第53話 食べ過ぎ!?一人作業!?マスコット!

「食べ過ぎたわ…」


「同じく…食べ過ぎました…」


「本当に食べ過ぎたね。チキン南蛮の味が濃かったからごはんが進み過ぎちゃったよ…それに、キムチもごはんに合うから、手が止まらなかったよ…」


 昼食を食べ終えてからも僕達3人は暫く動くことが出来ず、椅子に座ったまままったりとしていた。


 午前中はお漬物系の作業を行い、お母さんの(飛行)魔法の練習も行った。なのにも関わらず、10時のおやつを食べていなかった為か沢山食べてしまった。ごはん1合+胸肉1枚+αを食べきる6歳児とか頭おかしすぎるよね…普通の人の3~4倍は食べたんじゃないかな?アルエは、同じ6歳でもドラゴンだからね。ごはん3.5合+胸肉4枚+αでも、まだ分かるよね?もともとの大きさのドラゴン形体ならそのくらいペロリだろうしね。それと、お母さんのごはん1.5合+胸肉2枚+αも大概だよね…


 でも、お母さんもアルエもしっかり食べてもう少し肉付きが良くなった方が良いからね。ここ2週間くらいで改善されてきているとはいえ、もともと2人はガリガリだったしね。


「今日のお勉強はお休みね…暫く動けそうにないし、下を向いていたら色々と危ないわ…」


「はい…ちょっと、今日はこの幸せな余韻に浸っていたいです…計算のお勉強もやりたい気持ちはありますが、わたしも今は動けそうにないです…14時くらいまでこのままゆっくりしていたいです…」


「ええ。料理開始まではここでゆっくりしていましょう。」


 そういうと2人は椅子の背もたれの角度を変えてのんびりする体勢に入ってしまった。


 リビング用の椅子だけではなくこの家の椅子には、ほぼ全てにひじ掛けやリクライニング機能を付けている。ただし、フットレストに関してはあるものと無いものがある。僕だけかもしれないけれど、食事中はフットレストがあると邪魔に感じてしまうからね。


「これで、アインかアルエを抱きしめながらのんびりできたら最高なのだけれど…今は無理ね。今2人に乗られたら、色々出てしまうわ。」


「そうですね…今お腹が押されるとまずいです…」


 そんな感じで他愛もない話をしながら、1時間以上ゆっくりと過ごしていた。


 ………?そういえば、3人でこんなにゆっくりしたのって初めてだね。小籠包の時も皆動けなかったけれど、あの時は少し休んで直ぐに動き始めちゃったからね。これからは、もう少しこういう時間を作っても良いかも…今までは、空いた時間は常に勉強か何かをしていて、ゆっくりする時間を取れてなかったからね。


 ………

 ……

 …


「さぁ!始めるわよ!今日は、私が一人で作る番ね!」


「頑張ってください!ママの次は、わたしの番です!ママの動きを見て明日からの参考にさせてもらいます!」


「それなら、なおさら気合を入れなくては駄目ね!明日は、私がアルエの動きを見せてもらうからお互いに頑張りましょうね。」


 ついに今日からは、お母さんとアルエのビーフシチュー作りの一人作業だ。基本的に3人で作るならば、それぞれ担当を決めるのであまり全てを一人でやることはない。しかし、一人で作れるかどうかはとても大事なことだと言うのが3人の共通認識だ。だからこそ、一人作業が始まる今日からの作業にはお母さんもアルエも気合十分だった。夜は2人ともビーフシチュー作りの手順確認等の作業等連日話し合っていたからね。アルエも計算の勉強はお昼だけで、夜はお母さんと一緒に料理の勉強だったからね。


 お母さんは、材料の準備から始める。


 玉ねぎを始めとした野菜類やお肉、ワインやフォンや調味料を並べていき材料の確認だ。確認が終わったら野菜類を切り、お肉に塩や小麦粉を振り、香草をまとめる等の下拵えに入った。


 あっという間に野菜やお肉の下ごしらえを終わらせてしまう。お肉の周りに焼き目を付けて肉汁を逃さない様にしてから一旦バットに移す。その後野菜を炒め、ワインを煮詰める作業までそう時間が掛からなかった。


 そして、現在お母さんはデミグラスソースとチキンブイヨンを入れて煮込み始めた所だ。


「もう、煮込み作業に入っちゃったの?まだ、15時前だよ。お母さんは、ビーフシチュー作りは完璧だね。」


「ちゃんと考えていた通りに手が動いて良かったわ。勉強していた甲斐があったわね。今までは、ほぼ野菜しか触った事が無かったから、いくら勉強しても心配だったのよね。」


「ママの野菜を切る速さが凄かったです!お肉や野菜を焼いていく作業も手際が良くてカッコよかったです!まあ、料理している時はいつもカッコいいですけど…」


「あらっ、アルエ。ありがとう。まだ完成した訳じゃないから油断はできないけれど、そう言ってもらえて嬉しいわね。それに、濾す作業とハンドブレンダーを使う作業は慣れていないもの油断できないわ。」


