第29話 記憶を食べる本

古い図書館で見つけた不思議な本をCくんが読み始めた。

読むほどに、何か大切なものを忘れている気がする。

本を閉じようとしても手が動かない。

やっと本から目を離せた時、Cくんは自分の名前すら思い出せなくなっていた。

慌てて図書館を出ようとすると、司書が「また一冊、完成しました」とつぶやくのが聞こえた。

混乱したまま歩いていると、気づけば見覚えのある家の前に立っていた。

中に入ると、そこが自分の家だとわかったが、どの部屋が自分のものかもわからず、家族の顔を見ても誰だかわからなかった。

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