「アフターストーリー更新中」完全無欠の生徒会長は僕の前でだけ可愛い

夜空 叶ト

第1話 完全無欠?な彼女

「やっぱり生徒会長はすごいよね~」


「ほんとそれ。高嶺の花って感じ?才能もあってなんでもできるとかうらやましいよね~」


「まさに天才ってやつだよね〜」


 学校を歩いていればふとそんな会話が聞こえてくる。

 確かに紫苑は可愛いし勉強もできている。

 だが、天才というわけじゃない。

 僕は天才って言葉がどうしようもなく嫌いだ。

 裏でどれだけ努力をしていても天才という言葉だけで片付けられる。

 だから、僕は天才という言葉がどうしようもなく嫌いなんだ。


「はぁ」


 でも、ここでどれだけ僕がイラついても紫苑はきっとまったく気にしないのだろう。

 それどころか笑って流しそうだ。

 考えるだけばかばかしいとも思うのだがどうしても割り切れない。


「海星?なんでそんなに辛気臭い顔をしているのですか?」


「ああ、紫苑。別になんでもないよ。それよりここ二年生の教室だけど何か用があったの?」


「そういうわけではないんですけど、ちょっと海星の顔を見たくなりまして」


「なっ!?」


「用件は済みましたので私はこれで行きますね。くれぐれも授業中に居眠りなんてしたらだめですよ!」


 彼女はそういうとそそくさとどこかに行ってしまった。


「あれは反則だろ」


 何度でも言うが彼女は可愛いのだ。

 そんな彼女がいきなり顔を寄せてきて耳元であんなことをささやくのは反則だ。


「今の見た!?」


「うん!見た見た。生徒会長があんな普通の男にあんなことするなんて、、、」


「ね!あの人ならもっといろんな人選べるだろうになんであんなザ普通みたいな人を選んだんだろうね?」


「さあ?完全無欠だけど男の趣味は悪いとか?」


「なにそれ~でもなんかありそう」


 聞こえてますよ~

 というか、言われたい放題だな僕。

 まあ、自分にはあんまり取り柄が無いのはわかってるんだけどさ。


「なんか嫌な気分になったな」


 あんなことを言われて凹まないほどの強靭なメンタルは持ち合わせてない。

 でも、知らない人間に何を言われようがダメージは少ないというのもまた事実。

 これがもし紫苑にあんなことを言われていたら一週間は寝込む自信がある。

 いや、マジで。


 ◇


「待ちましたか?」


「全然待ってないよ。じゃあ、帰ろっか」


「はい!」


 僕たちはそういって昇降口を後にする。

 自然と指を絡ませて手をつなぐ。

 ここ一ヶ月でこの高校に通う生徒が見慣れた光景だろう。


「紫苑さっきのは反則だぞ。」


「さっきのことですか?ああ、休み時間の。」


「今、わかっててとぼけただろ」


「まあ、はい。海星が可愛かったので。」


 紫苑にはかなわないな。


「ああいう不意打ちはやめてくれ。心臓に悪いから」


「いやだったのですか?」


「その聞き方はずるくないか!?」


「そんなことないです。女の特権ですよ。」


 そんないつものくだらない会話を繰り広げているとすぐに家についてしまった。


「「ただいま」」


 二人そろってそう声を出して家の中に入る。


「あ~疲れた~」


 家に入ったとたんに紫苑はソファーに体を投げ出していた。


「せめて着替えてから寝転がりなよ。制服にしわがついちゃうよ」


「だって疲れたんだもん。ちょっとくらい制服にしわがついてもいいじゃん」


「せっかく隙を見せないように学校で気を張ってるのにそんなところで隙を見せてどうするのさ。」


「う~それは確かに。わかった着替えてくる」


 紫苑はそういって自分の部屋に行った。

 僕も着替えないと。


「一ヶ月経ったけどこの家の広さにはまだ慣れないな」


 紫苑の家で同棲を始めて早一ヶ月。

 いろんなことに慣れてきたけどこれだけは未だになれない。

 二階建ての一軒家。

 こういうと普通のように感じるかもしれないけど、その大きさが豪邸くらいあるのだ。

 僕はその家の客室だった一室を自分の部屋にさせてもらってる。

 一体紫苑のご両親は何者なんだ。

 まだ、顔も見たことが無いけど近いうちに面と向かって挨拶がしたい。


「ふぁ~」


 僕が着替えてリビングに戻ると紫苑がソファーの上で溶けていた。

 学校での姿がまるで嘘みたいだ。


「そんなに疲れるほど今日何かあったの?」


「特別何かあったわけじゃないけどなんかね。こうやってソファーで寝転がるの気持ちいし」


「そっか。晩御飯作るまで寝てていいよ。できたら起こすから」


「そうさせてもらおうかな。本当いつもありがとうね」


「気にしなくてもいいよ。僕は紫苑といるだけで幸せだから」


「ありがと、う」


 紫苑はそういって寝てしまった。

 相当に疲れていたのだと思う。

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