第14話 更に流れて
「うっ、うぅ~~ん。」
両手を上げて、大きく伸びをする。
「おう! お疲れさん。 もう上がって良いぞ!」
厨房の中からの男性の声が、俺に向かって言う。
「あいよっ!」
そう言って、自分が捌いていた肉の塊をパレットに入れて保冷庫にしまう。
血と匂いを落とす為に、洗剤で手を洗って、水桶の中の水を汲み取り洗い流す。
「それじゃ、また何かあったら呼んでくださいね。」
「おう、今日は助かったよ。」
そう言いながら、俺に小さな布袋と、銀貨5枚を手渡す店主のチョットさん。
「有り難う御座います。」
軽く頭を下げて礼を言う。
チョットさんは、軽く手を振って店の中に戻っていく。
左腕の腕時計を見れば、16時18分。
朝の9時から働いて、この時間に終わって稼ぎは銀貨5枚。
今いる、王都ホーデンでの通貨は、人族の大陸で使用できる通貨で。
他の大陸では換金しないと使えない。
人族の大陸での通貨は、金貨、銀貨、銅貨が主流で。
小銅貨10円、銅貨:100円、銀貨:1000円、金貨:1万円。 と、考えてくれればいい。
大金貨:10万円と、白銀貨:100万円、と言うのもあるが。
俺が見た事のあるのは、せいぜい大金貨までで、白銀貨は見た事が無い。
晩飯の材料を買いながら帰路に着く。
この星に着て、2年。
俺は、城を出て暮らしをしている。
家は、城を出る時にソニアが用意してくれた。
別に、城を追い出された訳ではない。
むしろ逆に、城に居座ってくれても構わないとまで言われて驚いてたくらいだ。
俺のした事と言えば、素人に中途半端な知識での、こうしたら良いんじゃない?ってレベルだってのに。
何か、それがヒントに為るのだとか。 俺には理解できないけどねっ!
俺の家は、王都の外れに在る。
外れとは言っても、周囲に何も無い訳ではない。
単に、王都内でも、新たに開発中の方だって事で。
近所には教会もあるし、その横には兵士の駐在所も在る。
両隣には、若い夫婦が住んでいるし。
近所にも、ちゃんと人が住んでいる家が複数建っている。
ドアを開けて、家の中に入ると。
「お帰りなさいませ。イクルさん。」
そう、メイドさんが居た。
黒と白を基調としたメイド服に身を包み。
淡いオレンジの髪色でセミロング。 身長は150ちょっと。
切れ長の瞳に、少しキツめの印象を与える顔。
細身だけど、ボン、キュッ、ボンのスタイルの良いメイドさん。
彼女の名前は、ルカさん。 年齢25歳。
奇しくも、俺の孫の名前と同じ。
「ただいま。 ご苦労様です。ルカさん。」
「いえ。 お茶の用意をいたしますね。」
「あ、これ。 晩飯の食材です。」
「有り難う御座います。」
そう言いながら、俺から食材を受け取り、キッチンの方に向かって行く。
靴を脱いで、左の部屋に入ると。
「早かったじゃない。」
テーブルの前の、ソファーに寝転がって寛いでいるソニアが居た。
「また、来てたのか。」
「失礼な言い方ね。 魔石に充填しに来てあげたのに。」
「あぁ、そりゃスマン。 ありがとうな。」
と言っているが。 充填するだけなら、ルカさんでも出来る事だ。
彼女は、俺の様子を見ると言っては、頻繁に城を抜け出しては、俺の所に来ている。
要は、俺をダシにして、城から出て自由を満喫しているのだ。
安全面で、どうなかと心配もしたが。そこらは抜かりが無かった。
まず、ソニアの警護として、優秀な隠密が数人で警護しているらしい。
今も、姿が見えていないだけで、この家の周囲に居てソニアの安全を確保しているのだろう。
そして、家の近所の兵士の駐在所。
ここに、詰め込んでいる兵士たち。常時、5人で3交代制なのだが。
なんと、驚くことに。 詰め所に居る兵士さんたち、実は近衛兵だと言う事だ。
近衛兵って、それこそ騎士の中でも、エリート中のエリートの集まりだ。
しかも、近衛騎士の団長さんまで駐在所勤務に当てているという始末。
良いのか?それで? と、疑問に思う事も度々ある・・・。
「お茶を、お持ちしました。」
そう言いながら、ルカさんが、俺とソニアの前に置く。
「ありがとうございます。」
「いえ、いえ。 姫様の我儘に付き合ってくださり感謝しております。」
「ちょっとルカ! その言い方だと、私が迷惑を掛けているみたいに聞こえるんだけど!?」
「【みたい】ではなくて、【かけている】のですよ。ねっ。」
俺を見ながらニッコリと微笑む。
俺は苦笑で返す。
まぁ本当は、もっと小さな家で1人暮らしして、自立したかった俺なんだが。
結局、ソニアの勢いに押し切られて、彼女の提案に乗ってしまった時点で俺も同罪なんだけど。
「ただいまぁ~。」
そう言いながら、リビングに入ってきたのはイライザ。
「ただいま戻りました。」
「帰ったぞぉ~。」
続いて入ってきたのは、スタンにアレス。
「ただいま。」
そして、セリアさん。
「皆さんの分の、お茶も淹れてきますね。」
ルカさんがキッチンに向かうので。
「んじゃ。俺も、晩飯の支度をするから待ってろ。」
そう言って、ソファーから立ち上がる俺。
「早めに頼むぞぉ~。」
キッチンに向かう俺に、アレスが言う。
右手を軽く振り、了承の合図を送る。
そう、ソニアは通いだが。
それ以外の4人は、この家に寝泊まりしている。
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