第28話 景色!?緩い!?ひがしものの塩こうじ漬け!

 お母さんの部屋に入ると、二人はもう起きていて主室のソファに座り麦茶を飲んでいた。


「朝食を作って来たんだけど、少し作りすぎちゃったからダイニングで食べることにしたいんだけど大丈夫?」


「もちろんよ。アイン、いつもありがとう。」


「はい!もちろんわたしも大丈夫です!楽しみです!」


 二人から、いい返事をもらうことが出来たので3人で連れだってダイニングへ向かう。


「今日は、国境を超えるのにどれだけ時間が掛かるか分からないでしょ?だから、パンよりも腹持ちのいいごはんを主食にした献立にしたんだ。焼いた塩こうじ漬けひがしもの、副菜は出汁巻き、小鉢としてきゅうりとかぶの浅漬け・切り干し大根の煮物・冷奴、ねぎ・わかめ・お麩の味噌汁だよ。」


 焼き魚と出汁巻きは作りたてを時間経過の無いストレージに保管しておいたので、テーブルに並べるときは出来立てホカホカの状態だ。特に出汁巻きは、時間が経つと水分が出てきてしまい味が落ちてしまうので出来立てを食べて欲しい。


「この玉子焼きは、ふわふわで嚙んだら出汁がジュワって出てきて凄く良いわね。こっちは、お魚かしら?これも、凄く美味しいわね。お肉みたいな感じなのに、確りとお魚の味がするわね。」


「この玉子焼きは、出汁巻きって言った方が良いかもね。出汁を沢山加えて作るから、時間が経つと出汁がにじみ出てきちゃうんだ。だから、玉子焼きの中でも出汁巻きは作りたてを食べないと美味しくないんだよね。こっちの、お魚はメバチマグロって言うマグロの一種だよ。その中でも、最上級品と言われるひがしものって言うのを使ってみたんだ。朝から脂が多いとキツイかと思って、赤身の部分を選んだんだけど、美味しいなら良かった。」


 アルエは、「お替りください!」とか「すっごく美味しいです!」位しか言わないで、ほぼ無言で満面の笑みを浮かべながらガツガツ食べていた。5合炊きの土鍋が綺麗に空になったよ。気に入ってくれたようで作った僕も嬉しい。


 ………

 ……

 …


 朝食を食べ終わったので、腹ごなしに少し休憩してから出発の準備を始める。


 アルエは、このままドラゴンの姿に成ればいいと言っていたが、ちゃんと洗顔と歯磨きはさせておいた。うん…手抜きは駄目だよ?


 僕とお母さんは、一応そこまで華美ではない服装にしておいた。最終的にカーゴパンツにシャツ、薄手のセーターと言うシンプルなものに落ち着いた。お母さんは、最初長めのスカートを着ていたが、スカート系は遠慮してもらい丈夫でポケットが付いているカーゴパンツにしてとお願いした。街中にいる人ならまだしも旅をしている女の人がスカートとか怪しいよね?


 二人ともマント位は被っておいた方が良いのではないかと言うお母さんの案があったので、茶色で足まで隠れる長さのフード付きマントを出しておく。マントは、一応“認識誤認”で旅人が羽織っていて違和感がないくらいに汚れていると思うようにしてある。仕立てが良すぎて逆に怪しまれたりしたら面倒くさいからね…


 着替えなど出発準備を済ませ、洗濯も終わらせてからゆっくりと出発する。アルエはドラゴンの状態になってお母さんの腕の中だ。


 出発してから1時間弱経った頃、商国ルバセーへ入るための関所が見えてきた。鍛冶国家ドメイワと商国ルバセーの国境線には大きな川があり立派な橋が掛かっていた。魔法の力も借りているのだろうか?前世にあった1915チャナッカレ橋や明石海峡大橋よりも長く3㎞近くありそうだ。それに横幅も40~50mあり、何なら街道よりも立派なくらいだ。この景観だけでお金を取れる位凄い。橋の両端にも詰め所のようなものがあったので、この橋は両国で兵を出し合って守っているようだった。なにかあれば国の恥じだし、弱みを握られることになりかねないという事かな?ちなみに鍛冶国家ドメイワを出る時の関所と商国ルバセーに入る時の関所は橋の両端にある詰め所とは別にあり、川を挟んで数キロの地点にあった。


 ちらほらと馬車や歩いている人も見えており、地上に降りる場所を探さなければいけない。他の旅人や商人、国境警備隊の人達の前にいきなり姿を表したら警戒されるし面倒ごとはできるだけ避けたいからだ。商国ルバセー側の橋の詰め所と関所には2~3㎞の距離があるので、上空から良い場所を探していく。


 関所と橋の丁度中間位の位置に、人と人の距離が開いてる場所があったのでそこに降りて“認識阻害”を解く。進むスピードの違いで結構間隔が空いていたので、ここなら誰かに不審がられることはないだろう。


