第11話 覚悟!?説得!?方針決定!

「いやいやいやいや!違うから!お母さんには、怪我一つ負わせないから!僕の魔法の一つに“鑑定”があるのを知っているでしょ?それで、あのドラゴンが仮に僕たちに攻撃してきても、服すら汚れないレベルで完封できると分かっているから!」


「アイン、ありがとうね。でも、ドラゴンと戦うならイロック王国の全兵力でかからなければ駄目なくらい強いって言われているのよ?最後まで私に夢を見せ様としてくれているのかもしれないけど、もうアインには2度と死んでほしくないの…アインなら私の事をこの場に留めたまま、逃げることができるでしょ?私の事を囮にして早く逃げなさい。お母さんからの最後のお願いよ。」


 ………お母様が、完全に覚悟を決めていらっしゃる。


 ええっと…勝てなくても最悪“転移魔法”で逃げることができるんだけど…伯爵家から出る時、家まで転移したの忘れているのかな?


「あのぉ…お母さん?最悪“転移魔法”で逃げられるよ?伯爵家から家まで転移したよね?それに、僕の飛ぶ速さは後5倍くらいまでならあげられるから、追いつかれないようにすることもできるよ?お母さんの体に負担がかかるからあまり速くするつもりは無いけど。」


「…………………………………………(ボンッ)」


 ドラゴンが出現したという国家的存亡の危機レベルの事が起こり、転移の事などすっかり忘れていたのだろう。僕から転移の事を言われて思い出し、顔を真っ赤にし口をパクパクさせていた。おそらく、先ほどの口付けや辞世の句を思い出している事だろう…


「てってっ転移?そっ、そう転移ね!覚えているわ!あっ、当り前じゃない!(それと...さっきの事は忘れて...欲しいかなって...)」


 ギギギギギと壊れたブリキの玩具のように首を動かし、完全に動揺していますという発言をして、最後は俯きながら消え入るような声でさっきの事は忘れてと言ってくるお母さんは、「なんだこの可愛い生き物は?」っていう感じだった。


 さっきのシーンを僕の脳内メモリーに保存した後、お母さんの動揺や忘れて発言をスルーしつつ改めて尋ねる。


「お母さん?動揺している所悪いんだけど、あのドラゴンに近づいても大丈夫?“鑑定”だとステータス的に、あのドラゴンに僕たちが危害を加えられることはなさそうだけど…」




 ここで、魔力ステータスについての話をしよう。転生時にインストールされた情報によると、基本魔力を伸ばす訓練をしていない人だと0~100前後しかない。魔力を使い切ることで5%程の魔力増加を見込めるので、皆選定の儀以降魔力増加がほとんど見られなくなるまで、毎日必死に魔力を使い切っているらしい。つまり、運がいい事に魔力100の人が2か月魔力を伸ばし続けられれば、2300位まで上げることができるようだ。ちなみに過去の最高値は1万を少し上回った位みたいだ。


 では、僕はどうだろう?僕は2歳9か月から今まで1300日弱の時間んがあった。時間が取れなくて魔力を使い切れなかった日もあったが、1000日以上は魔力を使い切る魔力増加訓練を行っていた。


 1.05の1024乗≒7×10^10


 これに、転生者共通特典らしい初期魔力1万(過去最高近くで切りのいい数字とのことだ)を掛けると。


 僕の魔力値は7×10^14(700兆)だ。文字通り桁が違う…


 そして、あのドラゴンの魔力値のオーダーは10^5(10万)。ファイヤーボール等の攻撃用の魔法も結界等の防御用の魔法も、使用した魔力量や魔法に込めた魔力密度によって威力が左右される。つまり、あのドラゴンが全魔力を込めた攻撃をしてきても、結界に僕の全魔力の100万分の1でも込めれば防ぎきることが可能になってしまう。魔力使用量の目安としては、家を出した時に10万、伯爵家から家までの転移(50㎞)で5万程だ。


 ちなみに、魔力とは違い素の身体能力の方は、きっちり鍛えている7歳児くらいしかない。ただ、基本常に身体強化を掛けているのでパンチで岩を砕けてしまう。強化の割合は自分の好きに決められるので、ドラゴンと殴り合うならもう少し出力を上げて腹パンで相手が蹲る位に調節できる。


