第11話 降って湧いた休暇
シャクッ
病院のベットの上で、俺はリンゴをそのまま齧る。
お見舞いに来た同業の面々からフルーツの盛り合わせを貰ってしまった。最近は忙しくなって味の濃いものや即席のものばかり食べていたから、自然な甘味の美味しさをより感じられる。
武刃と竜田姫は大泣きして看護師を困らせていた。
あぁ、ちなみに俺もその子達も全員戦士の姿だ。病院外には報道陣がいるし、身バレ防止が必要だからね。俺はそれに加えて、その方が回復が速いからだ。
「美味……」
最近のブドウは種がなくて皮も美味い。今日初めて知ったよ。俺が昔食べていた実が小さいやつはなんだったんだ?ってぐらいの肉厚な食べ応えと言えよう。
まぁそんな話はさておいて、その後に来た釜森長官から今後について話をした。言っておくけど、あの人は何も持ってきてくれなかった。
別に気にしてないけどね!
内容としては俺の復帰や穴埋め、その他諸々俺がやっていた仕事である。俺としては九州の方から数人、中堅を何名か派遣して貰おうと考えていた。しかし、釜森長官にそんな心配はないと一刀両断されてしまった。本当に大丈夫であろうか?
これでも長年前線で戦ってきた自負はあるが、そんな簡単に穴埋めはせず、現存戦力で事足りると言われたような気がして、少し引退の文字が頭をよぎった。
まぁ、辞める気は無いし、どうせ金を使いたくないんだろう。これでも我らの組織の資金はカツカツだ。武装を始めとした多種多様な設備の維持が一番の原因だから、しょうがないんだけどねぇ。
暇だしテレビでもつけよう。
お昼のニュース番組は全て、俺の見舞いに来た戦士へのインタビュー映像で埋め尽くされていた。
「ふっ……」
途中、竜田姫の泣き顔ドアップで少し吹き出してしまった。それでも、仲間達に慕われているのだと実感できていい気分だ。
そして、そんな事件の関係者である、あの青年。カガヤキという名前が世間に知れてるぐらいには有名な人だったらしい。失礼なことしてないかな?俺。
しかし見ていくと、彼がバッシングされてるとのこと。なんでも彼のせいで俺が怪我をしたとか、迷惑なことをするなとか………
ネットの書き込みがあるというのは知っていたが、今まで忙しかったし、見たことはなかった。一応竜田姫にせがまれて俺のスマホには一言も発していない【ヤタラス】のアカウントがある。
そのアカウントからカガヤキくんの検索をしてみる。
迷惑、お前のせいで、余計な、最悪、邪魔、ウザイ、消えろ、ゴミ、クズ、死ね…etc
俺の怪我は彼を助けるために俺が甘んじて受けたことだ。非難するなら俺にあれを防ぐ手立てが無かったことだと思う。
それに一般人が戦場に迷い混んだり、興味本位で来るのは、ぶっちゃけ多い。どんなに注意喚起しても物陰から戦いを撮影したりする人に関してはかなりの頻度でいる。昔聞いた戦場カメラマンみたいなものだ。これも我々の組織からカメラマンを派遣できれば良いのだが、そんな金はねえってさ。
だから俺からしたらカガヤキくんをここまで非難する必要はないと思う。
そんなことを思いつつ、最近の機械はすごいと感心していると、一つの新規動画が目に止まった。
「ヤタラス 戦闘 加工無し CG無し……?」
これはさっきの戦場カメラマンの動画の一つか。
………一体いつの戦闘だろうか?
自分の戦い方を俯瞰的に見れる興味で俺はその再生ボタンをタップした。
たった数十秒の映像だったが、俺はそれを何度も見返した。
映像には俺が青年を庇って攻撃を受けた所までが映っていた。だが、注目してほしいのはそれじゃない。俺が受けたエネルギーの塊の方だ。若干だが、エネルギーの中に剣らしき影が見える。
これを解析チームに見せれば、あのASの情報を掴めるかもしれない。逃げられた以上更なる対策が必要になるからだ。………えっと、確かリンクをどうたらで映像を送れた筈…………………………………どれ?
俺の人生初のナースコールはスマホのリンクのコピーと張り付けを聞くことだった。
この動画を撮った人は命がけで撮り、それを公表したのだろう。本来なら謝礼金が出るのだが、我らが長官はケt………お金に厳格な人のため、この情報が役に立たない限り、謝礼金は無いだろう。
まぁ、流石にポンポン与えると、それに味を占めた人々が戦闘の邪魔をしたり、それでポックリ死んでしまっても困るからね。
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