第5話

■ 2022年 6月23日(木)

お守りは確かに効果があるようで、攻撃的なやつらが来ることはめっきり減った。

こんなことだったらもっと早くにお守りの一つでも買っておけばよかったと、後悔するぐらいだ。


対称的に、なつさんはあまりお守りのことを気にしていないようだ。

積極的に近づこうとはしないものの、家電をいじるとき・外に出るときなど

必要があればそばを歩くこともあった。


それと旅行に行ってから、心なしかなつさんの距離感が近くなった気がする。

PCを操作して自分がなつさんの方から関心が薄れたときにデスクの横にくるなど、視界に入る位置に移動してくることが多くなった。

なつさんの方を見ると見返してくるように感じる。


寝る前にスマホを見ていたら横に寝ていた時はさすがにビビった。


悪い気はしないのだが、ひと声かけてくれたら驚かないのに、と思った。



■ 2022年 6月24日(金)

プロジェクトのメンバーで飲んだのだが、みしろさんがまともに立てないぐらい酔ってしまったせいで私の家に引き取ることになった。(いま私の横で寝ている。)


家に運んだ時、なつさんを驚かせてしまい軽く部屋が揺れたのは結構怖かった。

確かに同居人の男が急に知らない女性を連れ込んだら、まぁいい気はしないだろう。

みしろさんの体調がよくないことが分かるとすぐに落ち着いてくれたので、そこはとても助かった。


間が悪く攻撃的な奴が来たときもすぐに追い払ってくれたので、しっかり感謝しておいた。

それもいつもより結構強いやつで、扉を大きくバン!と叩かれたのは怖かった。



■ 2022年 6月25日(土)

みしろさんは目を覚ますと、申し訳なさそうにすぐに帰っていった。


その後、彼女からLINEがあって軽い相談を受けた。

どうやら大分旅行で悪いのに取り憑かれたらしく、旅行から帰ってから彼女の自宅でポルターガイストなどの怪現象が起こるようになったらしい。


易者の忠告もあったため、かなり不安になっているようだ。


それで昨日の攻撃的な奴が来たのにも合点がいった。悪い奴らはお守りの効果もあってか先週ほとんど現れていなかったのだが、彼女に憑いているのはそれなりに強いやつなのかもしれない。


なつさんに事情を話し、なんとかできないか聞いてみたところ、OKという返事をもらえた、気がした。なんとなく、うなずいたように見えた。


明日みしろさんをもう一度家に呼ぼうと思う。



■ 2022年 6月26日(日)

今日はみしろさんが家に来た。


彼女がチャイムを鳴らした直後、ドアを「バン!バン!」と叩く音が聞こえてきたのは本当に怖かった。

なんとか恐怖を乗り越えてドアノブに手をかけると、扉を叩く音は止み、うずくまるみしろさんをみつけることができた。

怖くてみしろさんに抱き着いてしまったのは、男として情けなかった。反省。


それからしばらく私の部屋で怪異現象が起こらないか確認して、みしろさんを帰したのだが、今度はなつさんがいないことに気づいた。

扉の音や悪い霊のこともあり、心配でならない。



■ 2022年 6月30(木)

なつさんが帰ってこない。



■ 2022年 7月2日(土)

最初に出会った駅のホームを探すも、見つからなかった。

深夜にもう一度入ったら駅員?のおじさんに怒られてしまった。



■ 2022年 7月10日(日)

一週間、仕事を休んでなつさんを探した。

一向に見つからない。

みしろさんにも相談したけど、特に異変などは起こらなくなったようで、心当たりはないようだ。



■ 2022年 7月21日(木)

あれから、みしろさんと一緒に過ごす時間が多くなっていった。

日記を書くことも忘れていた。

最初はなつさんを探す手伝いという名目で彼女と会っていたが、今やただの会う口実になっている。


今度ちゃんと告白しようと思う。



■ 2022年 9月5日(月)

2人で住むため、今の部屋から引っ越しすることになった。

新築の一軒家で、ローンは二人で折半した。

引っ越しの書類の同居人の欄に「御代」という名前を書くときは、流石に手が震えた。

奇麗に書けていただろうか?


それと、これで日記をつけるのも最後にしようと思う。

あれからなつさんは気配もないし、他の霊の気配も感じなくなった。


なつさんは成仏できたのだろうか。願わくば、天国に行ってほしいと思う。

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