思いやりの心
自分の部屋に戻って数十分後、扉がノックされる。
うん?誰だろう?志那さんか花梨さんだと言うことは明白だがどうして僕の部屋に…もしかしてやっぱり今すぐ出ていけってことかな?そうなれば仕方ない。甘んじて受け入れるとしよう。
「はい」
僕はそう言いながら部屋の扉を開けた。するとそこには志那さんがいた。
志那さんはどこか落ち着かない様子でソワソワしていた。
「どうしましたか?」
僕がそう声をかけると志那さんが口を開いた。
「か、叶人?さっき言ってた私が叶人を疎んでいるって…どうしてそんなこと思ったの?」
ん?もしかして僕にそれがバレて気まずいのだろうか?それならそうと早く言ってくれればいいのに!余計な気を使わせてしまった。この家に居させてもらえるだけでもありがたいんだからそんな気を使わせないようになしないとね!
「安心してください志那さん。僕のことを疎ましく思っているということを隠さなくてもいいですよ?僕は気にしてませんし花梨さんと二人で僕のことなんて気にしないで生活してください」
うん完璧だ!志那さんが心配していることは問題ないと伝えつつ花梨さんと気兼ねなく生活してくれという花梨さんへのフォローも出来た。うーん。我ながら今日は冴えてる!
「ち、違うの!聞いて!私は叶人のことを疎んでなんかいないの!どうしてそんなこと…」
「え?だって志那さんは僕が物心ついた頃には僕になんの関心も持ってなかったじゃないですか」
僕は志那さんに愛情を向けられた覚えがない。それは疎まれていたからだと納得している。
「そ、そんなことあるわけないでしょ!?」
そうなのか?うーん。でもじゃあなんで…
「ならどうして僕の誕生日を祝ってくれなかったんでしょう?」
「ぇ…」
「僕は毎年夜遅くまで志那さんが帰ってくるのを待っていました。でも一度も帰ってきたことは無かった。最近の誕生日ではもう祝われることは無いと理解していたので先に寝ていました」
そう告げるとみるみると志那さんの顔が青ざめていく。どうしたのかな?お腹でも痛くなったのかな?
「ち、違うの…それは仕事が忙しかったからで…」
「ああ!勘違いしないでください。あの時の僕はどうにかしていました。今考えれば当たり前ですよね。嫌いな相手の誕生日なんて祝いたいわけないですもんね」
そうそう。今の僕は完全に理解している。どこに嫌いな相手の誕生日を祝いたい奴がいるだろう?もしいたとしたらそいつはどこかネジが飛んでるんだろうなぁ…...
「ちが…違う…違うの…私は…」
「心配しないでください。もう僕は誕生日を祝ってもらいたいなんて言いません。それに僕のことは居ないものとして扱ってくれて構いません。その方がお二人にとっていいでしょう?」
うんうん。相手の要望に合った提案をする。それこそ話し合いの基本だ。
「あ、今思えば僕は志那さんに一度も愛されてるという実感がなかったな」
これは僕の思いやりの心だ。こう言うことで僕がその事実を正しく理解しているのだと志那さんに伝えることが出来る。やばい…今日の僕冴えすぎ…?
「だからこれまでもこれからも気にしないでくださいね?」
「ぁ、ああぁぁぁあぁぁあぁあぁあぁ…」
志那さんは涙を流しながら膝を着いてしまった。どうしたのだろう?そこまで僕が理解してくれたことが嬉しいのだろうか?良かった良かった。志那さんが嬉しいなら僕も嬉しい。win-winな関係ってやつだね!
「それじゃ僕は失礼しますね」
僕は嬉しい気持ちになりながら扉を閉めた。
知らなかった。人に喜んで貰えるのがこんなに嬉しいことだなんて。あはははは、今日は気分がいいなぁ…
あとがき
少し極端に書きすぎている部分があるかもしれません…でもそれはフィクションということで…それでも大丈夫!という方は是非、評価とブックマークをお願いします!
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