奴隷として敵国に潜入していると、敵国のヤンデレ美少女たちが僕を巡って内乱を起こそうとしている件
神月
潜入開始
「────アレク……此度の任は、まだ十六のお前にはあまりにも難しく、険しいものになるかもしれない……だが、完全無欠のようにも思えるエレノアード帝国に勝利する可能性があるのは、もはやこの策しかない」
そう語る父上、サンドロテイム国王の言葉を聞いて僕は頷く。
「はい、僕が奴隷として敵国、エレノアード帝国に潜入し、何か弱点や機密情報などを探ること、ですね……危険なのは承知の上ですが、この国を守ることができるのであれば僕はそれでも構いません!」
「お前は自慢の息子だ……だが、もし危険を感じたら、完全に逃れられなくなる前に、例の方法で脱出するのだぞ……情報よりもお前の命が一番大事だ」
「わかりました、父上……では、アレク・サンドロテイム、本国のため敵国への潜入任務を開始致します!」
「あぁ、頼んだぞ、アレクよ」
エレノアード帝国へ赴く前の最後の父上との謁見を済ませると、玉座の間を後にして王城の廊下を歩く。
サンドロテイム王国とエレノアード帝国の戦争は長い間続いてきたけど、そろそろその均衡が崩れて、このままではサンドロテイム王国が敗北となってしまう。
どこからか崩したいところだけど、その穴が全く見えない……それは、おそらく相手の指揮官やそれに関与する人物が優秀だからだ。
「だけど……潜入という一点においてだけ言うなら、一つだけ穴がある」
自室に入ると、僕は王族用の服を脱ぎ始める。
エレノアード帝国は、その圧倒的な力でたくさんの領土を得ているけど、それだけの領土の管理をするには人手が足りない。
そこで、奪った領土の元居た人間を奴隷として扱うことで、それを労働力として扱っている。
奴隷制度なんて、聞くだけで虫唾が走るけど、そのおかげで僕が今から奴隷に扮してエレノアード帝国に潜入できると考えたら、それはありがたいとも言える。
「……これでいいかな」
考え事をしながら服を着替えていると、あっという間に奴隷らしさを感じる千切れた布の服に着替えることができたため、僕は続けて王城から出ると、エレノアード帝国周辺で、よく兵士が警備を行っているところへ向かう。
「ん?」
警備をしていた兵士が僕の存在に気付いたようで、僕に近付いてくると言った。
「お前、もしかして逃げ出した奴隷か?」
僕は基本的に前線には出ないから、この兵士もまさか僕がサンドロテイム国の王子だとは思っていない。
感情的には一発顔を殴ってから、腰に携帯している剣を奪って首を刎ねたいところだけど、その欲求を抑えて怯えた演技をして言う。
「つ、連れて行かれる前に、兵士の人と逸れて……」
「チッ、面倒くせえ……まぁいい、なら俺が直接会場に連れてってやるよ」
「か……会場?」
もちろん僕はその言葉の意味を知っている……というか、むしろそのために今日がこの計画の実施日に選ばれたため聞くまでも無かったけど、もしかしたら何か新しい情報を得られるかもしれないと思ってそう聞き返した。
すると、その兵士は得意げに語った。
「あぁ、奴隷のオークション会場だ、どっかの貴族様がお前のことを気に入ってくれたら買ってくれるかもだぜ?まぁ、買われてもその貴族様に奉仕し続ける人生で、買われなかったら肉体労働をし続ける人生になるだけだけどな」
こんなことを得意げに語れるとは、やはりエレノアード帝国の人間は……目新しい情報も手に入らなかったし、ただ気分が害されるだけだったな。
その後、馬車に乗せられてその兵士によって奴隷のオークション会場という場所に連れられてくると、奴隷の人たちが並んでいる列に並ばされた。
どうやら、名前の書かれた札を順番に首からぶら下げられるようだ。
……ここで僕が王族だとバレてしまえば、奴隷にされるのではなくそのまま首を刎ねられて終わってしまうから、僕の正体は絶対にバレてはいけない。
「次はお前だ、名前は?」
やがて僕の番になると、僕は────
「ルーク、です」
当然偽名を名乗った。
すると、目の前の男は僕の正体に気付いた様子もなく、札にルークと書くとそれを僕の首からぶら下げる。
よし……やはり、このエレノアード帝国では僕の顔を知っているような人物はほとんど居ない。
そもそも戦争中にあるエレノアード帝国と交流なんて図っていないため、僕の顔を知っている人物なんて居るわけがないんだけど。
僕がそんなことを思っていると、この場には似つかわしくないほど明るい女性の声が聞こえてきた。
「わぁ〜!奴隷のオークション会場なんて来たの初めてだけど、こんな感じなんだ〜!すご〜い!」
奴隷のオークション会場でよくそんなに盛り上がれるな……でも、どこの誰かも知らないような人が何を言っていようが僕には関係ない。
そんなことを思っていると、わざわざその女性の姿を見てはいないけど、声からしてその女性は僕の目の前に居る札を持った男性に話しかけたようだった。
「オークションの本会場ってこの奥で合ってる?」
「あ、合ってますぜ」
なんでこの男性は少し緊張してるんだ……?
