子供たちの悪夢と大いなる救済 アイの福音
みゃくじゃ@アイの福音
一章 始まりとマルクトの日常
第0話 プロローグ
「目標地点まで666m。各自射出まで、カウント6。殲滅開始」
『ラジャー』
カウントともに上空から、二人の軍服少女が射出される。二人はパラシュートもなしに着地。大地からは灰が吹き荒れ、衝突音が鳴り響く。
二人を包むは灰の地獄。その名の通り灰の荒野が辺りを席巻し、墓標のようにモノリスが散らばっている。
灰煙からは二本の直線が引かれる。それが向かう先は、超巨大な敵性個体であるルインダーだ。
「スケール4は私が担当。雑魚処理をお願い」
『ラジャー』
空へと届かんとする怪物を前に、少女は凛々しくも迎え撃つ。もう片方の少女は車両程度の犬へと形状を変化させて、比較的小さなルインダーどもに向かった。それでさえ、一軒家の大きさを優に凌ぐ。
仰ぎ見るほど大きな怪物に向かって少女は走る。ルインダーを捉える眼は煮えたぎるような赤だ。
距離は未だ1kmはあるが、戦闘が始まる。ルインダーは自らの肉体を高速で伸長させ、肉の濁流が如き攻撃を行った。
少女は高温の熱波によって、その全てを焼却。さらには風を吹かせ、走る速度を上げる。
怪物は絶え間なく肉塊を降らせる。それは津波のような質量攻撃となって少女を襲う。
少女は全てを焼却できないと見るや飛翔。風を巧みに操り、そのまま空中にて距離を詰める。
怪物も少女方向へ向かう。それは津波だったものも含まれる。近づく両者。
完全に肉塊で包まれたと思われた少女から、おどろおどろしく煌めく眼の輝きが放たれる。
瞬間、温度上昇によって少女周辺の空気はプラズマ化。擬似太陽が具現化し、巨大なるインダーを燃やし尽くす。
一片を残し、怪物は消滅した。
「!リウム逃げて」
雑魚処理を完了した少女の方にその一片が降り注ぐ。
『どうしたの? s』
熱された巨大な肉塊は犬の少女に音速を超えた速度で衝突した。
『警告ホムンクルス損傷甚大。魂の鍵を死守します』
完全に血飛沫となった少女のそばに残った黒色のチョーカーから警告音が鳴らされる。そのチョーカーには鍵がぶら下げられている。
血飛沫はチョーカーに集まり、銀色へと色を変えていく。体積を膨張させて頭身台の銀色の直方体――モノリスへと姿を変えた。
「ごめんリウム。流石に立て替えておくわね。権限執行:魂の鍵の抜去」
少女が命令するとモノリスは圧縮を開始する。中心にある魂の鍵は析出していく。最後には七重螺旋の棒状の状態――魂の鍵とチョーカーだったストラップのみが残り、少女に回収される。
「スイ少佐から、管理AIサンダルフォンへ。スケール4の個体の撃破の完了・一名の魂の鍵を抜去中」
灰の霧が晴れ、少女の姿も晴天の元へ晒される。その容貌は齢13の少女だった――。
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