第22話 思い 想い

【神】。 物語の中では、全知全能でうたわれて居る存在。


でも、俺は。


神が不老不死でも、全知全能でも無いと思っている。


北欧神話、ギリシャ神話、日本神話でも、物語の中で神は死んだりミスをしたりしている。


ミスをする時点で、全知全能ではないし。


不老不死なら、何で老人や中年の姿をする神が居るのかも不思議だし。


ましてや、神同士で性別の差を表すのも不思議でならない。


ラノベやアニメで、良く【私が動くと、この世界に被害が出る】とか、【神の規約】でどうたらこうたらとか。


いや、その神の管理する?星の危機なんだから、被害がどうのこうの言ってる場合ではないと思うのだが。


それなら、【その星の出来事は、その星に存在する者たちの力で何とかしろ】って言われる方が、まだ納得もいくよ。


だから、基本的には神と言うのは、世界の有り様を見て楽しんでいる。


俺は、そう思う。


そして、星の住人では対処の仕切れない様な事態の時にだけ少しだけ手を差し伸べる。


それが、転生者であったり、転移者の勇者であったりとか。


「でも、それだと僕が弱いまま転移した意味に繋がらいと思いますが?」


俺の言葉を聞き終えて、アキトが問い返してくる。


「君は、カルドラが、地球では死亡する前に、この星に転移させたと言っていたよね。」


「はい。」


「それはつまり。 君は地球には戻れなくて、この星で生涯を終えるって事を指してて。


この星で生涯を終えるなら、つまり君は、この星の住人と認定されてしまっていると僕は思うんだけど。


だから、この星の生き物の1つとして何とかしろと。 ね。」


「戻れないんですね・・・。」


「あぁ。 戻れないと思う。 俺も、君も・・・。」


「戻りたいとは?」


「戻れるなら、戻りたいね。


地球こうには、翔子さんも、子供に孫も居るんだから。 戻りたくない訳がないだろう。」


そう言いながら、悲しそうな表情で僕を見るイクルさん。


そう言って、空を。 いや、空と言うよりも、その向こうに在るのか無いのか分からない地球を。 家族を思っているのだろう。


「中々に、興味深い話ですね。」


スタンが面白そうに言う。


いつの間にか、5人が傍に寄って来て話を聞いてたのは知っていた。


「イクルの話から考えると。 まだ俺たちで何とか出来るレベルだから、自分たちで何とかしろって事か。」


とアレス。


「さぁ、どうだろうねぇ~。


俺的には、例え星の命が潰えても、この星が失われる結果に為っても、カルドラは何も手を出さないと思うけどね。


それこそ、カルドラのみぞ知るって事だ。」


「って事で。 アキト! 訓練を続けるわよっ!」


イライザが元気に声を上げて言う。


「・・・はい。」


頑張れ勇者。と、心の中で応援はしておこう。


「怪我したら、私が治してあげるから。 安心しなさい!」


怪我するのを、安心してと言うのは間違っていると思うのは俺だけだろうか?


4人は、勇者アキトを引きずる様に連れて行った。 いや、拉致か?この場合?



「戻りたいわよね・・・。」


セリアが、表情を曇らせながら呟くように言う。


「あぁ・・。 戻れるならね・・・。」


この2年間で、彼女がイクルに好意を寄せているのは知っている。


そして、俺も彼女セリアに好意を抱いている。


2人ともに、恋愛感情での好意。


だが、俺はセリアに手を出してはいない。


奥手とか、そう言った理由ではない。


単に【怖い】だけだ。


頭では、戻れないと理解はしていても。


心の何処かでは、もしかしたら戻れるのかも。っと言う思いもある。


その時に、この星で大切な物を作ってしまうのが怖い。


何より、一番怖いのは、俺の年齢で元気に居られるのが良くても後10年ちょっとだろう。


60過ぎまでは、元気に振舞う事が出来ると思うけど。


さすがに60半ばを過ぎると、いろんな意味で元気が無くなってくるだろう。


セリアは若い。 俺の下の息子の孝也たかやよりも若い。


そんな若い彼女を置いて、先に逝く事も怖いし、彼女が途中で居なくなるのも怖くて仕方がない。


魔物や魔獣などが居る、この世界での命の価値は低い。


いつ死んでもおかしくない。


だから怖い。


臆病なだけだ。 俺は。


無言のままで、2人の時間が流れていく。

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