「やった〜!私本当楽し────み!?」
やがて、その女性は何かに驚いたような声を上げた。
一体何に驚いたのかは知らないけど、それから少し間を空けると────突如、僕は肩を揺さぶられる。
「君!君!その服装、もしかして奴隷の子なの!?カッコいい〜!ていうか可愛い〜!」
「っ……」
肩を揺さぶられて反射的にその方向を向くと、そこには明るい表情をした白髪碧眼の女性が立っていて、言動はともかく顔の造形は綺麗で体や全体の雰囲気もどこか大人の女性という感じだった。
だけど、当然それで僕が見惚れるなんていうことはなく、むしろ────戦争状態なのにこんな人が居るのかと思うだけで嫌悪感がすごく、すぐに目を逸らした。
奴隷だから抵抗することはできず、しばらくの間意味のわからない言葉の羅列を放ち続ける白髪の女性に肩を揺らされていると、札を持った男性が言う。
「こ、困りますぜ公爵様!そいつは一応商品なんですよ!」
────公爵!?
その単語を聞いた瞬間、僕は再度その白髪の女性のことを見る。
……言動だけ見ればとてもそうは見えないけど、確かに静かにしていれば公爵家の人間特有の気品さがあると言えなくもない。
そして、公爵家の人間となれば、少なくとも一つや二つはこの国の弱みや機密情報を握っているはずだ。
僕がその白髪の女性の目を真っ直ぐと見ながらそんなことを考えていると、白髪の女性は頬を紅潮させる。
「ちょ、ちょっと、そんなに綺麗な目で私のこと求めるような視線向けられちゃったら……私に買って欲しいの?」
この白髪の女性の近くに居れば、何か情報を得られるかもしれない……なら。
「あなたに買って欲しいです」
「っ〜!今日は会場見るだけのつもりで今までも奴隷なんて買ったことなかったけど、いいよ!君が初めて!!私が絶対に君のこと落としてあげる!!え〜!ていうか、奴隷の子に一目惚れ────」
ここからは、いかにこの白髪の女性に不審に思われないようにしながら情報を得るかに懸かってくる……奴隷という立場で情報を集めることが難しいのもわかっている────だけど。
サンドロテイム王国のために、僕は絶対に成し遂げてみせる!
◇
今日から毎日18時5分に最新話を投稿させて頂こうと思います!
奴隷として敵国に潜入しヒロインたちから情報を得ようとする主人公と、そんな主人公のことを巡り貞操まで狙おうとしてくる主人公大好きなヒロインたちのお話です!
この第一話を読んだ段階での皆様のこの作品に対する評価や期待値などを教えていただきたいので、積極的に素直な評価をしていただけると嬉しいです!
その中で、もしこの作品を楽しみだと思ってくださった方が居ましたら、この作品を応援すると思っていいねや☆、コメントなどをしていただけると本当に嬉しいです!
今日からよろしくお願いします!
◇
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