子供たちの悪夢と大いなる救済 アイの福音
みゃくじゃ@アイの福音
一章 始まりとマルクトの日常
第1話 黄昏荒灰王国=マルクト
ここは、黄昏荒灰王国=マルクト。黄昏の刻しか許されていない天空都市である。天空流転都市=セフィロトの天空都市群の一つだ。
天空都市群はアニマニウムという万能物質のおかげで発展し、流転暦4億年までは理想郷を築き上げた、確かな遥か未来である。
しかしながらフォースカタストロフィーという未曾有の大災害によって、マルクトは繁栄を地に堕とされた。
七歳以上の人類の大半の駆逐。大地の六割の地獄化。怪物の侵攻の開始。
これらがほぼ同時に起こった。
まず、この未来では七歳以上の死は限りなく回避される。
それを可能にしている科学技術が「魂の鍵システム」である。特殊なアニマニウムによって魂を鍵状に格納して、仮の肉体と呼ばれるホムンクルスに挿入する。これによって元々の肉体を再現できるようになった。故に肉体の死という概念自体が無くなった。
また、ホムンクルスが活動不可になった場合は、残存する肉体から銀色の直方体であるモノリスへと形を変えて、魂の鍵を死守する。
故にこそ、大災害時には七歳未満の子供をアニマニウムのシェルターに避難させた。そして大災害はアニマニウムほどの硬度が無いもの全てを蹂躙した。
残ったものは、都市だった瓦礫 と19億人の魂の鍵が格納されたモノリス。そして、約1億人の子供と13人の軍部の大人であった。
同時にマルクトは地獄化した。空想上の存在が現実に侵蝕して、表象化してしまった。
その中でも第一圏リンボは灰が積もり、荒れ果てた。
ここで、黄昏の光しか届かないマルクトの特性と、子供たちの王国という現状から、マルクトは黄昏荒灰王国とも呼ばれるようになる。
次に、地獄の穴からはルインダーと呼ばれる黒い巨大な怪物が大量に這い出てくるようになった。ルインダーは再生能力があり、自身の肉を自由に変形できる。
ルインダーの対抗策はアニマニウムの銃弾で再生不可能にまで質量を削ること。しかしながらこれはお勧めしない。人も時間も金がかかった上で、意味がなかった。
故にマルクトの人々は見出すしかなかった。奇蹟のような力を。そして手に入れたのだ。
それはリアニマと言う。強い感情によってその人物の魂の形を表象化させる現象である。
リアニマを起こした人は副作用として、圧倒的な熱量変換の権利が与えられる。それはルインダーどもにも有効な火力となるのだ。もう一つの副作用として、普通は黒色の眼の虹彩の色が眩い色に変化する。
リアニマは、現在までも残った子供でしか再現できていない。そのためにモノリスの解凍は遅延され続けている。
ここまで追い詰められていても、マルクトは復興していった。ここでもアニマニウムは役に立った。
アニマニウムは本当に万能物質である。例えば、チョーカーという首に巻きつける黒い物質として使用されている。これは、携帯電子機器と呼べる能力を有する。現在の携帯電話の操作パネルが視界内に存在し、意識でカーソルを動かして、その機能を堪能できる。
この一つに、公序良俗に反するものを認識する前に、神経系に作用して阻害できる。これを「視覚情報のプロテクト」という。
他にも城壁や住居もアニマニウムで作られているため、ルインダーの侵攻にもある程度の優位性を保っている。
だがどうあれ、マルクトはルインダーの対処に精一杯である。チョーカーとホムンクルスによって生命活動は維持可能であるため、モノリス化した人類の存在意義が殆ど無かった。少なくとも管理AI:サンダルフォンはそう結論づけた。
有名な大人はフィリポーン元帥。マルクト二大大黒柱の一人であり、超記憶症候群と類稀なカリスマによってほぼ全ての子供の精神を守る天才。軍最高の心理カウンセラーに加えて、当然の如く戦術も高水準に保有している。
そしてもう一人の大黒柱は、マルクトの事情を顕在化させている年齢の少年、ロー少佐である。齢13歳にして与えられた勲章は無数であり、戦闘力のみでもマルクト最強を欲しいがままにしている。いくら14歳で成人となるにしても明らかに多過ぎるといえよう。何より彼の獣の第六感はルインダーの動きをほぼ正確に言い当てられる。AIで観測できない未来の事象も当ててしまう。それ故の勲章の量とも言える。
どうしようもないこの天空都市で、子供たちは自らの生を叫ばなければいけない。
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