ロボットの街とエンジニア
月鮫優花
第1話
「それじゃあ、行ってきます!!」
そういってあたしは、張り切って隣の街へとヘリを飛ばした。
この世界にはたくさんのロボット達の住む街と、あたし達人間が住む1つの町がある。あたし達の町に住んでいるのは全員エンジニアで、住民はロボット達のメンテナンスのために定期的に街へ出るのだ。
今日はあたしが、初めて、一人で外に仕事に行くことになった。
頑張らなきゃ!そう思いながら、自動操縦される機内でマニュアルの最終確認をしているうちに、街に着いた。
「あ、人間さん。よろしくお願いします……。」
ロボットのうち一体があたしに挨拶をしたと思えば、そそくさといなくなってしまった。他のロボット達も、あたしと目が合えばすぐに逸らしてしまったりして、なんだかよそよそしい。
これは種族や立場の差からくる物だ。あたしだけ特別避けられているわけではなくて、他のエンジニアにだってこの対応は変わらない。そう理屈ではわかっていても、少し寂しい。
だからといって仕事をサボるのもいけないから、そのまま街を歩いて点検をしてた。
そうして進んだ街の裏路地に、一体のロボットが倒れてた。いたずらでもされたみたいにボロボロで、動かなかった。
助けなきゃ。
あたしは自分のヘリにそのロボを連れこんだ。
あたしは駆け出しのエンジニアだから、もしかしたら厳しいこともあるかもしれない。けれど、やれることをやらなくちゃ。ヘリを街へ飛ばしながら、応急処置を進める。一つ一つ、間違えないように。あたし達だけの機内では、工具ひとつ置く音もよく響いた。そんな緊張感のなか、ひとしきり作業を終わらせることに成功した。
ドキドキしながら、再起動ボタンを押す。
ロボットは目を光らせ、ゆっくりと体を起こす。ハラハラ見つめるあたしに、時期に言葉は告げられた。
「ありがとう。だいすき。」
あたしはビックリした。
ロボットは続ける。
「すき、すき、だいすきだよ。」
こんなに優しくて、温かい言葉がこの子達の中にあったなんて!あたしははしゃいで、ロボットに抱きつく。
これは何らかのバグで、「s」「u」「k」「i 」の音声をライブラリから参照してきているだけなのかもしれない。それでもあたしは嬉しくて!
ヘリはあたし達の町へ向かって行く。バグならバグで、みんなに見てもらわなきゃ。でも、きっとみんな笑顔になる。「この言葉はロボ達にも、あたし達にも輝く可能性だ」ってね!!
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