「アルエの言った通り、お母さんの料理している姿はいつも素敵だよ?真剣な顔つきで、カッコいいって感じだよね。」


 アルエのカッコいい発言をお母さんがサラッと流しそうだったので、改めて僕も素敵だったと伝える。


「もう!アインもアルエも私をそんなに嬉しくさせてどうするのよ!折角アルエに料理姿がカッコいいって言われたことを、クールに受け止めようとしたのに…アインにも言われちゃったら、これからも意識しちゃうじゃないのよ!」


 どうやら、お母さんはニヤケ顔を隠すために敢えてサラッと流そうとしたみたいだった。僕の追撃でたまらず破顔してしまったけれどね。


「…ところで2人とも3時のおやつは食べられる?僕は、まだお腹の容量に空きが無いからなしにするんだけれど…2人はどうする?」


「「無理ね(です)!」」


「流石に昼食を食べ過ぎたわ。まだ、何も食べたくないもの。料理で多少動いたとはいえ、お風呂に入って夕食の時間になったら、その頃にはおそらく何とか食べられる感じね。」


「わたしもです!お昼に食べ過ぎました!あれから、まだ2時間位ですよ?無理です!まだお腹いっぱいです!」


 そうだよね…流石に無理だよね…


「それに、まだガルニチュール作りもあるし休んでいる時間は無いわよ。どれも簡単なものだけれど、後で慌てたくないものね。ビーフシチューの灰汁取りが一段落着いたら、そのままそっちに取り掛かるわ。」


 お母さんは、そう言って灰汁取りを終えてから卵やジャガイモ、ブロッコリーを用意し始めた。


 灰汁取りも本当に丁寧だね。灰汁がほとんど出なくなるまでずっと鍋に張り付いていたよ…


 ガルニチュール作りのための卵を茹で、ジャガイモをオーブンに入れ、ブロッコリーを小房に分け終える。卵が茹で上がったら、同じ鍋に塩を入れそのままブロッコリーを茹でていく。結局ガルニチュールを作り始めてから30分程で3品が完成した。


「ガルニチュールもあっという間に完成しちゃったね。後はもうビーフシチューが焦げない様に見ているだけじゃん!とは言っても、ほとんど焦げ付くことなんてないと思うけれどね。」


「ええ。アインが作ってくれた時から昨日までの感じだと、鍋底が焦げ付いてしまうことはないと思うのだけれどね。やっぱり心配だから混ぜたりして様子は見続けておきたいわね。」


「おにいちゃん!ママの作業が濾す時までは落ち着いたので、1時間位?計算のお勉強をしたいです!次は割り算ですよね?割り算教えてください!」


「もちろん!それじゃあ、勉強道具を持ってきてね。1時間勉強して、お母さんが濾し始める前に大根の取り込み作業をやろうね?」


「はい!直ぐに取ってきます!ママは、どうしますか?読みたい本が有れば、持ってきますよ?」


「ありがとうアルエ。でも、私は大丈夫よ。今日は、鍋を見ていたいのよ。」


「分かりました!じゃあ、ちょっと行ってきます!」


 ………

 ……

 …


「割り算のこの縦に計算する方法って、九九さえ覚えておけば割と簡単なんです!掛け算も割り算も九九をどれだけ自由自在に操れるかですね!おにいちゃんが、81マス計算をひたすらわたしにやらせていた理由が分かりました!」


「それに気づくことが出来るだけで凄いよ。それに、割り算で詰まる人が結構いるって書いてあったからね。1時間でほぼ割り算を出来るようになるとか、アルエは賢すぎるよ!」


「アルエ凄いわ!私なんて今はもう計算出来るけれど、昔割り算で少し詰まっちゃったのよ。ナデナデ」


「えへへへ...」


 アルエは、お母さんに褒めらながら撫でられてフニャっとなってしまった。


「そろそろ大根を取り込みたいんだけれど大丈夫?」


 いつまでもアルエの頭を撫でているお母さんと、お母さんに抱き着きフニャっているアルエを促して大根の取り込みを行う。もう既に16時半となっているので、さっさと取り込まないとね。


 その後、お母さんが濾し作業を行い、ビーフシチューを休ませる状態まで持って行く。


 流石に濾し器やハンドブレンダーには、慣れていないため多少時間が掛かることはあった。お母さんも、慣れていないって自分でも言っていたしね。


 しかし、ただ単にゆっくり丁寧に作業を行っていただけだった。もう、これは食べなくても分かるね。絶対に美味しく出来ているよ。


 ビーフシチューを休ませる段階まで進んだので、お風呂の時間だ。僕とお母さんはそのままお風呂へ向かい、アルエは一旦勉強道具を片付けてから向かった。


 僕達と一緒にお風呂へ向かおうとして、僕とお母さんに揃って勉強道具を指さされ、「直ぐに行きますから!先に入っていてください!」って駆けていったアルエに、僕とお母さんは顔を合わせて微笑んでしまったよ。


 我が家のマスコットは、可愛いねってね!

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