18歳になったので冒険者になろうと思います!
カイン・フォーター
第1話 18歳の誕生日
高校3年の春。
私、『
4月19日
私の誕生日。
嬉しいことに今日は土曜日だ。
時間はいっぱいある……はずだった。
「な〜んでそんなに嫌そうなの?」
「嫌に決まってるよ。せっかくの誕生日かつ休日が潰されちゃったんだから」
私の前を歩く私とほぼ同じ身長の幼馴染、『
彼女も今日で18歳になる。
つまり、私と誕生日が同じ。
そして、今私達が向かっている場所は18歳にならないと行けない場所。
「善は急げだよ!私達の夢だったでしょ?『冒険者』!」
この日本には、『ダンジョン』と呼ばれる異空間が存在する。
ダンジョンには豊富な資源と恐ろしいモンスター、そして現代の主要エネルギーである『魔力』が眠っている。
そんなダンジョンに潜り、巨万の富を築かんとする人達を『冒険者』と呼ぶ。
冒険者は国公認の優良な職業で、石油や金のように輸出によって莫大な利益を生み出す資源『魔力』を集めるのが仕事。
具体的な集め方としては、ダンジョンの中にいるモンスターと言う化け物を倒す事で得られる『魔石』を集める。
それを売ることで、日本は一時期の産油国並の利益を得ている。
そんな利益の甘い汁を吸うのが、現場で働き、実際に巨万の富を得ている冒険者。
そんな冒険者になる事が、私達の小さい頃からの夢だった。
「別に誕生日当日に冒険者になる必要は無いじゃん…それこそ定番通り夏休みみたいな長期休暇の時にさ〜」
「それじゃ遅いの!冒険者はスタートダッシュが大事なんだから!」
「出た出た、莉音のダンジョンオタク。そんなにダンジョンの事ばっかり考えて何が楽しいの?」
「分かってないな〜。これは将来の稼ぎの為の先行投資だよ。お陰で今日登録に行けるくらい話が進んでるんだから」
冒険者になるには、最低限講習を受けなきゃいけない。
その講習の予約や費用なんかは全部莉音がやってくれた。
本当は事前体験を済ませて実技面でも勉強しなきゃいけないらしいけど、それは絶対じゃない。
講習だけ受けたら後は登録してダンジョンに潜るだけ。
今はその登録に向かっているところだ。
小走りで目的地へ急ぐ莉音の後を追うこと5分。
立派なビルの前までやって来ると、莉音はようやく止まった。
「ここが『冒険者ギルド』か…」
「いや、事前講習の時に来たよね?」
「もう!こう言うのは雰囲気が大事なの!」
まるで初めて来たみたいな態度で目を輝かせる莉音にツッコミを入れる。
もちろん怒られた。
まあ、そんな莉音は放っておくとして…
「さっさと登録しに行くよ。何時間も待つのは御免だからね?」
「登録はすぐに終わるから大丈夫!」
ビルの中に入り、受付カウンターへ向う。
受付の女性の前まで来ると、私達は事前講習を受けた事を証明する証明書を出す。
「ご新規登録ですね?少々お待ち下さい」
そう言って証明書を受け取った女性は、書類をまとめて用意すると、長々とした手続きの話を始めた。
その内容は莉音から聞いてるから正直2度も聞く気はない。
右から左へ流すと、色々な書類にサインと印鑑を押して、手続きを終わらせた。
「では最後に登録料を頂きます」
「はい。足りてると思います」
「1、2、3……はい。丁度頂きました」
まあまあな額の登録料。
金銭面に余裕がない私としてはとってもありがたいけど…何から何まで申し訳ないなぁ。
事前講習の授業料も全額出してもらったし…
莉音は「フレンドプランでやってるから普通に受けるより安いんだよ!」とか言ってたけど…とても高校生がポンと出して良い額じゃない。
「冒険者として稼げたらしっかり返すから、いくら使ったか残しておいてね?」
「稼げたら、ね?それまでは気にしなくていいから」
「何から何までごめんね…」
支払いをして少し話していると、受付の女性が戻って来て2つのカードを持ってきた。
「こちらがお二人の冒険者免許証です。厳重な管理をお願いします」
「はい。ありがとうございます」
お辞儀をして離れると、冒険者免許証……一般的に『ギルドカード』を改めて見る。
「ランクF…白のカードだね」
「まあ、新米だしね」
冒険者には『ランク』と言う等級があり、F〜Sまでの7段階で区分されている。
今の私達はランクF。
カードは白で、冒険者になりたて、駆け出しの冒険者である事を表している。
そのカードを財布の中に仕舞うと、私と莉音は一旦ビルを出る。
そしてバスに乗って向かった先は―――
「ここがダンジョンか…外側からしか見たことなかったけど…異様な空間だね」
もちろん、私達がこれから挑む場所。
半世紀前に突如として現れ、混乱と恐怖と絶望と……そして莫大な富を齎した異空間。
死と狂騒と金が渦巻く地。
『ダンジョン』
その内部は多くの人で溢れかえっていて、誰もが日常とは違う格好をしている。
生き物の毛皮をそのまま使って作ったような服を着た人。
鱗で出来た鎧を着た人。
まるで機械のような鎧を着た人。
西洋風の騎士や、戦国時代の武士を思い起こすような格好の人。
見るからに魔法使いと言うべき服を着た人。
腰に刀を差した人。
西洋風の剣を背負った人。
矛先を布で覆った槍を杖のように使っている人。
魔女の杖のようなモノを持っている人。
小型の大砲のような銃を抱えた人など様々だ。
そんな非日常的な空間に、私達はやって来た。
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