 そのため、ステータス的にどうやってもドラゴンの攻撃で服すら汚される事が無い。




 とまあ、これらが魔力ステータスについての(私自身を含めた)話になる。


(値が異常すぎるので)あまり見せたくはなかったが、僕の魔力のステータスをお母さんに見せてドラゴンのステータスを教え、“安心安全なドルフィンスイムならぬドラゴンフライを約束します。”というプレゼンを、お母さんが動揺しているうちに矢継ぎ早に行い了解を貰うことができた。


「わかったわ。でも、危ないと思ったら直ぐに転移で逃げるのよ?それと、絶対に怪我をしない事。」


「ありがとう、お母さん。約束するよ。絶対に怪我しないし、お母さんにもさせないから。」


 お母さんに、お礼と約束を改めてした。


 もともと僕は、異世界に来たからにはドラゴンが存在するならば見てみたいと思っていた。僕が料理人を目指すということからも分かるかもしれないが、冒険者やモンスターにはあまり興味が無い。しかし、異世界ファンタジーの代名詞・ドラゴンだけは興味があった。


 それとお母さんには言っていないが、あのドラゴンの性格如何によってはテイムも考えている。お母さんの護衛兼我が家のペットをさせたいからだ。お母さんには、護衛が必要だなと店を出すと決めた時から思っていた。お店を出して繁盛しだすと、よくない輩が沸いてきてお母さんに危害を加えようとするかもしれないからだ。


 再現魔法で“テイム”も“縮小”もできるので、従魔にして体を小さくしてあげれば巨体で目立つことも無いはずだ。“認識阻害”を使えば、ドラゴンだとばれる心配もないしね。


 僕一人だったらテイムはせずに一緒に飛ぶだけでよかったが、お母さんと一緒にいる事で、ドラゴンを従魔に欲しいなと先ほどドラゴンを見ていた時に思った。


 しかし、もうすぐ10時の休憩の時間なのは問題だ。あまり、長く飛んでいるとお母さんが疲れてしまうし、今地上に降りてしまうとドラゴンが僕たちを見失う可能性がある。それに、ドラゴンがたまたまこちらの方向に飛んできているだけで、もし他の理由だった場合、休憩している間にどこかに居なくなってしまうかもしれない。


 ドラゴンの近くに行く許可が出たとはいえ、どうすべきかと悩んでいるとお母さんから提案が来た。


「ねえアイン、もし今からドラゴンの近くに行くとなると結構時間が掛かるでしょ?だから10時の休憩はやめて、その代わりお昼から3時の休憩までをお休みの時間にしない?」


「いいの?もう10時の休憩だからどうしようかなと思っていたんだよね。お言葉に甘えて、そうさせてもらおうかな?」


 ドラゴンと戯れる時間を優先させていいと言ってもらえたので、ドラゴンの方へ進行を変える。


「ドラゴンが近くなる前に“対物結界”と“対魔結界”、“熱遮断”、“振動減衰”を掛けておくね。」


 そう言って物理攻撃を防ぐ対物結界、魔法攻撃を防ぐ対魔結界、ドラゴンブレスなどで周囲が熱くなっても大丈夫なように熱遮断、咆哮などで空気が振動しても体に響かないように振動減衰をかなり強めに掛けた。空気の振動が完全に伝わらないようにすると、声が届かなくなってしまう。逆に振動の減衰が無いと、音が体に響きすぎてしまう可能性があるためだ。これは、花火大会などで花火の音が体にと来るのを考えてもらえれば分かりやすいと思う。万が一にでも、あれの超強いバージョンが来て体の内部を破壊されましたじゃ洒落にならないからね。


 後、“言語理解”をスキルとして再現して自分に付けておいた。ドラゴンの性格を知るためには言葉が分かっていないと駄目だからね。相手の考えている事が分かれば一番いいのだが、従魔や主従関係の相手ならまだしも、テイムもしていない相手の思考を読める魔法は知らないので再現することはできなかった。


 そうして、魔法を掛け準備をしながら飛んでいたら5分もしないうちにドラゴンとの距離がもうすぐそこと言える位になった。近くに来たのでしっかり観察してみると、体長は尻尾の先までで30m近くあり、体中に傷があって歴戦の猛者って感じだ。やはりドラゴンは、生存競争に勝ってきましたと言う感じの雰囲気があると、よりいっそう強そうに見える。



 ゴロゴロ~ギュルルルル~~~グ~~~~~ギュルル~~~


「食べ物ですーーーーー!久しぶりの食べ物ですーーーーーー!」



 後100m位の距離まで近づいたあたりでそんな声が、盛大になるお腹の音らしきものと一緒に聞こえてきた。

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