【完結】 50のオッサン 異世界に行く 《全71話+1》
眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
第1話 気が付けば異世界!?
本当に、久しぶりの事だった。
珍しく、仕事の帰りに普段は飲まないワンカップ(酒)をコンビニで購入して飲み切り、電車の座席に座ってウトウトしてたんだ。
そう、仕事が終わって。 帰宅中の電車の中でウトウトしてしまって。
気が付いたら、平原に寝転がっていた。
「・・・・・・・」
無言で周囲を見渡す。
左腕の
時刻は、19:30分。
もう一度、周囲を見る。
夜に為りかけている、見渡す限りの平原。
「どこだ? ここ?」
* * * * * *
現在、季節は夏。 8月の、お盆休み前。
50歳にも為って。派遣会社に登録して、その日暮らしの俺。
いつもの
時間は、朝の5時30分。
「おいぃ! 遠すぎだろうっ!」
手渡せれた日報の仕事場所は【岡山県】。大阪から電車で片道を軽く1時間半以上はかかる。
俺が声を荒げたのも無理はない。と、思う。
まぁ、ウチの派遣会社は、毎日の様に仕事現場が変わるのは
そこから、さらにタクシーでの料金も発生するから正直きつい・・・。
なに、この片道2800円って・・・。 往復5600円もするよ!?
ウチの派遣会社は日払いも可能なのだが。 その日に、日払いが出るシステムではなく。翌々日。
つまりは、当日働いて、2日後に日払いの分の給料が振り込まれる。
はっきり言って、何処が日払いのか突っ込みたい!
「お願いしますっ! 電車代は貸しますのでっ!」
「そこじゃなくてっ! どう足掻いても遅刻だからねコレっ!」
「先方には、遅れるって連絡入れますのでっ!」
この人。
ウチの支部は、その日欠勤も珍しくも無く。 競馬やパチンコで大勝ちすると、休む輩も少なくない・・・。
多分、今日も誰かが欠勤したのだろう。
そして、アドリブには評価の高い俺に白羽の矢が立った。
ある程度の仕事をこなせて、ある程度の自己判断もできて。 周囲の人の受けも程よく良い俺が・・・・。
何でもソツなくこなせる反面、特に突出した能力がない。
それが俺。
息子は2人居て。上の息子の年は27歳で子供が居る。 要するに、俺は、お爺ちゃん。
下の息子は現在25歳で恋人募集中。
現在、妻とも別れ。
何故、別れたかって? 数年前に起きた異常気象による天災の影響で、地震と津波が一気に襲ってきて。
ウチの会社事、丸のみにしてくれて会社が倒産。
給料未払いで、会長&社長が夜逃げ。
しかも、ご丁寧な事に。 会社の借金の何割かを、俺の名義で借りていて。
しかも、その借金先が、俺と嫁の親族だと来ている。
優しい親族の人たちは、俺の名義での借金を泣き寝入りするつもりだったのだが。
前々から、俺の家を建てた土地が邪魔で。地方開発が遅延していたので、土地の地価は相当上がっていた。
親族への借金を返しても、節約すれば2年近くは暮らしていける程には。
だけど、2人の息子には申し訳ないが、大学への進学は
これは、今でも申し訳ないと思っている。
それでも、何かと借金の残りは有ったので。 俺の名義で全部を引き受けて、嫁さんとも形式上での離婚。
別に仲が悪いとかの問題ではなくて、金の問題での離婚。
別れてくれるのに、3年ほど手間取ったけどね。
こんな運の無い、男の何処に惚れたのやら・・・。
と、まぁ。 多少の不幸自慢なら負けないつもりだ。
ゴネて居ても始まらないし。 給料が出る訳でもない。
日報を見直せば、連絡先の監督は、前々回の現場で御世話になった所長の名前だった。
「早出料金くらい付けてくれよ?」
「はい。」
「電車代貸して。」
「はい。」
そう言って、俺に5千円を手渡す
何せ、今の手持ち金額は5千円しかない。借りた分と合わせて1万ジャスト。
給料日前なので、財布の中身が厳しい状況。
元々、近場の現場のはずが、突然の遠方に変更。
急いで事務所を出て、最寄りの駅で電車に掛け乗り現場に向かい。
15分ほど遅れて現場入り。
所長に謝りつつ、仕事を終わらせて。現場から出て帰りにコンビニでワンカップ(酒)を飲んでウトウトして目が覚めたら見知らぬ草原で寝ていたと・・・。
* * * *
取り合えず立ち上がり、周囲に目を凝らす。
だだっ広い平原だが、所々に大きめの岩が在り樹も生えている。
電車の中で、足元に置いていたボストンバックと、膝の上に置いていた背負い袋は在る。
荷物を手に取り、少し離れた所に生えている樹に向かい、荷物を地面に降ろしてボストンバックの中身を漁る。
ヘルメットを取り出して頭部に着けて、ヘルメットに取り付けてあるヘッドライトのスイッチを入れる。
光量を最低まで下げて、バックの中からフルハーネスを取り出す。
フルハーネスの背中部分のフックを脚の方に付け直し、転落防止用のフックの先をバックの手持ち部分に着けフルハーネスを装着する。
本来の使い道とは全く違うが、こうでもしないと両手が使えない。
さらにバックの中から、作業用のゴム手袋を取り出して着ける。
「よっと!」
掛け声とともに、一番低い枝にジャンプして捕まると。幹を蹴りながら
なんとかかんとか、身体を持ち上げて枝の上に上半身を引っかけて、樹の幹に足を延ばしながら枝の上に。
そして、フルハーネスのフックの先にあるバックを引っ張り上げる。
「きっつい・・・。」
一番低い枝の上で言葉を漏らす。
50のおじさんにも為って、懸垂で木登りやるとは思わなかったよ。
そして、手に届く枝を掴んで登る作業を2度ほど繰り返す。
地上からは5メートルほど。 このくらい有れば良いか?
フルハーネスを元の状態に戻して、落ちない様に頭上に在る太めの枝に落下ロープ部分を回してフックを固定させる。
もちろん、枝が折れないかどうかは確認しているので大丈夫だ。
*注意*
基本、1メートル以上の落下で、自分の体重の10倍(14倍?)近くの落下荷重が掛かる。
その為、ベルト式は3メートル未満の高所。 5メートル以上はフルハーネス使用と言うのが最近の法律で定められている。
因みに、ベルト式で、ベルトの安全紐が伸びきった状態まで落下すると、内臓破裂や、骨が数本折れるのは珍しくない(主に腰椎:作者の知り合いは下半身不随になった)。
1メートルは【一命取る】とも言われている。
背負い袋を開けて、中からペットボトルを取り出して口に付けて飲み込む。
「ふう。」
そして、空を見上げる。
2つの月が見える。
1つは満月。1つは下弦の月。
「はは・・・。ありえねぇ・・・。」
背負い袋の中から、アンパンを取り出して食う。
左腕の時計を見れば、20時を回っていた。
アルコールが抜けきって居ない所に、木登りをして身体を酷使したせいで。急激に眠気が襲ってきた。
ペットボトルの中の水を飲みほし、背負い袋の中に空のペットボトルを入れる。
「寝る。」
誰に言った訳でもない。自分に言い聞かせただけだ。
仕事の疲れも相まって、目を瞑ると意識を手放した。
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