第70話 その後の
魔王討伐から、3年が過ぎた。
アレスさんは、
主な仕事は、狩りでレアな素材を集めているのだとか。
イライザさんと、スタンさんは。
魔人族の大陸に渡って、内政の手伝いをしている。
魔人族の大陸では王政は無くなり。 民主主義と為って、今現在は国としての持ち直しの最中だ。
まだまだ、魔人族への風当たりはきついけど。
それでも、少し前までに比べると、かなり良くなっている。
因みに。 イライザさんと、スタンさんは、来年結婚予定。
セリアさんは。シノンさんと
それと、意外にも。 元魔王で在ったゼアルさんも。
まぁ、今は性転換して女性に為って居るので、誰も元魔王で世界を混乱に
イクルさんの生存は確認できるらしい。
けど。 さすがに宇宙にまで行く事が出来ないので、大人しく気長に待っているとの事。
年に数回は、遊びに来るので。 4人とも元気だ。
レイラさんは、イクルさんのとの間に出来た子供の世話。
産まれて来た子は男子で、名前はレイク。
レイラさんと、イクルさんの名前を混ぜたらしい。
とても可愛らしい子で、黒い髪の毛以外は、レイラさん似。
そして僕とソニア。
魔人族の大陸で、スタンさん達と入れ替わる様に人族の大陸に(半年ほど前)。
人族の大陸では、生き残りの各王家と皇族が意見を出し合い。
人族の大陸統一連合国家が出来上がった。
もちろん、統一国家と言っても。 各王家や皇族たちは健在で、その王家&皇族たちがトップにたち。
その下に、市民代表者たちが付きそうと言う形で、祭り事が決められていく。
確かに、市民達の声が、そう簡単に通るとは思えないが。
それでも、民主主義に一番近い帝国制度と言う意識改革。
また、各王家や皇族たちが、それぞれを監視し合うため、今までの様に王皇貴族が好き勝手にできない。
まだまだ、利点もある代わりに、難点も多いけど。
そう言うのは、僕たちの役目じゃない。
それに、僕とソニアには、一番大事な事がある。
来週に控えている、僕とソニアの結婚式だ。
魔人族の大陸から帰ってきたら。 僕は魔王を倒した英雄として祭り上げられていた。
お陰様で、各王侯貴族から、「ウチの娘を嫁にっ!」と、凄まじいまでの数の縁談話を。
もう、これには、流石に身の危険を感じたので。
ホーデン王に、ソニアとの婚姻を話した所。
「魔王を討伐した英雄殿の言葉を聞かぬ訳にはいくまい。」
と、大陸中に
今は統一国家とは言え、元は一国の姫であるソニア。
流石に今すぐと言う訳にはいかず。 3ヶ月近く待たされて、
そんなこんなで、慌ただしくソニアとの式の準備をしていた時だった。
窓を叩く音が聞こえた。
不思議そうな表情をしながら窓に視線を向ける。
そりゃ、そうでしょう。 ここ何階だと思ってるの?
高さ的には、地球で言うビルの20階くらいの高さだよ。
城の最上階に近い位置だよ。
その窓の向こう側に、彼が居るんだよ。
そりゃ、間の抜けた顔にもなりますよっ!
「よっ! 帰って来たぞ。」
窓の外から、部屋の中に居る僕に向かって手を振るイクルさん。
「よっ! じゃ。 ないでしょう! ここ何階だと思っているんですかっ!
なに普通に!窓から入ろうとしているんですかっ!
普通に、ドア開けて入ってきましょうよっ!」
「すまん。すまん。 余り人目に着きたくなかったしな。」
そう言って、全く悪びれた態度も無く謝罪の言葉を言うイクル。
「はぁ・・・。 お帰りなさい。」
そう言って、イクルの前に立ち。 涙ぐみながら言うアキト。
「おう。ただいま。」
そうして、イクルは事の些末を話し出す。
異次元の神ゲルドを下した事。
最後に、無を取り込んだ事。
「それじゃぁ。 もう、この
イクルの話を聞き終えてアキトが尋ねる。
「今の所と言うべきなのか? それは、俺にも良くわからん。
数年後なのか。 数百年、数千年と先に為るのかも予想もできない。
まぁ、飽く迄、俺の感だけど。
アキト達が生きてる内には問題が起こらないと思うぞ。」
そういって、ニカッっと笑うイクル。
「皆には、本当に合わないのですか?」
「うん。 合わない。 まぁ、
他の人には会うつもりはない。」
「でも・・・。」
「俺は、このまま行方不明扱いにしておいてくれ。
流石に、皆が年老いて行くのを、傍で若いまま見て看取るのは辛い・・・。」
「っ・・・・」
イクルの言葉を聞いて、アキトが顔を
もし、自分がイクルの立場だったら・・・と。
確かに、自分だけが若いままで。 親しい人たちが年を取り老いて死んでいく。
それを、想像するのは・・・。
「判りました。 イクルさんの事は、僕の胸の中にだけ刻んで置きます。」
「悪いな。 っと。 そうだ、これ。」
そう言って、イクルがアキトに手渡したのは。
何かの鉱石で作られた、直径3センチほどの青い薔薇の形をした物だった。
「これは?」
「結婚祝い。」
「奇麗ですね・・・。」
見ていると、まるで吸い込まれそうな感覚に為るほどに美しい造形。
「宇宙空間を漂っている時に、暇つぶしで作ったものだけどな。
結構、良い出来だろ。」
「有り難う御座います。」
「じゃな。」
そう言って、窓枠に脚を掛けるイクル。
「イクルさん!」
「ん?」
アキトの言葉に振り返る。
「また、逢えますよね?」
「おう。気が向いたらな。」
「はい。」
「またな。」
「また。」
そう言ってイクルは窓から姿を消した。
慌てて窓に近寄って周囲を見渡すも、イクルの姿は何処に見えない。
さようなら。じゃないのは、また逢う気があるのだろう。
アキトは窓の側から離れると、喉が渇いているのに気が付いて、近くのテーブルに置かれている水差しから水を飲もうとコップに注いだ。
その時。 何処からともなく、1枚の紙が舞い降りて来た。
その紙には、こう書かれていた。
「 その青い薔薇な。 無の残片で作ったものだ。
今すぐって訳じゃないが。 数千、数万年後には封印が弱まって来る。
くれぐれも、雑に扱うなよ。
PS:
「イクルさん・・・。」
もう、怒りなのか、呆れなのか。
訳の判らない感情で、身体がプルプルと震えている。
最後の最後で、とんでもない物を置いて行ってくれたね・・・。
うん。 たぶん、生きてる内に顔を合わせる事は無いだろう。
と、アキトは確信した。
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