第2話 運命の交差点
入学式から一週間が経った。
リンの高校生活は充実していた。
金曜日の六時間目の体育のあと、リンは体育倉庫でボールを片付けていた。
この日は、帰りのホームルームが無く、片付けが終われば、帰れる日だった。
薄暗い倉庫でリンは作業を進め、
「もうちょっとで終わりかな」
と呟いた。
突然、「バァーン!」という大きな音。
強風にあおられたのか、鉄製の扉が勢いよく閉まり、倉庫内は真っ暗になった。
リンは驚き、思わず「ひゃーっ!」と声を上げた。
心臓がバクバクと鳴る中、リンは手探りで扉に向かう。
しかし、扉はがっちりと閉まっており、びくともしない。
「まさか…。」
リンは冷や汗をかきながら、もう一度扉を力いっぱい押してみるが、やはり開かない。
「誰かー!助けてー!」
リンは必死に声を張り上げた。
しかし、返事はない。体育倉庫は学校の一番奥にあり、今、ここにいる人はリンしかいない。
「まさか、閉じ込められた…?」
恐怖がリンを襲う。
窓はなく、鉄製の扉は外からしか開けることができない。土日は学校が休みなので、月曜日まで誰も来ないかもしれない。
「どうしよう、どうしよう…」
リンはパニックになり、体育倉庫の中を何度も歩き回る。暗闇の中で、自分の心臓の音だけが大きく響く。
「誰か…誰か助けて…」
リンは震える声で呟いた。
しかし、返事はない。体育倉庫は静まりかえり、リンの絶望感は募るばかりだった。
目からは涙が溢れてくる。
ガチャ
あんな頑丈だった扉が開いた。
リンが見ると、そこにいたのは・・・影山蔵人、陰キャだった。
「え!?影山くん!?」
影山蔵人はリンを見ながら言う。
「下校時間過ぎてるよ。早く帰りな。」
振り向いて、立ち去る影山蔵人。
「えー、なんでそんなこと言うの!この状況だよ!?影山くん、先生じゃないし、自分もそうだよ?もっと驚くべきだよ!って話聞けえぇぇー!」
影山蔵人は何も答えずに言ってしまった。
「私を探してくれてたのかな?まぁ、助かって良かった。」
リンは呟くと、教室に戻り、荷物を持つと帰宅したのだった。
リンの中で影山蔵人の存在が印象に残った瞬間だった。
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