スキルプレイヤー
学校を終えた後、竜は家に帰った。
「ただいま~……って、誰もいないんだけどな」
リビングには誰もおらず、机の上にはお金とメモが置かれていた。
「え~と、なになに……『今日も遅くなるからそのお金で適当に食べてね。母より』……了解」
竜の両親は遅くまで働いている。
家に帰ってこない方が多い。
だが別に家族関係が悪いというわけではない。
むしろ良い方だ。
「今日はなにを喰いに行こうかな~……」
金を財布に入れて外食しに行こうとした。
その時、
ピンポ~ン。
インターホンが鳴った。
「ん?誰だ?」
ドアを開けると、そこには段ボールを持った女性の宅配業者がいた。
「お届け物です~。サインをお願いします」
「あ、は~い」
竜はボールペンでサインをし、荷物が入った段ボールを受け取った。
「誰からだ?ん?……魔女?」
送り主の名前が魔女と書かれていた。
どこの誰だ?と思いながら段ボールを開けると、中に入っていたのは白いサングラスのような機械と一枚の紙。
紙には『あなたはスキルプレイヤーに選ばれました。フルダイブVRゲームをどうぞ楽しんでください』と書かれていた。
「スキルプレイヤー……つまりゲームか、これは」
どういうわけでサングラス型ゲーム機が届いたのか、竜には分からなかった。
だがそれよりもフルダイブVRゲームというラノベやアニメの世界だけでしか聞いたことが無い言葉を聞いて、興味がそそられた。
「飯を食いに行く前にちょっとやってみるか」
竜はソファーに座り、サングラスを掛けた。
するとサングラスが蒼く光り始め、竜の視界が白く染まった。
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気が付くと竜は薄暗い森の中にいた。
「スゲー……これがフルダイブVRか。現実とぜんぜん変わらない」
手を握ったり開いたりしながら、竜は素直な感想を述べた。
少し寒い風。植物の臭い。獣の鳴き声。
どれもがリアルだった。
竜がゲームに感動していると、目の前に白いローブを羽織った銀髪の少女が現れた。
「初めまして黒川竜。新たなスキルプレイヤー」
「スッゲー……なにこれAI?NPC?」
「違うよ。僕はこのゲームの開発者。魔女って呼んで」
「魔女……」
「さぁ、このゲームの説明をするよ。このゲームは痛覚以外はすべてリアルに感じるようになってるんだ」
「スゲー……マジか」
「マジ。このゲームの特徴は四つ。一つはこのゲームに参加するだけで一億円が与えられる」
「一億円?ゲームの世界の?」
「違うよ。本物だよ」
「ハハハ・面白い冗談だな。二つ目は?」
「二つ目はゲームをするたびにスキルという特殊能力が手に入る」
「スキル?」
「スキルカードって言ってみて」
「スキルカード」
竜がそう言ったその時、彼の目の前に緑色に輝くカードが現れた。
カードは粒子へと変わり、竜の胸に吸い込まれる。
すると今度は竜の視界に、半透明のウィンドウのようなものが出現した。
<><><><>
『
・強硬な装甲に覆われた機械の鎧を纏う。鎧を纏った者は、身体能力が大幅に強化される。
<><><><>
ウィンドウに書かれたスキルの名前と能力。
それを見て竜は少し興奮した。
「これが俺のスキル。……早く使ってみてぇ!」
「慌てないの。すぐに使えるから」
「それで……三つ目の特徴はなんだ!?」
「三つ目の特徴はね」
魔女は口元を三日月に歪めて、答える。
「このゲームはただのゲームではなく……デスゲームであることだよ」
「……え?」
竜は呆然とした。
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