スキルプレイヤー~大切な人達が死ぬVRデスゲームに参加した少年は、ゲームクリアをし続ける!~

@gurenn1950

第一章

プロローグ

 薄暗い森の中、機械仕掛けの鎧を纏った少年は戦っていた。この世のものとは思えない生物と。


「グギャグギャ!」


 その生物は醜い顔をしており、肌は緑色で、木の棍棒を持っていた。


 ファンタジーゲームによく登場するゴブリンだ。


 そのゴブリンに向かって少年は拳を放った。

 鎧の効果で強化された拳撃はゴブリンの頭をトマトのように潰す。

 赤い血と脳みそが地面や木に飛び散る。


「ハァ…ハァ…これで三匹目」


 ゴブリンを倒した少年は黒髪と黒目。

 背が高く、顔もよく、まるでスポーツ漫画に出てくる主人公のよう。


「クソ……なんでこんなクソゲーをやらなくちゃいけないんだ」


 少年—――黒川竜は思い出す。このゲームを始める前のことを。


<<<>>>


「あ~……彼女が欲しい」


 とある高校の教室で黒川竜はハァーとため息を吐いた。

 男子であれば一度は口にしたことある台詞。

 その台詞を聞いた男子二人は「またか」と呟く。

 

「またそれか……いい加減に諦めろ」


 凛々しい顔立ち。

 サラサラとした髪と細長い身体。

 そして眼鏡を掛けている。


 まさに勉強ができるクールイケメン少年。


「そうだよ。今は諦めて来世に期待したら」


 そう言ったのはクールイケメン少年とは違い、中肉中背で平凡な顔立ちをした少年。


「電次、シュウ。……お前ら親友なら慰めてくれよ。例えば『大丈夫、いつかできるぞ』とかさぁ~」

「無理だな」

「無理だね」

「無理ってなんだよ無理って……酷くない!?」


 本気で泣きそうになる竜。

 そんな彼に恋人が出来ない理由をクール眼鏡少年—――雷田電次らいだでんじが告げる。


「お前は顔はいいし、運動神経もスポーツ選手並みに高いが……とてもバカだ」

「グッ」

「女子に『君、おっぱい大きいね。なにカップ?』ってドストレートに聞いて殴られるし」

「グハッ」

「入学式の時、寝ぼけていたからと言って男子の制服ではなく女子の制服でくるし」

「ガハッ!」

「おまけにテストではいつも赤点ギリギリ」

「グボラッ!」

「これがお前がモテない理由だ」

「い……痛いところを突きやがって、それでも親友か!」

「親友だから言っているんだ……あとバカなお前が悪い」


 何も言い返すことができない竜。

 そんな彼を平凡そうな少年—――森山シュウはフォローする。


「ま、まぁ……竜はそのぶん男子に人気だよね。この学園の殆どの男子達は竜と仲いいし」

「男子にモテても嬉しくない」

「き、きっと可愛い男子と付き合えるよ」

「付き合うのは可愛い女子がいいんですけど!?」


 机に頭をつけて、竜は深いため息を吐く。


「お前等には分からないよ。彼女がいない男子の気持ちは」


 竜がそう言った時、教室に二人の少女が入ってきた。


「失礼します。兄さん…いる?弁当を持ってきました」

「シュウ。手作り弁当……持ってきてあげたわよ」


 一人は長い黒髪を伸ばした和風美少女。

 そしてもう一人は髪を金色に染め、サイドテールにしたギャル系美少女。


「ああ、すまない。りん

「ありがとう、ナナちゃん」


 電次とシュウは二人の少女から弁当を受け取る。


「クソ……めちゃくちゃ羨ましいな。二大美少女と付き合っている親友共は」


 学園二大美少女と言われている和風美少女、雷田らいだ凛とギャル美少女、和崎わざきナナ。

 そんな彼女達と電次とシュウは付き合っていた。


(義理の妹と付き合っている電次。幼馴染と付き合っているシュウ。……そして彼女ができない俺……悲しくなってきた)


 何度目か分からないため息を吐いた竜は、窓から空を見る。


「マジで彼女できないのかな……俺」

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