第2話

■ 2022年 5月17日(火)

人生で初めて(もしかすると子供の頃にあったのかもしれないが)、孤独感を感じずに眠ることができた。

仕事にも集中できて、久しぶりに定時に帰ることができた。


帰ったら変わらずなつさんは居て、もっと安心を感じた。

こんなに清々しい1日は初めてだった。


それと、「なつ」さんの漢字についてもふと頭をよぎったが、漢字では書かないことにした。

名前の意味というものは、その音ではなくを漢字に表れる。

たとえば「ゆうた」という名前も「雄大」「優太」「佑汰」それぞれでその印象は大きく変わるだろう。

自分がよくわかっていない人に、その意味を持たせるのがためらわれたのだ。

いや、正直に書こう。漢字を考えると背筋に悪寒がはしり、何故かつけてはいけない気がしたのだ。



■ 2022年 5月18日(水)

心療内科に行き、お医者様に診察してもらった。

若くはつらつとした先生で、どうにも私が苦手なタイプだった。


その先生の話すには、私をみた限り異常や病気の兆候は見られないとの事だった。


仮に精神的な異常がある場合、夜に眠れなくなったり仕事にも集中できなくなるそうだ。

私は日常生活を問題なく過ごせているし規則正しい生活を送れているため、

病気というよりかは一時的な気の落ち込みに近いのではないか……ということらしい。


精神的な異常ではないというのは安心する反面、なつさんの存在が私を少し不安にさせる。


これが私の異常なら、まだ説明がつくのだが。



■ 2022年 5月23日(月)

あれから、なつさん以外の「なにか」も部屋に来るようになった。呪法の影響だろう。

放っておけば二日程度でいなくなるので問題は無かった。むしろ賑やかになるので歓迎したいくらいだ。


ただ、たまに厄介なやつらが来る。

彼らは家具を倒してきたり、耳元で意味不明な言葉をささやくなど、露骨に私を驚かせようとしてきて迷惑だ。


しかし、そういった連中はすぐにいなくなるのでまだ我慢できている。

なつさんの気配が彼らに近づいた後にいなくなることが多く、もしかすると色々と手をまわしてくれているのかもしれない。


ありがたいことだ。



■ 2022年 5月24日(火)

仕事にも身が入るようになり、ほめられることが多くなった。

強面の上司や同僚の女性とも緊張することなく話すことができた。


特に変わったことは無かったが、うれしかったので書き残しておく。



■ 2022年 5月25日(水)

心療内科に再び行った。お医者様の言うことには、やはり私は正常らしい。


勇気を出して家に何かの気配がするという話もしたのだが、

寂しさからイマジナリーフレンドのようなものを生み出したんじゃないか、と軽くあしらわれてしまった。


なんとか無理を言って不安を抑える薬を処方してもらったのだが、飲んでも特に変化は起きなかった。


相変わらずなつさんはいるし、たまに変なのは来るし、なつさんが追い払ってくれる。

今、これが私の日常となっている。

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