君と僕の29日

@xnfp_si2

うそつき

「山本くん、久しぶり!!」

高二の夏、君と二度目の出会い

四年前に別れた君との二回目の人生の始まりだった


彼女の名前は、山田ヒナ

僕の人生を大きく変えてくれた人

どうしてそんな子が話しかけてきたのかって?

それは僕にもわからない。


「急に何。」

冷たく返す僕に山田は笑顔で言ったんだ

「なんもないよ!笑」って。

なんだこいつ。正直そう思った。


山田とは腐れ縁だった

偶然に偶然が重なって全てが同じだった

苗字が似ているからと出席番号は前後。

ペアを組む時も大体同じ。

移動教室は同じ班か隣の席。

中学はこんな感じ

まぁ、卒業して高校にあがっても隣のクラスにいるんだけどな、笑


高校にあがってからは関わりがなかった

それなのに急に話しかけてきて、何考えてるんだ


今の僕には山田に優しくする余裕がなかった

人生が辛いと思っていた。

友人や親からの期待でプレッシャーが凄かった

キャプテンをしている以上期待には応えなければいけない。僕はそう思っていた。


翌日、山田は僕を海に連れて行ってくれた

「私最近しんどいんだよね笑」

「海行って叫ぶの付き合ってよ!!笑」

君は笑ってそう言った。

僕を気遣っていることくらいすぐにわかった


電車に揺られながら海へ向かう


綺麗な夕日が浮かぶ海に着いた

山田は満面の笑みだった

「めっちゃ景色綺麗~!!笑」


そうやってはしゃぐ山田に僕はどこか惹かれていた


「結構前に別れたんだよね、振られちゃった笑」

「今日は叫ぶぞ~!!笑」

山田はそう言った。また笑っていた。


僕は知っていた

山田は自分が辛くても他の人が辛い時に我慢するやつだってことを。

そして今我慢させていることも。


叫ぶとか言いながら悲しそうに海を眺めていた

「なんか叫びなよ、笑」

山田はそう言ってきた

叫ぶことがなかった僕はこう叫んだ


「ママ大好きー!!」


山田は驚いた顔をしてこっちを見てきた

そして腹を抑えて笑ったんだ

「なにそれ笑 最高なんだけど笑」


そこから沢山話を聞いた

恋人と別れたこと。

僕を忘れられなかったこと。


正直驚いた

僕は山田に未練があったから。


電車で来たはずの僕らは話しながら歩いて帰った

遠いはずなのに思っていたよりも近かった


「あっという間だったね笑」

「好きな人との時間ってあっという間らしいよ笑」

山田はそう言って笑う


なにも変わってないなぁ、笑

そう思いながら話を聞いた


「ねぇ見て月!!三日月!!」

その日は綺麗な三日月だった。

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