・飛竜ファフナと第二次イチャラブデート - 軽蔑して止まない変態極まる最低最悪の許されざる方法 -

「先に俺の部屋に行ってて」

「わ、わかった……そなたを待つ……」


 ファフナさんの聞き分けがよくて助かった。

 店のお兄さんに聞くと、ママは厨房にいるというので中に入った。


 銀色のボウルの中に絞り器に入ったクリームが3本も用意され、ママが残った物をつまみ食いをしながら待ってくれていた。


「無理を言ってごめんね、ママ」

「ああ、それはこっちのセリフさ」


「え、それ、どういうこと?」

「ガルガンチュアさ……。アイツはねぇ……あの姿だと、本当にどうしようもないのさ……」


「あの姿……?」


 そのままの意味か、比喩表現か、ちょっとわからなかった。


「あのバカ犬には別の顔があるのさ」

「んん……? 本当は、コーギーじゃないってことですか……?」


「あっはっはっ、惜しいけどハズレだよ。さ、彼女のところに行きな。あんまりファフナを泣かせるんじゃないよ」

「大丈夫だよ、俺はただ、教わった通りにするだけだから」


 俺はコギ仙人を信じる。

 オーリオーンの闇計画を確実に成功させるには、そんじゃそこらのぬるいエッチじゃダメなんだ。


「そうかい、ならアタイは後で尻を蹴飛ばしておくよ」

「それ、虐待……」


「早く行きなっ、ほらっ!」


 ママがボウルを叩くので、俺はそれを持って自分の部屋の前に戻った。


「おおっ、遅いぞ、パルヴァス……ッ。なかなかこないから、不安になったではないか……」


 ノックしたら中から足音がした。

 普段剛胆なファフナさんが中からかんぬきをかけていた。


「ごめん、ちょっと打ち合わせがあって」

「よい、我も覚悟を決めた……。我はザナームの仲間のためなら、どんなことも受け止めて、見せ――――ぇ…………?」


 扉が開かれた。

 ファフナさんの目がボウルの中の絞り器に落ちて、そのまま目玉ごと体が動かなくなった。


 間をおいて、恐る恐るといった様子で、その視線が俺を見下ろした。

 上からなのに卑屈そうな目だった。


「パルヴァス……それは……なんだ……? 猛烈かつ痛烈に、嫌な予感が、するのだが……」

「これ? 生クリームだけど?」


「なぜ……それが、ここにある……?」

「これをファフナさんの胸に盛り付けるためだよ」


 ファフナさんは呆然とした。

 急に言葉がわからなくなってしまったかのように、ただただぼんやりと俺を見ていた。

 目の焦点が合ってなさそうだった。


「そしてその胸を吸うんだ。ファフナさんの生還と、ザナーム騎士団の勝利のために」


 俺に迷いはない。

 相手が本気だと悟ると、ファフナさんの顔が青ざめていった。


「ファフナさんには本当に申し訳ないけど、俺はこのエッチを完遂する。誰かが戦死して心を痛めるくらいなら、どんな恥ずかしいことだってやってのけてみせるよ」


 気持ちを彼女の叩き付けた。

 するとファフナさんの口元がヒクついた。


「ク、クク、クククク……そうか、これもまた、ガルガンチュアの甘言だな……?」

「うん、コギ仙人に教わった」


「そうか……今、我は理解したぞ……」

「本当?」


「ああ……あの下着ドロを生かしておいたのは、我の大いなる失策であった……。殺してやる……殺してやるぞ、ガルガンチュア……ッッ」

「いい人なのに……」


「下着ドロに善人などいないっっ!!」


 俺は唇に手を当てて少し考えた。

 この際コギ仙人はどうでもいい。

 教わった通りの行為を、どうやってファフナさんに実行するかが問題だ。


「ファフナさん、裸になってあそこに横たわって」

「するわけなかろうバカ者めぇぇっっ!!」


「ダメ?」

「無理だっ、そんなことしたら心臓が止まって死んでしまうわっ!!」


「でも世界を救うにはこれが必要なんだ」

「グァッ、ガルガンチュアアアアアアア!!!!」


 この調子ではお願いを聞いてもらえそうになさそうだ。

 このままでは宿から飛び出し、コギ仙人の殺戮に走りかねなかった。


 ファフナさんの強化はできませんでした。

 そんな報告をミルディンさんにするわけにはいかない。

 ファフナさんの身を最も案じているのは、他でもないミルディンさんだ。


「仕方ない……できれば、使いたくなかったのだけど……」


 俺はベッドサイドのチェストに寄って、引き出しから白銀の輝く鱗を取り出した。

 これで嫌われようとも致し方ない。


 ファフナさんの生還のためなら、俺は鬼畜の卑怯者にだってなれる。

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