破滅の純情

paradoxical◆k8817

破滅の純情

破滅の純情


俺は宅配ピザ屋でバイトする通信制高校の生徒だ。

まぁ、通信制高校でも不登校でVRMMOにはまっている。卒業できなければ高卒認定試験を受ければいいだけだ。俺にはそれができる。いまはアイテム課金のために金を稼がなければ。課金なしで勝てるゲームなぞない。

タブレットが光った。ピカピカピカピカピカピカピカピカピカ。お客さんからのオーダーが入った。

俺はピザ生地を練って、ピザを作りはじめた。

オーダーはシーフードピザのLサイズ。

まずはピザ生地をこねて、伸ばして、丸にする。

おっとイタリア人のマエストロみたいに空中の飛ばしたりは当然できないぜ。そんなものを食いたいなら、新幹線に乗って県庁所在地に行きやがれだ。耕作放棄地しかない田舎にそんなものを望むな。

丸く平たくなったピザ生地にソースを塗り、チーズを振る。

そしてキッチンのテーブルに並べれた容器からシーフードをのせていく。

ここでいかを一切れおつまみ。なーに、客のピザから一切れ減らしても誰も気づかないぜ。

かまどにピザを入れる。焼きあがるまでにキッチンのテーブルを片付ける、そして箱を用意する。

そろそろ焼き上がりだ。焼け具合を確認する。大丈夫だ。

俺はピザをかまどから出す。そして箱に入れて、12等分にカットする。

ドリンクは?ペプシが3つだ。冷蔵庫から出す。

それらをデリバリーバッグに入れる。

キッチンを出る時に言った。

「アムロ、ガンダム出ます!」

ノリのいいおばさん店長が言う。

「あなたなら、できるわ」

イエィ!バイクのスロットルをフルに開いて、トランザムだぜ!

チャチャチャ!チャチャチャ!チャチャチャ!チャチャチャ!チャチャチャ!ダダダダダ。

おっと、そんなことばかりしているから、俺はサツの赤いやつにロックオンされているんだった。


店の前の3輪スクーターのリアのデリバリーボックスにデリバリバッグを入れる。

スクーターのカギを回してエンジンをかける。今日も調子がいいぜ、俺の単気筒。ガソリンが4バルブのOHCで燃焼する振動を体で感じる。グオグオグオグオグオグオグオグオグオ。

お前の振動は腐女子の俺の彼女よりいいぜ。彼女は腐女子なだけならいいのだがコスプレイヤーで併せを強制される。夢中になっているのはVTuberだし。

店は2車線の県道に面している。この時間はスピードを出している車が多いから、アークエンジェルから発信するストライクガンダムのようにはいかないぜ。

一応、左右を確認する。

「キラ・ヤマト出ます」

タララータラータラタララータラータラタララータラータラタララータラータラタララータラータラ。俺はFREEDOMになる。

フルスロットルで制限速度を少し超過する程度にする。そしてスロットルを緩める。

ブオーブオーブオーの全開から安定したブオーブオーブオーになる。

ブブオブオーブブオブオーブブオブオーブブオブオーブブオブオー。

俺のエールストライクユニットは快調だぜ。

ニュータイプなコーディネーターの俺は誰も抜けないぜ。赤いやつもロックオンできないだろう。

ただ、GUND-ARMの赤髪のあいつ、いやあいつについているエリクトには勝てる気がしない。データストームだぜ体がなくても機械を操るんだぜ。あんなやつらにはかなわない。


ブオーブオブオブオブオー。前の信号が黄色になった。進めの合図だ。スロットルを吹かす。ブオンブオンブオンブオンブオンブオーンブオーンブオーンブオーンブオーン。追ってくるエリクトを出し抜いてやった。トランザム!

