第50話 戦士たちの休息:1
「イクル!」
当初は、パパと呼んでいた
最近では、俺の事を名前で呼ぶようになっていた。
それは、もう。 スクスクと大きく育った。
今、現在の身長は170。
年の頃は、18歳と言った所だろうか。
大きく育ちすぎだろうっ!
幼少期なんて、あっと言う間に過ぎていったよっ!
セリアと、シノンさんの視線が、揺れまくる
フィオナとレイラさんは、余裕のある表情でセリアとシノンさんの方を見ている。
確かに以前。 シノンさんから、
名前を貰ったら、成長が早くなるとも聞いている。
聞いているが・・・。 早すぎでしょっ!
妖艶に成長した
女性陣の中では、恐らく最強な迄の
でも安心してくれ。
俺は、セリアやシノンさんくらいの
* * * * * * *
魔族の大陸への侵攻する日取りが決まった。
5日後だ。
人族、亜人族、獣人族の3つの大陸から、同時に船団を魔族の大陸に向けて出港させる。
魔人族の目が、船団の方に向いている隙に、魔人族内陸部に潜ませている味方陣営を一斉に決起させて魔王軍と戦闘を起こす。
そう、此処までは、全てがアキト達勇者パーティーを目立たなくする為の作戦。
本命のアキト達は、この隙に魔王城に乗り込んでの魔王討伐。
もちろん、魔王城に乗り込むのはアキト達だけではない。
ゲームじゃあるまいし。6人だけで、魔王城を攻略しろなんて無理ゲーも良い所だ。
* * * * * * *
「眠れないのですか?」
シノンさんが、俺の横に来て問う。
「ええ。」
なかなか寝付けない為に、ベランダで外の空気を吸っていた。
ここ数日で、シノンさんの話し方は変わっていた。
上から目線ではなくて、俺たちと対等の立場的な話し方に。
「大丈夫ですよ。アキト達なら。」
「そっちは心配していませんよ。」
そう、アキト達の方は然程心配していない。
俺が眠れなくなる位に考えているのは船団の方だ。
1つの船団に2万人ほどの搭乗者が乗る。
3つで5万人以上の船団員。
恐らく、生き残れるのは1万人も居れば良い方だろう。
海上と言う戦場で、船の上と言う逃げ場のない場所。
上空からは魔族の攻撃。
海には魔物が
「1万人以上の人を生贄にしての作戦。 最低の作戦ですね。」
「犠牲も出さずに勝利を得たかったと?」
「此方に犠牲が出ずとも、魔族側に犠牲が出ますよ。」
「どちらの軍にも犠牲は出したくないと?」
「そうですね。 理想を言えば、その通りです。
人族、魔族、亜人族、獣人族。 全ての種族が後腐れ無く、この後の時代を共存させるのなら。 まさに、犠牲を出さないのが理想です。」
「既に、魔族の侵攻で、多くの犠牲者が出ていても?」
「確かに、禍根を残すなと言うのは無理でしょう。
でも。 今の状況なら。 魔族の方も、魔王に操られていたと事で、多少は世間体が保たれるでしょう。
だけど、両方に多大な犠牲が出ると。 怨みの波紋は更に大きくなるのが目に見えています。」
そう、この戦い。
魔族に勝利しても、大きな禍根が残る。
例え操られて居るとは言え。 5万人以上もの死者を出した場合。
俺に、魔族を恨んでやるなと言う言葉は言えない。
いや、むしろ。 俺が、5万人以上の死者を出す予定と言ってもいいだろう。
正直、その重荷で、今にも気が触れそうだ。
数ある物語の知恵者の様に、ほとんど被害を出さずに勝利する。
俺に、そんな知恵が在れば。
* * * * * * *
私は400年の間、卵の状態で過ごしていた。
卵の状態でも、母のシノンから魔力的繋がりを得て、母の記憶にある情報は私にも流れ込んでくる。
なので、卵から孵化してスグの状態でも、かなりの知恵を蓄えている。
私に名前を付けてくれた人が苦しんでいる。
戦争をしているのに、出来るだけ双方に犠牲を出したくないらしい。
母の記憶では、戦争とは殺し合う事だと記憶されている。
私達も、他の生き物を殺すことはある。
自衛の為や、何かを守るために、他の命を奪うことはある。
だけど、
そして、あの人は。 守りたいと思うために、他の命を奪いたくもないし、味方に犠牲も出したくないと思い苦しんでいる。
私が、貴方の力になってあげる。
多分、母も私と同じ気持ちだと思う。
だって、私と母は、繋がっているのだから。
* * * * * * *
気持ちが高ぶって眠れない。
明日になれば、魔族の大陸に作られた隠れ家に向かう。
そこで数日過ごして、機を見て魔王城に突入する。
一見、簡単そうに言っているけど。
少数精鋭で敵のボスの居る所に突入する。
緊張するなと言う方が無理だろう。
人を殺す事の忌避感には、多少だけど慣れてしまった。
この世界に来てから、野党や盗賊の討伐依頼をしたからだ。
最初の頃は、人を切った感触で吐き出してしまった。
初めて人を殺して、数日間は眠れない日が続いた。
でも。 野党たちが、村を襲っていた時に、小さな子供を切り殺そうとしていたので、咄嗟に野党を切り伏せた。
そこからだ。 僕が人を切り伏せても罪悪感を余り感じなくなったのは。
自分の為じゃなくて、他人の為に命を奪う。
多分、そう言った自分の自己満足感で誤魔化しているのだと思う。
他の人を守る為なら、他の人の命を奪っても守る。
そう、思い込んで正当化する事で、自分の心を保っているのだと思う。
いや。思いたい。
そんな事を考えていたら。 僕は、いつの間にか眠りに落ちていた。
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