神スキル『イチャつくだけで最強バフ』 - 春の貞操観念逆転種族を添えて -

ふつうのにーちゃん

プロローグ キスするだけでレベル上限解放? 素晴らしい! 国中の武人をここに招こう!

・肉食系ドラゴン娘に追われる生活

 我が名はファフナ。竜族の尖兵にして、新たなる竜族の始祖となる女である。

 500年前、愚かなる人間どもは【欲深き円環トーラス】との契約を結んだ。


 444年間の繁栄と引き替えに、444年後の人類を贄として差し出した。

 我の始祖たる竜族は【円環】に呪いをかけられ、この地上を去る他になかった。


 我は人間が嫌いだ。

 大嫌いだ! と言い直してもよい。


 だがしかしっ!


「クックックッ、我がつがい殿よ、どこへ行かれる?」

「う……っ?!」


 この男は例外だ……。


「天を見上げよ。今日は絶好の繁殖日和。このハレの日に、どこへ行かれるかっ?」

「ど、どこも何もないっ、安全なところにだよっ!」


 たとえ人間であろうとも、このパルヴァス青年は特別である。


「しかしなぁ、パルヴァス、先に誘ってきたのは、そちらの方であろう……?」

「さ、さささ、誘ってなんかないっ!」


 さらさらのブロンドのおかっぱ頭に、我より頭1つ半も低い背丈、まるで少年のような毒のないベビーフェイス……。


 いや実際、魔術師どもは怪しい術でパルヴァスを眠らせて老化を遅らせていたようだ。

 なんとこれで御歳おんとし27の合法ショタ殿である。


「わかっておる。我と接吻したくて、あんな露骨な嘘を口にしたのであろう……?」

「ち、違うって……っっ!!」


 まったく愛おしいやつよ。

 母も小さき雄が好みとよく口にしていた。

 お前も賢く守りがいのある雄をつがいにせよ、と。


「俺はただ、成長の壁を感じてるファフナさんのことを、思って……」

「ハッ、もはやどうでもよい」


「え……っ?」

「そなたは、辛抱、たまらぬ……」


「え、ええええーっ?!」


 我は雄を誘惑するためにたわわな乳を揺らした。

 脚を伸ばして雄の視線を誘った。

 パルヴァスは青い顔をして生つばを飲み込んだ。


 我はハイパワーセクシーな竜族であるからな!


「そなたをメチャクチャにしたい! メチャクチャにさせろ愚かな人間の雄めっ!! 先に誘ったのは、そちらであろうっっ!!」


 我は新しき竜族……。

 憎き【円環】にかけられた呪いから逃れんがために、邪法を重ねて生み出された罪にまみれた生ける矛。


 母あれど我に同族なし。

 父あれど我に姉妹なし。

 我という種はこの世に我ただ一人!


 なればこそ!


「なんか、自分の世界に浸ってる……? い、今のうち……っ」


 なればこそ囁くのだ……!

 我に刻まれた竜族のデーエヌエーが……産めよ増やせよと囁き謳う!!


「くわっ!!」

「ひぇ……っ?!」


 逃げ出したパルヴァスの前に、我は翼を羽ばたかせて回り込んだ。


 遅い、遅過ぎる!

 だがその鈍足さが愛おしい!

 なんと庇護欲を誘う雄であるか!


「パルヴァスッ!! 我と共に新たなる竜族の始祖となれいっっ!!」

「ごめん無理!! だってよくわかんないし話が壮大過ぎて誘惑に聞こえないっ!!」


 この青年はパルヴァス・レイクナス王子。

 共に暮らす者に強運をもたらす希有なる神性を有している。


 否、それだけではない。

 パルヴァスは肉体の成長をもたらす琥珀を吐く。


 加えて先ほどの供述が真実であるならば。

 接吻1回につき、1レベル分の成長限界解放の力まで、有していることになる。


 素晴らしい……。

 素晴らしいぞ、我がつがい殿……!


「ふぅっ、ふぅっ、ふぅぅぅ……っっ!」

「な、なんで突然興奮し始めるの?!」


 まさに奇跡。

 まさに超越者。

 世界の摂理から外れた力を持つ、究極理想の雄。


 チュッチュするだけで成長の壁を越えられると知ってっ、武人として喰わずにいられるものかっ!!


「ふんっ、これが誘い受けか。ならば強引に奪うのみよ……」

「誘ってないっ、誘ってないって何度も言ってるじゃないかっ!」


 すまぬな、パルヴァス……。

 清く正しくプラトニックな交際から我も始めたかったのだが……。


「その貞操……。このファフナが貰い受けるっっ!!」


 デーエヌエーが!!

 竜族のデーエヌエーが!!

 この麗しきブロンドショタこそが種族の始祖にふさわしいと叫ぶのだ!!


 【円環】と契約した愚かなる人間の末なれど!!

 デーエヌエーが我を突き動かすのだ!!


「か、勘弁して……? ほら、深呼吸して、落ち着いて……?」

「無理だっ! 今日という今日こそ、そなたをっ、犯ーすっっ!!」


「ひっ、ひぃぃーーっっ?!!」

「デーエヌエーッ! デーエヌエー、置いてけっっ!! デー・エヌ・エーッッ!!」


 我はパルヴァスを追う。

 パルヴァスはブロンドと細い肩を揺らして我から逃げる。


 すると狩猟本能が促進され、ますます我が興奮する!

 今日という今日は喰らってくれようぞ!!


「パルヴァスッッ、好きだああああーーっっ、つがいになってくれぇぇーっっ!!」

「それは愛じゃないっ、ただの本能だってばぁぁーっっ?!!」


「否っ、本能もまた愛なりっ!!」


 我の愛の叫びに恐れをなして、パルヴァスはまた逃げた。

 うむ、それもまたよし。いくらでも追いかけっこを楽しむとしよう。


 しかし最後は、我が、喰らう。


 奇跡の力を持って生まれたがために搾取されるしかなかった王子様を、この我が子沢山家族をもって幸せにしてやるのだ!!


「心配はいらぬっ、雄のそなたにも卵を抱かせてやるっ!」

「ええっ、その姿でまさかの卵生っ!?」


「おおっ、興味が涌いたかっ!?」

「いやあの……っ、その……っ、ごめんなさいっ!!」


 我は求めん!

 パルヴァス・レイクナスの有精卵を!


 赤い顔で息を切らして逃げるパルヴァスを、我は翼を羽ばたかせてどこまでも追いすがった。


 すまぬ。本当にすまぬと思っている。

 だが奇跡の力とはそういったもの。


 さながら女神コルヌコピアのごとく幸運と才覚をもたらすそなたの力は、この先も多くの者を魅了することだろう。


 誰だって幸運が欲しい。

 誰だって才能の壁を越えたい。


 それが麗しき王子様とキャッキャウフフすれば手に入ると知れば、程度の差はあろうとも、誰しもがこうなろう!


「開き直れっ、パルヴァス・レイクナス!! そなたは雌とイチャイチャするために生まれたのだ!!」

「受け入れられないよっ、そんな運命っ!!」


 邪法により造られし我だからこそわかる。

 特別な力を持って生まれた者は、一生その力から逃れられぬのだ。


 パルヴァスよ、そなたが幸せになる道はただ一つ!



「スケベ男になれいっっ!!」


 

 スケベだ!!

 スケベが必ずやそなたを救う!!

 我が最強を受け入れたように、そなたもまたスケベを受け入れるのだっ!!

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