チャチャチャ!チャチャチャ!チャチャチャ!チャチャチャ!チャチャチャ!ダダダダダ。


常連の家は全部、頭の中に入っている。ハロは頭が悪いし、あまり使い物にならない。まずは次の交差点を右折だ。前に敵はいない。一気に右折だぜ。ハンドルを動かし、体重移動する。ゴーゴーゴーゴーゴー。ガラガラガラガラガラ、タイヤが鳴っているぜ。セクシー。こいつはセクシーなやつなんだぜ。

いまの気分は破滅の純情。燃え上がるがれきの上に立っている。いくよ!

タララタタタータララタタタータララタタタータララタタタータララタタター。


今日は自転車で走っていない、落ちろ!蚊トンボをしないで、俺は魂を女たちに持っていかれなくて今夜もすんだ。

今夜はデリバリー寿司の連中とも遭遇しない。出てこなければ、やられなかったのにと呪詛の言葉を吐かないでクワイエットゼロを攻略できそうだ。

アーアーアーアアアーーアアアーーアーアーアーアアアーーアアアーーアーアーアーアアアーーアアアーーアーアーアーアアアーーアアアーー。


ディアナ様のもとに早く行かなければ。ディアナ様のお導きを。ミッションは順調だ。

ディアナ様。ラッセラッセラッセラッセラッセラッセラッセラッセラッセラララララ。


刹那。赤い機体のゼントランが見えた。宅配寿司屋で俺のライバルだ。しかし、俺の別名は青い機体のジーニアス。デリバリー界隈ではコンビで扱われている。でも、いまは星間飛行をしている時間はない。

しかし、ゼントランが追いかけてくる。このしつこさは鉄華団か?

あいつ可変機を操るS.M.S時代とは違う。シンプルな機体ゆえに強い。扱いづらく限界のある可変機よりどんなことをやっても壊れないシンプルな機体が俺は怖い。反応弾は使いたくない。

あれはすべてが虚無になる。セカイがデータストームの海になってします。

すわ、インメルマン・ダンスを踊る。

ブレーキを握る。ギーギーギーギーギー。しかし、それは一瞬だ。同時のスロットルを回す。グワグワグワグワグワ。そして、ハンドルと重心移動。ガタガタガタガタガタ。

あいつは被弾したのかバックミラーに映っていない。

いけないボーダーラインを超えたしまった。

タラタタタララータラタタタララータラタタタララータラタタタララータラタタタララーンンンンンンンンンン。


ハンドルの上のスマホを見た。ミッションは30分だが、俺は20分でこなす。俺のミッションはミノスフキードライブをついたやつでもないとついてこれないだろ。

ギュンーギュンーギュンーギュンーギュンー。ピキンピキンピキンピキンピキン。

あの戦争で失った初恋の彼女の姿が見えた。おやじの知り合いはそういう時があると言っていた。

その知り合いの後輩は強化人間に恋をして苦労をしたらしい。

チャララチャララチャララチャララチャララチャラランーチャラランーチャラランーチャラランージャーン。


配達先のマンションが見えてきた。スロットルを一瞬、吹かし、加速。ゾルトラークを決めて、魔王を倒した気分だぜ。「魂の眠る地(オレオール)」についた時はこんな気持ちになるのかもしれない。スカブコーラルと意思を疎通できたかもしれない。新たな世界へダイブした。

空を見上げるとシャングリアが見えた。僕はアオイロに抱かれていた。


俺は配達先のマンションの部屋に立ち、ドアベルを鳴らした。しかし、出てこない。おかしいと思った。しかたがないのでドアを開けてみた。

そこにいたのはニナに刺されたアイだった。

双子の男の子と女の子が泣いていた。その傍らに花束が置いてあった。

ひなげしの花が咲いていた。このシングルマザーの家族は旅の行方になにを見たのだろう?人のせつない思いは見えたのだろうか?


俺はそこで感情演技をして、なんとか乗り切ろうと思った。途端にPTSDでニュータイプ空間へ精神が持っていかれる。ララララララララア。インド人の少女がシャアシャアシャアシャアシャアと歌っていた。

月の繭につつまれた。銀河を渡る蝶が待っていた。

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