知りたくなかった彼女の秘密!

崔 梨遙(再)

1話完結:1700字

 僕は2度目の離婚で女性不信に陥った。2人目の嫁は最悪だった。入籍してから借金があることがわかった。毎月、どこかのカード会社から督促状が届いた。僕が払っていた。


「自分の借金の分くらいは働けよ」


と言ったが、嫁は最後まで働かなかった。入籍前に言ってくれれば良かったのだ。入籍後に言われたら「騙された!」と思ってしまう。


 それだけならまだ良かった。嫁は浮気したのだ。しかも、7ヶ月で4回。僕は耐えられるだけ耐えた。何故ならバツ2になりたくなかったから。だが、4回目で我慢の限界を超えた。


「離婚や! 明日の朝には実家に帰れ!」


 と言ったら、台所から1番大きな包丁を持ってきた。


「離婚するくらいなら死んでやる!」


と言うと思ったら、


「離婚するくらいなら殺してやる!」


と言われた。そして包丁を振り回された。なんとかお互いに怪我の無いように取り押さえ、朝を待たずにタクシーで実家に帰らせた。


「絶対に離婚届けにハンコは押さんからな!」


 実家に籠城されて、離婚届けをもらうのに3ヶ月もかかった。離婚届けを提出した頃には、僕は力尽きていた。


 人生にリセットをかけたくなって、転職した。そして引っ越した。



 しばらく、どんな女性を見ても何も思わない、何も感じない日々が続いた。


 気分転換に、連休を利用して知人とH県へ行った。帰り、大きな駅で土産物を買おうと思ったら売店に超僕好みの女性がいた。名前は貴理子。そこで土産を買った。他に客がいなかったので、話しかけてみた。思いがけず話が盛り上がった。名刺を渡して帰った。


 その夜、貴理子から電話があった。盛り上がった。それから毎晩、貴理子と電話をするようになった。そして次の土曜に会うことになった。


 貴理子は若く見えたが僕よりも9歳上だった。バツイチ。旦那と別れたばかりだということだった。会う度に愛しくなり、2人目の嫁のせいで出来た心の傷痕が癒やされていった。僕達は婚約して同棲を始めた。彼女が仕事を紹介してほしいと言うので、僕の勤めていた会社の社長に頼んで雇ってもらった。同じ職場になった。


 楽しい日々が続いた。貴理子とは体の相性も良かった。いろんなデートスポットにも行った。僕は充実した毎日に満足していた。



 貴理子は月に2回、実家に帰っていた。金曜日の晩に帰り、日曜日の晩に大阪に戻って来る。


「お母さんが1人になってしまって、心配だから定期的に様子を見に行きたい」


ということだったので、僕も気持ち良く送り出していた。交通費と土産代を、毎回僕が渡していた。


 或る日、違和感があった。今まで、貴理子が帰省中は電話をかけていなかったのだが、用事があって帰省中に電話をしたのだ。だが、“電源が入っておりません”というアナウンス。


 不安になった。次に貴理子が帰省した時、また電話をかけてみた。“電源が入っておりません”というアナウンス。


 貴理子は帰省中、携帯の電源を切っている!


 貴理子に事情を聞いてみた。


「なんで、実家に帰っ時は携帯の電源を切ってるの?」

「……」

「黙ってても、しゃあないで。話すまで許さへんよ」

「実家にな、まだ別れた旦那がいてるから」

「マジ! なんで?」

「忙しくて、不動産屋に行く時間が無いらしいわ」

「いやいや、そこはちゃんとケジメをつけなアカンやろ」

「でも、何も無いで」

「夜はどこで寝てたん?」

「ベッド」

「ベッド2つあるの?」

「1つ」

「ほな、一緒に寝てたんか?」


 なんと、貴理子の実家には、まだ元旦那が住んでいるということだった。そして、貴理子は元旦那と同じ部屋の同じベッドで寝ていたらしい。貴理子は必死で、


「旦那とはもう何も無い、ただ一緒のベッドで寝てただけ」


と弁解していたが、僕は元嫁の浮気に対するトラウマに襲われて、貴理子を信じることも許すことも出来なかった。“また、浮気された!”と思った。


 僕は貴理子と別れた。危ないところだった。入籍する前に気付いて良かった。それからしばらく、本格的な女性不信になった。



 これが、婚約破棄をした理由。







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知りたくなかった彼女の秘密! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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