家の購入

「そうだなー・・・家の大きさ的には従者があと5人は住めるぐらいの大きさが欲しいですね。あと、家の維持をしてくれる使用人も何人か住めるぐらいの家がいりますね」

「そうなるとかなりの大きさの家になりますね。いっそのことグレン様と従者の方々が住まわれる家と使用人の家と分けるのもありかもしれませんね。

 ただ、かなりの土地が必要となってしまいますが」

「そうなりますよね。ちなみに想定している家からすると土地はどれぐらい必要になります?」

「拡張性も持たせた方がいいと思いますので、これぐらいの土地がオススメになります」

「かなり広いな」


 オススメされた土地は大きい屋敷が3つほど建てれる土地だった。区画的にはBランクの区画で値段は区画内では一番の高額となるが、一番の土地の広さがある。更にギルドからも近いしレストも近場にある。治安も悪く無さそうな住宅街だからありだな。Aランクの区画も買えなくはないが、土地がそもそも狭い上に高い。


「この土地の値段はいくらですか?」

「金貨850枚ですが、オマケさせて頂いて800枚になります」

「金貨50枚もオマケしてくれるんですか!?」

「はい。あ、申し遅れましたが、私はこの商業ギルドで副ギルドマスターをしていますカレリアと言います。なので、私の権限でお安くさせて頂きます」

「しかし、そんなに安くしていいんですか?」

「もちろんです。グレン様はAランクの冒険者であり、冒険者ギルドへ大変レアな素材を買取に出してくれています。その素材は冒険者ギルドから商業ギルドへ売られ、商業ギルドは市場へ流通させているのです」

「なるほど。そのレアな素材のおかげで商業ギルドも儲かっているということですか」

「その通りです!」


 俺は冒険者ギルドから報酬を貰い、冒険者ギルドは商業ギルドで利益を上乗せして売る。商業ギルドは更に利益を上乗せして市場に流すということか。けど、利益をそれだけ上乗せしてたら市場にはかなり高額な素材ばかりが流れることになりそうだが。


「その点は大丈夫ですよ。基本的に冒険者ギルドから商業ギルドへ卸される素材は武具の材料や貴族の嗜好品という類が多いです。食材は冒険者ギルドから直接市場へと流すことになっておりますので、価格の高騰はしません。

 レアな素材を使用した武具は確かに高価ですが、使用する人は冒険者となりますので、頑張って稼いで買えばいいんです。その他の貴族の嗜好品も相手が金持ちなので問題ありませんね」

「そういうことですか。つまり、この前のサイクロプスの素材も高く売れたと」

「やっぱりサイクロプスの素材はグレン様だったんですね! あれほどの素材はお目にかかれません。かなり高額な値段で市場に出したのですが、速攻で売れてしまいましたよ」

「それは良かったです」

「ですので、Aランク冒険者の方へは便宜を図ってもいいんです。この国で定住して貰い、安定して素材を提供してくれれば商業ギルドはどんどん儲かりますので」

「そういうことなら遠慮なくご厚意に甘えさせてもらいます。では、この土地にします」

「ありがとうございます。家を建てる建築家に当てはありますか?」

「いえ、冒険者ギルドぐらいしかほとんど行っていないので・・・。紹介をお願いしてもいいですか?」

「分かりました。後日グレン様へ職人を紹介させていただきます。そこで家の間取りなども決めた方がいいかと思います」

「何から何までありがとうございます」

「いえいえ、グレン様のおかげで商業ギルドも美味しい思いをさせていただいておりますので当然です。では、今後とも商業ギルドをよろしくお願いします

 あ、出資しているレストですが、2号店を出したくなった場合もご相談下さいね」


 やはり商業ギルドの副ギルマスだな。商魂たくましい。こうして金貨800枚で購入した土地を見に行く。目的の場所へ到着したが、土地の広さに驚く。


「おいおい。こんなに広いのかよ」

「これは・・・主様、今から家が建つのが楽しみですね」

「そうだな」


 何も無い土地に家が建つのを想像すると今から期待で楽しくなる。俺と同じ気持ちなのかスカーレットとサクラもはしゃいでいる。こうして宿屋へと帰り眠りにつく。


「まさかこの王都でも選りすぐりの職人を紹介するために1週間も待つことになるとは」

「仕方ないよグレンさん。それだけ腕の立つ職人だから仕事も立て込んでるみたいだし。どうにか手が空いてる今日に無理やりねじ込んだって聞いたよ」

「それはありがたいんだが、家が建つのはそうなるといつになるんだろうか」


 あれから1週間が経った。カレリアさんの連絡を待っていたのだが、王都でも一番と言われるほどの職人を紹介してくれるとは思わなかった。そんな職人だから仕事も大量に抱え込んでおり、俺たちが会えるのは1週間が経った今日になったのだ。


「よお! お前たちがカレリアから紹介があったグレンたちか?」

「そうです。あなたが職人のクラフさんですか?」

「おうともよ! 王都でも腕前は一番と自負してるぜ!」


 やっぱりこういった異世界のファンタジーだと職人はドワーフが定番なのだろうか。目の前にいる職人はドワーフ族のクラフさん。トンカチを片手にいかにも職人です! といった感じの見た目をしている。俺がファンタジーの世界で持っている知識の通りのドワーフ族といった感じで背は小さいな。


