・パンタグリュエルの肩の上 - オーリオーンの闇 -

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 オーリオーンの闇計画

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【標的】

 敵偵察拠点・暗闇の渦

  渦中心部・欲望の瞳


【陽動地点】

 アルバレア自由主義連邦国


【アルバレア国についての概要】

 大陸第二のマナ鉱石埋蔵地

 欲深き円環の存在、契約を国民が知る数少ない国家でもある


 包囲による長期の孤立は40年以上に及ぶ

 かつては王制だったが、円環との契約の発覚により革命が勃発、王族は根絶やしにされた


【現地調査員からの報告】

 政情やや不安定

 革命から生まれたため権力争いが絶えない

 反乱が発生した場合、現政府との約束を新政府に反故にされる可能性あり

 ――偵察員N


【空からの偵察報告】

 エーテル体の集結が始まっておる

 円環は他の戦線を捨ててでもここを陥落させるつもりだ


 我の特攻でこうなったと思うとまこと気分がよい

 もはや大侵攻は避けられぬ様相であろう

 血脇肉踊る。戦が楽しみだ

 ――ファフナ


【以上を踏まえての分析結果】

 アルバレア自由主義連邦国は格好の餌となる

 そこにザナームのサブリーダーであるミルディンがおもむけば、意図したタイミングで襲撃を行わせることが可能


【陽動作戦】

 ザナーム騎士団全軍はアルバレア防衛戦に加わる

 円環の注意を最大まで引き付ける


 総大将はカチューシャ将軍

 人間を総大将とすることで、両軍の協調を円滑にする

 至急、カチューシャ将軍の強化が必要


【欲望の瞳】

 パンタグリュエルの予言によると、もう一つの世界のザナームは戦いの果てに、欲望の瞳と呼ばれる目玉があることを発見した

 これは世界各地を見渡す監視装置

 欲深き円環の眼球そのもの

 天空を浮かぶ暗闇の渦内部に隠されている


 この装置のためにザナームは本拠オルヴァールを破壊され、多くの死傷者を出した


 欲望の瞳は、レイウーブ・マナ鉱山に続く最優先破壊対象


【破壊作戦】


 闇の渦は人の正気を奪う狂気のガス、全身を侵す強酸の霧に包まれている

 よってファフナ以外の兵では到達すら不可能

 パルヴァスのディバインシールなくして、無事な状態での突破も不能


 内部は強力なエーテル体と、複数の円環の騎士が守備する

 陽動をもってこれをアルバレア戦線に引きずり出し、ファフナの突撃をもって欲望の瞳を破壊する


【私的な追記】


 パルヴァスの加護とファフナの生還

 この二つがなければこの作戦は立案できなかった

 ファフナを犠牲にしようとした私は間違っていた


 ――ミルディン



 ・



「つまりその目ん玉を放置すれば、遅かれ遠かれここが破壊されるってことっすね」


 ミルディンさんの作戦は相変わらず強引でムチャクチャだった。

 優位に立ったつもりでいたけど相手は強大で、今少しの無茶をしないと後手後手になって詰むということだった。


「おい、ミルディン……」

「はい、なんでしょう、最強の将ファフナ」


「狂気のガスに強酸の霧じゃと……?」

「はい」


「げ、外道かそなたはーっっ?!! 我にそんなばっちぃ地獄に突撃しろともうすかーっ!?」

「はい。ですが今度は死んでこいとは言いません」


 ミルディンさんは俺の背後に回り込んで、俺のことを盾と証拠にした。

 ディバインシールドがあるから大丈夫だと。


「なんでそなたの立てる作戦は毎回こうなのだ……」

「パンタグリュエルにも言われました」


「当たり前だっ!」

「ですが条件が揃ってしまったのですから、しょうがないではないですか……」


 だけど大丈夫かな……。

 進入に成功したとしても、ファフナさん一人で敵の中枢を破壊することができるのだろうか。


「なぜ我は過酷な作戦ばかり命じられるのだ……」

「最強だからっすね。最強の宿命ってやつっすよ」


「お、おお……そなた、なかなかわかっておるではないか……。うむ、我は最強ゆえな、頼られてしまう宿命にあるのだ」

「わかるっす、強いって損っすよねー」


「そうなのだ! わかってくれるか、露出狂!」

「それ、ファフナ殿には言われなくないっす」


 ファフナさんはまんまと乗せられて段々乗り気になっていった。


「問題ありません、こちらには至宝あります」


 至宝ってなんだろうと思ったら俺だった。

 ミルディンさんはグイグイと俺を突き出した。


「パルヴァス、貴方は陽動作戦の開始までに、カチューシャをファフナに次ぐ超人にして下さい」

「超人って軽く言わないでよっ!?」

「お世話になるっす! がんばるっすから、超人にして下さーいっす!」


 責任重大なのはファフナさんだけではなかった。


「そこの頭の軽い竜族はカチューシャの次です。確実に破壊工作を遂行できるような、強力な加護を要請します」

「頭が軽くて悪かったなぁっ!」


 そこ、認めちゃうんだ……。


「防御力面はもはや十二分ですので、攻撃力アップの強化を施して下さい」

「が、がんばります……」


 チラリとファフナさんを盗み見た。

 ファフナさんもこっちを見ていて、慌てて視線を外し合うことになった。


 ディバインシールド以上の加護が必要となると、もっと過激なことをする必要があるのかもしれない……。


「期待してるっすよー! どーんとお姉さんの胸に飛び込んでくるっす!」

「ありがとう……」


 マント一丁の半裸のお姉さんに言われると、嬉しいような、ちょっと嫌なような、複雑な気分になった。


「奇跡なくして穿てぬ邪眼、全てを見渡す円環の瞳に、私たちで闇をもたらしましょう。新たなエッチで、オーリオーンの闇計画を実現させるのです」


 とにかく今、新たなエッチが求められているということだった。

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