第47話 災難は突然に:8

「キュイキュイッキュー!」


「おっと! ごめん、ごめん。」


腕の中から、俺の顔に自分の顔を近づけてかす様に鳴く子供竜。


子供竜の小さな顔を見つめる。


日本人だからか、思い浮かぶのは和名ばかりが浮かんでしまう。


セツ。」


「セツ?」


「そう。 雪のように真っ白だから、セツ。 どうだ?」


「キュイキューー!」


小さな体に似合わない大きさの声で鳴く子供竜。


俺の腕の中で姿を変えていき、小さな女の子を抱く形になっていた。


「パパッ!」


小さな腕で、俺の首にしがみつく様に腕を回して抱き着くセツ


人で言うと、5歳くらいの年齢だろうか。


シノンさんと同じ、白い髪は背中の中ほどまで伸びており。


透き通るような薄い青の瞳スカイブルー


そして、当然の如く、真っ裸で俺に抱き着いている。


驚かないのかって?


いや、予想してたし。


シノンさんが、人の姿に為れた時点で予想は出来るってもんでしょう。


女子おなごを想うて名を付けたのか。」


「ええ。 転移前の日本では、息子を2人授かりましたので。


女の子も欲しかったのですが。 機会に恵まれなくて。」


「パパ。」


何だろう。 この子の実の親じゃないが、パパと呼ばれる事が凄く嬉しく感じる。


取り合えず、セツには、俺の上着を着せておく。


身体が小さいので、俺の上着だけでも足元までスッポリ収まるので、大事な所は隠れてくれる。


「ところで、シノンさん。」


「ん?」


「なんで、セツは、俺の事をパパって呼んでいるのでしょうか?」


「我ら、竜族にとって。 名を貰うと言う行為は。 親かつがいに為る者にしか名を付けさせん。


セツの名を付けたイクルは、セツの親でありつがいになると言う事じゃ。」


「はぁ~~・・・・」


やっぱり、そうなるのね。


うん。 予想はしてたさ。


小説やラノベなんかでは、ほぼ鉄板筋の内容だしね。


予想はしてたが、溜め息が出てくるのは仕方がないだろう。


「あの~。俺、来年で55歳になるんですよ。


幾らなんでも、5歳くらいのセツとじゃ、年齢差が有り過ぎてませんか?」


「安心しろ。 セツは400年の間、卵の状態で育った。 名を得たからには、セツの成長は早くなる。」


「竜って、そんなに長い羽化期間が必要なんですか?」


セツが特別なだけじゃ。 我ですら、20年で産まれ出てきた。


400年もの羽化期間を過ごしたセツは、我よりも強く為る事は予想できる。


恐らく、我達には無い特別な能力チカラを持っているのだろう。


そして、その特別な能力チカラを持つ、セツがイクルに何か感じて、名を与えて貰う事を請うた。


多分、お主には、他の者たちには無い、何かがあるのだろう。


それが証拠に、イクルの匂いは凄く良い匂いだ。」


シノンさんに言われて、俺は自分の身体を嗅ぐ。


そんなに、加齢臭が酷いのか?っと思いながら。


「言っておくが。 種族特有の匂いとかではないぞ。


魔力が無いせいで、お主の匂いが、この世界の現存する種族には無い、特別な匂いを放っているのだ。


言葉では言い表しにくいが。 こう、落ち着くと言うか、安らぐと言うか。 不思議な香りがするのだよ。」


そう言って、シノンさんが、俺の身体に自分の身体をこすり付けながら俺の匂いを嗅ぐ。


因みにセツは、俺に抱き着く形で寝ている。


セツの天使のような寝顔を見て。


まぁ、いっかぁ~。 などと思ってしまった。

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