桶狭間敗北から始まる明智光秀の陰謀〜第一章:東海大戦〜

@kandoukei

序幕1:敵は桶狭間に在り

 雑木林の中を駆け抜け、雨露さえも気にしせず、直進した武将たちがいた。

 先頭は赤髪と金色の瞳を持ち、織田瓜をあしらった兜の下で不敵な笑みを浮かべ、赤と黒の具足を纏う男、『織田信長』、その傍らには金髪と黒い瞳を持ち、古めかしい兜を被り、足軽の具足を着た『木下藤吉郎』、黒髪と黒い瞳を持ち、二枚の板状の鍬形が並んだ兜と黒塗りの重装を纏った巨漢『柴田勝家』が横に並び、後ろには『前田利家』や『森可成』と言った名だたる実力を持つ者たちが並んだ。

 すると、集団は徐に止まり、丘の麓を見る。

 そこには丸の内に二つ引両の旗印、今川の家紋を掲げし、兵たちが陣を取っていたが、中央に居るであろう大将の陣地だけは護衛の兵は散開していた。

 信長はこの様を見て、ニヤリと口元を引き攣らせ、藤吉郎も釣られて、笑う。

の言う通り、兵数の多さが災いして、兵個人の疲弊や油断が呼んでやがる。今、この時ならあの公家被れを倒せるぜ。」

 その言葉を聞いた勝家は眉間に皺を寄せ、藤吉郎を睨んだ。

「禿げ鼠、信長様と呼べ。軽率な発言を慎めと言ってるだろう。」

「おお、相変わらず怖いなぁ、柴田のとっつぁんは。この状況でも規律に厳しいとは。」

「そう言う貴様はとんだ傾奇者だ。貴様には力や才を信長様に認められたとは言え、足軽にして側使いでしかない貴様が信長様の右腕を名乗るなど片腹痛い。」

 言い合いが始まりそうになった時、二人は信長の殺気に気付いた。

 さっきまでの余裕の表情を捨て、怒りを見せた信長に勝家と藤吉郎は傅くしかなかった。

「権六よ、些末な規律を正すのは良いが、今は苦戦覚悟で挑む大戦だ。さらに空気を重くするな。」

「はっ!」

「猿よ、奴を、今川義元を、公家被れだと油断するな。先の内乱から立て直し、優れた政治力で駿河・遠江・三河をまとめ上げ、甲斐の武田や関東のとも同盟を組んだ手腕は難敵だ。」

「いやいや、太原雪斎に丸投げした奴ですよ、そんな優れた奴じゃ。」

「それをさせたのは他ならぬ今川義元の魅力だ。俺の忠言に異を唱える暇があるなら、目の前の敵に対して些末なことで負けるな。」

「すっ、すんません!」

 信長は二人の忠臣を諌めてから、再び麓の敵陣に目掛けて、睨む。

 その背にはように見えた。

「行くぞ! ここぞ、我等が正念場だ! 今この時を乗り越え、我等が尾張に勝利という手土産を得て、凱旋するぞ!」

 その掛け声と共に武将たちは雄叫びを上げ、敵陣に向かって、再び駆け出した。


 

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