台風を喜ぶ男

夢神 蒼茫

所詮は他人事

台風

「べ、別にあんたのために来てやったとか、そういうのじゃないんだからね!」



 さて皆様、今現在(2024/8/16)、関東方面に大きな台風がやって来て、人によってはあたふたされている事でしょう。


 なお、鳥取県民の私からすれば、遥か彼方の出来事であり、その脳内ではすでにツンデレ娘へと変身を遂げている。


 アメリカでは、ハリケーンは女性名が付けられるし、まあ、いいんじゃないかな。


 所詮は1000キロ近く離れた遠い世界の話。


 ぶっちゃけ言えば、“他人事”でしかない台風。


 かなり大きめで、執筆中の天気ニュースだと、940hPaの瞬間最大風速60メートルという、かなり強烈なもの。


 幸い、関東上陸はなさそうですが、千葉、茨城両県を暴風域に巻き込む形で北上しそうなコース。


 これを見た時の自分の率直な感想。



「これで白ねぎの値段、上がるかな~」



 不謹慎なようだが、本気でこう思った。


 白ねぎ農家であるので、白ねぎの値段というものは最重要案件であり、少しでも上がって欲しいものだ。


 そして、白ねぎの産地は関東に集中しており、自分のいる鳥取とは遥か彼方。


 それでも市場価格は大きくぶれる場合もある。


 白ねぎの全国の生産高、1位は千葉、2位は埼玉、3位は茨城である。


 この上位三県で、全国の総生産高の40%近くをまかなっている。


 ちなみに我が鳥取は9位だ。


 そんな大生産地が災害に見舞われたらどうなるだろうか?


 答えは単純明快。値段が上がる、である。


 競馬に喩えると、1、2、3番人気の馬が揃って大コケ。そうなると、オッズが大変な事になる。


 何しろ、白ねぎの生産40%を担っているのであるから、市場への影響は大きい。


 今回の台風で1位と3位。少し前の埼玉を襲った局地豪雨で2位もダメージ。


 おまけに台風で陸空ともに物流が鈍る。


 市場価格に影響が出ないはずがない。


 短期的にもそうだが、畑の作物が台風で吹き飛ばされれば、復旧には手間取る。


 折角植えていた作物も、ボロボロにされ、また一から植え直しである。


 それも“苗が吹き飛ばずに残っていれば”である。


 それすらなければ、また“播種”からやり直しだ。


 収穫できるようになるまで何カ月かかるか、知れたものではない。


 だからこそ、市場全体の商品の絶対量が下がり、価格が上昇する。


 どの商売にも言える事だが、需要と供給によって価格が上下する。


 需要に対しての供給の過少であれば、値段が上昇する。


 逆に、供給の過多であれば、値段は下がる。


 ごくごく当たり前の話である。


 そのため、理想的な状態としては、供給不足で値段が上昇傾向にありながら、その商品を自分が抱え込んでいる。この状態であれば大いに儲けられる。


 農業では、この状態になる事はかなり珍しい。


 不作の時は、大抵どこも似たような状況であるからだ。


 転バイヤーが嫌われるのは、これを“人為的”に作り出しているからだろう。


 なにしろ、限定品やなんかを根こそぎ買い占め、色を付けた価格でネット市場に流し、荒稼ぎしているからだ。


 欲して買うのではなく、値段を吊り上げるために買い占める。


 これでは嫌われて当然だ。


 コロナ禍でのマスクもこれでしたね。


 一部がマスクを買い占め、一時市場からマスクが消えた。


 そして、とんでもない値段でお目見えした。


 まあ、アベノマスクを引き金に、一気に下落しましたけどね。


 売り逃げし損ねた業者が大量の在庫を抱えて悶絶していたのは、ざまぁみろと思ったものだ。


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