第49話 脱出

「とりあえずここから出ようぜ。これ以上ここに居座っても意味がなさそうだし」


 その言葉に、二人は揃って首肯する。だが、すぐに出るとはいえ、この十人弱の子どもたちをどうするのか。そのような問題点が残っていた。


「ん…ここに誘拐をしてきたってことはさ、何かしら運ぶための馬車とかあるんじゃない?それで運んでいけば余裕で十人ぐらいは入るんじゃないか?」

「ああ。それで行こうか」


 抱きかかえていた子どもを下ろし、外の様子を見る。どうやらまだ人々が活発に動いていないらしく、全くと言っていいほど人が居なかった。それを好都合と捉え、急いで馬車を探す。


「あった…けど…」


 そこにあったのは、全く手入れされていない馬車と、やつれた馬だった。


 これじゃあ衛生的にも、運搬も無理だと悟り、馬を解放してから宿の中に戻る。


「馬車はもう無理そうだ。汚すぎる。あと馬車じゃなくて車だった」

「いや、行けるよ?」


 愛瑠が口を開く。


「この世界の汚れっていう概念は、耐久値って言うものがあるわ。私達のHPみたいなものよ。例えば蜘蛛の巣だったら50、カビだったら250って感じね。そこで、水を掛けると10、ブラシで擦ると30、水を掛けた場所をブラシで擦ると50減るわ。幸い、この宿には水が大量にあるし、ブラシは…まぁ探せば見つかるでしょ。それでそうじしましょ」

「さすが運営側」

「でしょ。あと、馬車は走力が合計で1000以上あれば動かせるわ」


 胸を張って答える愛瑠に、疑問に思ったことをそのまま伝える。


「なぁ、それって、愛瑠のワンオペにならないか?」

「え」


 このあと、愛瑠が馬車の掃除をサボったのは言うまでもない。


「よし、これできれいになったかな?」


 愛瑠がサボったため、時間が少しかかったが、なんとかきれいな状態に戻した。

 愛瑠が言う通り、蜘蛛の巣は水をかけたブラシで擦るだけですぐに取れた。


 そして、まだ少し怯えている子どもたちを乗せる。

 すると、そこに居た子供全員から、感嘆の声が漏れた。そして、用意した椅子に全員が並んで座る。最初に見たときよりも顔に笑顔が溢れている。


 こっちの子供は問題なかった。だが、もう一人の高校生こどもが問題だった。


「やだ!なんでひとりで押さなきゃいけないの?!みんなで押そうよ!」

「仕方が無いでしょ…僕が走力100の時点で最大500までしか出せないんだから…」

「そもそも快はどうするのよ!私が1000で走ったら死んじゃうでしょ!」

「持つ部分にしがみついておくよ…」

「うう…今だけでも魂を取り込んでくれれば…んむっ?!」


 快が愛瑠の口を口で塞ぐ。


「魂を取り込むなんて、行けない子だ」

「はう…」


 その後、愛瑠はご機嫌で押してくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

え?自分が魔王?殺人鬼?多分それ、冤罪です… むぅ @mulu0809

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