夢日記

@712445

第1話 バレーボール

 私はバレーボール部に所属しておりました。しかしながら、実力ふるわず、大会でもレギュラーメンバーの背中だけを見つめる情けない学生時代を送っていたのです。

 リベロ(レシーブ専門のポジション)として活躍するSくんは、運動神経のない人間を虫けらのように見ておりました。

「おいN!お前今度の大会もレギュラーじゃねぇの?」

「ああ、そうなんだよ。でもHやMだってそうだろ?それにKも。」

私は、いつも答えにつまるとこんな風に攻撃の的をそらそうとするのでした。しかし、こんな浅はかな考えはSくんにはお見通しです。

「あー、Kはいいんだよ。あいつは面白いし、痩せたら動けるデブなんだから。それに、HとMのことは知らん。問題はお前だよ。」

「」

「お前は身長あるくせにジャンプ力がないから、アタッカーとしても使い物になんねぇよな。」

「その通り、S君の言う通りだ。」

どう答えたとしても、逃げ道は何処にもございません。

土俵際で踏ん張る術すら持たない私は、潔く負けを認めてしまいます。

彼が何故こんなにも苛烈な言動で責め立てるのか?その答えを知っているからこそ、私はゆとりを持って勝ちを譲ることが出来るのです。

彼は同級生の中でも特に背が低い。そのことをコンプレックスに思うのと同時に、リベロとしての専売特許を得た彼は、リベロ以外のポジションに付けないことのお題目に利用できるのです。俺は背が低いから、アタッカーやブロッカーになることはできない。しかし、Nはどうだ?奴は俺よりはるかに背が高いのに、部活に対して怠慢な姿勢で望んでいるからこそ、レギュラーになれないのだと…

彼の心の内をそこまで読んだとしても、私は万年補欠でいることに誇りを持つことは出来ませんでした。

その証拠に、退部してから6年経った今でも毎日のように、夢を見るのです。夢の中で私は、彼との間の前記のやり取りを交わしています。

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