「ここなら前と後ろの人達との距離が結構あるから大丈夫だと思う。“認識阻害”を解いたから他の人達から僕たちの姿が見えるようになったから、一応気を付けてね。」


「任せてアイン、大丈夫よ。私も上から見ていたから、大体どこに何があって人がどのあたりにいるか把握しているわ。もし、変な人が来ても走れば追いつかれる前に関所に着くわよ。それに、こういう時は堂々としていれば周りから変に思われることも無いんじゃないかしら。」


 お母さんは屋敷でメイドをしていた時からそうだったが、こういう時はかなり肝が据わっている。なにせ屋敷で何があろうとも僕の側に居続けてくれて、屋敷から出る時も即決即断、暗殺者に襲われても自分の心配は一切せずに僕の事だけを心配してくれていた位だ。こういうところは本当に心強い。


 お母さんと並んで歩いていると1時間弱歩で関所に着いた。アルエは、お母さんの腕に抱っこされていた。歩いている最中は、何も問題は起こらず誰とも会うこともすれ違うことも無かった。ルバセーから出る人達は朝早く出ているので、昼前のこの時間にこんな場所を歩いている人が居なかったと言う事かな?


 門の前には左右に分かれて2人づつ4人体制で警備をしている。入国待ちの人は見当たらないので、直ぐにルバセーに入れそうだ。門の前にいる兵士の人に声を掛ける。


「すみません。料理大会に出るためにステボナを目指しているのですが、通っても大丈夫ですか?」


「身分証はあるか?無いならば、入国料は一人銀貨5枚になる。そのバトルクロウは君たちの従魔か?そのランクの魔物であれば、銀貨2枚になる。2人と1匹で金貨1枚と銀貨2枚だな。しかし、君たちの荷物は少ないな。“空間収納”持ちか?」


「はい。そこまで大きくありませんが…金貨1枚と銀貨2枚ですね?」


 僕は、“空間収納”では無く“再現魔法”で“ストレージ”を使っているが大体同じものだし、訂正して面倒くさい事になっても嫌なので適当に流す。


 ここで通過についての説明をしておく。価値の低い順から、小鉄貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨となっている。イメージとしては、小鉄貨=10円、鉄貨=100円、銅貨=1,000円、銀貨=10,000円、金貨=100,000円となっていて白金貨だけは1枚10,000,000円となっている。金貨までは10枚で一つ上になり、金貨100枚で白金貨1枚になる。


 僕は、伯爵家から迷惑料として地図と一緒に金貨や銀貨が大量に入った袋を貰って来ている。それを小分けにして小さな袋に入れてあり、銀貨のみが入った袋や金貨のみが入った袋、銀貨と金貨が少しずつ入った普段使いの物まで、用途に合わせて使うことができる。


 今回は普段使いの袋から、通行量より少し多い金貨1枚と銀貨10枚を渡す。兵士1人当たり銀貨2枚分を含めての物だ。


「あの、これでお願いします。少し多いですけど、代わりにステボナまでの道とか、そこまでに通った方が良い街とかがあれば教えていただけませんか?どの街にどういう名物があるかとか僕達全然分からないので…」


 兵士の人は、僕が差し出したお金と僕とお母さん、バトルクロウに見せているアルエを品定めするように見てくる。僕は6歳の子供、お母さんは20歳だが見た目10代前半の美少女、アルエはDランクでしかないバトルクロウという外見だ。見た目だけなら僕達を他国のスパイなんかと勘違いしないとは思うが、出したお金が多すぎて逆に不審に思われてしまっただろうか?それともお金が少なすぎたかな?そもそも僕達は料理大会を目指しているだけでスパイでもなんでもないのだが…


「兵士長~。その程度の事教えてあげればいいじゃないっすか~。こんな子供たちに何警戒してるんっすか~?」


 どうやら僕が話しかけた人は、兵士長で他の3人は部下だったらしい。門を守る兵士としては頭が軽そうな人が僕達に話しかけてくる。


「いいっすね~。情報の対価にちゃんと多めにお金を渡すところとか、年の割にしっかりしてるっすね~。で?何が効きたいっすか?お兄さんが何でも教えてあげるっすよ!」


「おい!この馬鹿!」


 ゴスッ


「いっっった~~~ッ」


 僕からお金を受け取った頭の軽そうな人が、僕達に目線を合わせるためにしゃがんでいたところに、兵士長の拳骨が降ってきた。兵士の人はヘルムを被ってはいるが、兵士長もガントレットを嵌めており兵士長の一撃が効いたようだ。


「相手をちゃんと観察してから話さんか!無いとは思うが、この子達が他国のスパイだったらどうするつもりだ!袖の下なんぞ受け取ろうとしおって!それに、なんでも教えるとは何事だ!教えるにしても言ってはいけないこともある。貴様は、そのちゃらんぽらんな性格を直せと何時も言っておるだろうが!」


「だって!こんな子供と、カワイ子ちゃん、それにバトルクロウっすよ?何ができるって訳でも無いじゃないっすか~」


「それでもだ!はーーっ全く、貴様は黙っておれ。俺が相手をする。」


 そう言って兵士長と言われている人が僕達に向き直り、話しかけてくる。というか、情報料としてお金を多めに渡そうとしたのが良くなかったのか…

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