無いのだろう……となると、途中でステレイラに妨害をされてしまったせいか────私の方はもういつでも交われるほど昂っているというのに、君はどこまでも私の手中に収まるつもりが無いらしいな」
だが、と続けて。
「そういうことなら、すぐにでも君をその気にさせて見せよう」
と言うと、ヴァレンフォードは服を脱ぎ始めた────その瞬間。
僕は刺激を感じて僕の僕を反応させてしまわないためにも、目を閉じてヴァレンフォードの姿が視界に映らないようにした。
これは、レイラが来てくれたおかげで、僕があの刺激から意識を逸らせたからこそできること。
レイラが作ってくれたチャンスを、無駄にするわけにはいかない!
「……」
僕が強くそう思っていると、やがて衣擦れの音が聞こえ終わり、おそらく下着姿になっているであろうヴァレンフォードが言う。
「君なりの最後の抵抗というわけか……面白い、ならば私も、全力を持って君をその気にさせて見せよう」
「……っ!?」
直後。
僕の顔を、柔らかく大きな二つのものが挟んだ。
……今までの経験から、目を瞑っていてもわかる。
この感触は────
「どうだ?私の胸は……ふふっ、今までは自らの胸になど何の興味も無く、男にこんなことをしたいと思ったことなども無かったはずだが、私は君と居ると気が変になってしまうようだ」
「っ……」
目は閉じることができるけど、触覚というものはどうしても感じてしまう。
セシフェリアやレイラよりも一回り大きくて、柔らかくて、弾力のある感触。
それでも……今までの経験というなら、僕は直接胸によって顔を挟まれたことが何度かあったけど、これはまだ下着越しだ。
エレノアード帝国に来た頃の僕に言っても信じられない発言だろうけど、下着越しであるならまだマシのため、僕はどうにか僕の僕が起きあがろうとすることを堪える。
「不思議な感覚だ、私の胸の中に居るというだけで、君という存在がより愛らしく映る……だが、これでもまだ君の男である部分には影響が無いらしい」
「……」
「これは少々予想外だ……もしや、君の奴隷としての主人に、もっと刺激的なことを日常的にされているのか?」
それに対して何も答えることはしなかったけど、僕の無意識的な反応からそうであることを理解したのか、ヴァレンフォードが僕の顔を自らの胸で挟むのをやめて言う。
「そうか……そういうことなら、私も文字通りさらに一肌脱がねばならない」
その後、おそらく今度は下着を脱いでいるのか、またも衣擦れの音が聞こえてくる。
……例えどんなことをされたとしても、僕は絶対に堪えてみせ────と思っていると。
突然、僕の右手の拘束が解かれたかと思えば……僕の右手のひらは、その手のひらでは収まりきらないほど大きく柔らかなものを揉まされていて────
「んっ……」
「っ!?」
僕がそれを揉まされた直後、ヴァレンフォードは普段のヴァレンフォードからは想像するのが難しい、小さいけど確かに艶のある声を上げた。
こ、これは、もしかして────
「さぁ、ルーク……今度は、私の胸を君の手のひらで、好きなように堪能してくれ」
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