・飛竜ファフナと第二次イチャラブデート - 最強バフ付与完了 -

 時間が空いたので今日の日記を書いた。

 今日は楽しいことがたくさんあった。

 それを記録に残すだけで、なんだか胸が温かくなった。


「ぬぁ…………?」

「あ、起きたんだ。突然気を失っちゃうから驚いたよ」


「ぬっ、ぬおおぉぉーっっ?!!」

「ごめん、そのままにしておくのも紳士ではないような気がして……」


 目隠しをしたままクリームを丁寧に掃除してから、気絶していたファフナさんにタオルケットをかけておいた。


「責任……責任取れ……」

「責任? 責任って何?」


「ぬぁーっっ?! こっち向くなバカ者ぉーっっ!!」

「ごめん、もう着替えているのかと。それよりどんな効果が発動したか、確かめたいんだけど」


「すまぬ、それは後日ミルディンの口から聞け」

「……ん、わかったよ。本当に今日はごめんね」


「よい……別に、悪い気分ではなかった……」


 ゴソゴソとベッドの方で絹擦れが聞こえた。

 着衣が終わったのかファフナさんが立つと、また窓辺に寄ったようだった。


「振り返ってもいい?」

「うむ、よいぞー」


 振り返るといつもの調子のファフナさんに戻っていた。

 それと窓を開けたようだ。


「ミルディンさんのところに行くの?」

「否、これより我は邪悪を滅しに行く」


「ええっ、コギ仙人は悪くないよ?」

「ク、クク……クククク……我の見解は否だ。殺してやる……殺してやるぞ、ガルガンチュア……」


「ちょ、待って、落ち着いて!」

「今日こそぶっ殺すっっ、あのクソ犬がぁぁぁっっ!!!」


 どうしてこの部屋を訪れる人たちは、正規の出入り口を使ってくれないのだろう。

 ファフナさんは窓から屋根に乗ると、翼を羽ばたかせて天空に飛翔した。


「ガルガンチュアのクズはどこだァァァーッッ!!!」


 流星のようにファフナさんが消えた。

 もはやどうしようもない。

 俺は机に戻り、今日の日記を再開した。

 しばらくしてドアが鳴った。


「大将」

「お帰り、シルバ。ファフナさんなら帰ったよ、気を使わせてごめんね」


 やっぱりシルバだった。

 机に飛び乗ったシルバと一緒に日記をまた再開した。


「見直したぞ、大将」

「ん……? うん、やるべきことはやったよ」


「で、どうだった?」


 そう質問されて少し考えた。

 言葉にも文章にもしかねる、独特の興奮があった。


「最高だった……」

「ウォォォォーーンッッ!! もっと詳しく聞きたい、散歩に行こう、大将!!」


「もちろんいいよ、行こう」


 今夜のことを俺は一生忘れないだろう。

 ファフナさんが怒る気持ちもわかるけど、俺からすれば最高のひとときだった。

 今日は知らないことをたくさん知れた。


「包帯で目隠しか」

「ダメ?」


「まさか。ファフナの姉御の逆鱗が恐ろしかったが、やはりのぞいておくべきだったと、後悔しているところだ……」

「のぞきはだめだよ」


 シルバとの散歩が終わると、日記の残りを終わらせてからベッドに入った。

 ファフナさんの残り香のせいで、なかなか眠れなかった。


 紳士ぶって目隠しなんてしなければよかった。

 もっと色々、よくわかんないけど、大胆なことをすればよかった。


 責任、取れば、させてもらえたりするのかな……。

 責任の取り方も勉強しないと……。


 荒々しい命令口調で人を従わせるのって、ちょっとだけ快感だった。

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