「それで、どこの土地に家を建てるんだ?」

「あれ、カレリアさんからは何も聞いてないんですか?」

「依頼主から全てを聞くのが一番だからな。会話をすれば相手の人となりが分かり、建てる家にも反映されるってもんさ」

「そんなことまで出来るなんて凄いですね」

「まぁな! さ、土地へ案内してくれ」


 俺はBランク区画の広い土地へと案内した。その土地の広さを見てクラフさんは驚きの声を上げる。


「この土地が売れたと思ったが、まさか買ったのはお前さんたちだったのか」

「そんなに売れてない土地だったんですか?」

「うむ。Bランク区画ってのは土地の広さと土地の価格がお手頃ってので買うやつが多いんだ。だが、この土地は広いうえに高いってので売れ残ってた。立地的には最高なんだなー・・・やっぱ金貨850枚ってのが高いか」

「金貨850枚でも破格だと思うんですけどねー。土地が広すぎて持て余すってのはあるかもですね」

「そういうこった。さて、どういった家を建てたいんだ?」


 俺と従者を含めた9人ほどが住める俺たちの母家。それから使用人の人たちが住める家も欲しいな。残りの土地は空けておいて何かしらやれるようにしておきたいことを伝える。


「使用人のための家まで建てるのか。お前さんたち相当な金持ちだな。貴族でもなかなかそこまで家を建てるのはおらんぞ」

「そうなんですね。けど、自分たちのために働いてくれるのであればしっかりとした衣食住を揃えてあげたいじゃないですか。そうすれば仕事もしっかりしてくれそうですし」

「がはははははは! 思った以上に人柄がいいやつで気に入った。冒険者なんてのは自由でいたいのが多いから自分本位な人間が多いんだが、Aランク冒険者なのに全然違うんだな」

「主様をそこら辺の冒険者と一緒にしないで下さい」

「グレンお兄ちゃんは私たちのために動いてくれるんだよ」

「グレンさんは優しい人です」

「従者たちからも好かれてる、か。ますます気に入った。よし。本来なら着工するのに半年先となるところだが、今すぐに着工するように手配してやる」

「え!? そんなことしていいんですか?」

「俺が受ける仕事を決めて俺が全ての計画を考える。だから俺が何をしてもいいんだ。まぁ、気にするな。他の仕事には支障がないように動くさ」

「ありがとうございます」

「間取りとかは決まってない感じか?」

「そうですね。家を建てるってなったのですが、何も分からないんですよね」

「分かった。こっちにそれは任せてくれねぇか? 必ず納得いくように作ってみせる」

「この王都で一番の職人の腕を信じていますので、お任せします」

「そこまで言われたら期待以上の良いものを作らねぇとな」


 こうしてクラフさんは建築へと取り掛かった。半年先まで仕事が埋まってたのに大丈夫なのだろうかなどと考えていたが、クラフさんの仲間であろうドワーフ族の人たちが来て作業員が一気に増えた。

 なるほど。この人数で取り掛かればスケジュールも何とか間に合わせれるのか。


「さて、家が完成するまでに俺はやらないことがある」

「主様、やらなければいけないことですか?」

「うん。使用人を雇わないといけない」


 家が完成する前に雇った方がいろいろと動きやすい。あと、ラピスが家事周りなど全てのことを完璧にやれるため、雇った使用人を家が完成するまでに教育して欲しいのもある。


「という訳でラピスには教育をお願いしたいんだ」

「主様の頼みとあれば引き受けしますが、どういった方を雇うのですか?」

「王都で求人を出すことも考えたが、この世界の適性の賃金とかも分かってないんだよな。そこで、奴隷を雇おうかと思ってる」

「奴隷ですか・・・大丈夫でしょうか?」

「ラピスが懸念していることは分かってる」


 奴隷となれば何かしら問題がある人が多い。そういった人を雇って家の使用人をするということは、セキュリティ面での心配もあるのだ。

 奴隷紋があれば問題無いだろうが、一定距離離れられないという誓約のせいで俺が家を空けることが出来なくなる。奴隷紋無しで信頼できる人間を雇うって考えると奴隷は不都合ってことだ。


「正直、奴隷紋無しで使用人として働いてくれるとなるとなかなか探すのは厳しいと思う。けど、奴隷であったスカーレットを救えたように俺が救える人であるなら救いたいって思うんだ」


 俺は近くにいたスカーレットの頭を撫でる。スカーレットは満面の笑みを浮かべて俺の方を見る。その様子を見ていたラピスはため息をついて納得してくれた。


「分かりました。決めるのは主様なので妾からは、これ以上は何も言いません。ですが、妾も連れて行って貰います」

「私も行くわよ。グレンさんがどういった奴隷を選ぶのか気になるし」

「サクラ、どういうことだ?」

「・・・グレンさん、気付いてないのか分からないけど、グレンさんの従者は全員女性というハーレム状態! そこに更に奴隷の使用人が女性となれば、もう超ハーレム状態になってしまうんです!」


 何を熱弁してるんだ。あぁ、そうか。その手があったか。


「そうか。従者だ」

「主様、どういうことですか?」

「俺もすっかり気付いていなかったが、何も強い存在を従者にばかりする必要はない。使用人として雇う奴隷も従者契約をすればいいんだ。そうなれば俺に逆らうなんて考えない」

「確かに。従者であれば主様が主である限りは、その恩恵を受け続けられます。それもAランク冒険者で、豪邸を建てるほどの人。そんな人の従者となれば自身の地位も向上すると考えるかもしれませんね」

「そこまでは考えが及ばなかったが。正直、3人の従者の自由さを見るから、居心地がいいと感じてもらえると信じてるんだ」


 家が完成するのは2ヶ月後とのことなので、完成する1週間前に奴隷商へと俺たちは向かった。

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