第45話 忠誠
厳しい修行を繰り返し、俺は最強になった!全ての上級職を経験し、ついに最強ジョブ【真勇者】に転職したのだ!
物理だけでも盗賊から始まり弓師、戦士、格闘士、レンジャー、武芸家、踊り子、双剣士、暗殺者、忍者、騎士と大量の職業を100まで上げた。そして魔法職でも同じことの繰り返しだ。
経験値2倍アイテムを装備しての経験値ボーナスモンスター狩りから始まり、自由に動けるようになった後は仲間呼びをするモンスターの自動狩りをした。思い通りに動かないモンスターを誘導して状況を整えるのにはとても苦労した。
そんな苦労の果て、全ての上級職を100まで上げてやっと真勇者というジョブになれる。真勇者は1レベルUP毎に各ステータスが20も伸びるぶっこわれジョブだ。
やり込み要素でしかないからぶっ壊れも何も無いんだけど、真勇者の状態で魔王を倒すと魔王が仲間になるというシナリオぶっ壊れボーナスが隠されている。
魔王は魔王として生まれてしまったから仕方なくやっている女の子で、仲間になった後は当然ヒロインに加わる。そして俺の一番推しでもあるんだ。いつもバトルドレスを着ていてエロいんだよなぁ!
ゲームだとクリア後に挑戦する無限ダンジョンくらいしか使う場所がなかったけど、現実になった今なら側にいてくれるだけでいいんだ。早く助けてあげて俺の嫁にしたい。
「陛下、住民から税の軽減について陳情が届いております」
「またぁ?魔王軍と戦うために集まってるんだから仕方ないじゃん。魔王軍の味方なの?」
「しかし、魔王軍と言っても今のところ何も動きが無く…」
「いずれ来るから、その時に国民が殺されない様に配置してんの。わざわざ山の方にも割り振ってるでしょ?いつかは分かんないけど殺されるよりいいじゃん。そのうち報告が来るよ」
「……承知しました」
「それより宮廷魔道士のアマンダを最近見ないんだけど?」
「探しているのですが行方が分からず、出奔したようです」
「えぇ~、もったいない」
綺麗なお姉さんだったのに!ヒロインハーレムに加えるには歳が行き過ぎていたけど、ヒロイン達が成長するまでの間だけ俺の物にしておくつもりだったんだ。
「捕まえられない?」
「身内がおらず、彼女の能力は傑出していたので難しいかと」
「ちっ!」
思う通りにならない。ヒロイン達も集めているがまだまだ子供だからか上手く行かない。
幼馴染のミレイ、エリアリルリの3人姫は手に入れた。後は行方不明のリリスと魔王の二人だ。
手に入れたとはいえ、ミレイは反抗期、エリナとアリーは対魔王軍として呼びつけているだけなので少し距離がある。そしてルーリアは俺を信仰している様でなんか変だ。パーティーを組んで戦えば俺の強さを見てすぐに惚れるんだけど、本来のシナリオだと魔王城に向けて少数で旅に出るのは数年後の出来事なんだよなぁ。早く魔王軍攻めてきてくれないかな。
「姫たちとお茶するから準備しといてくれ、これも外交ってやつだろ」
「既にご用意しております」
よしよし、今日も暇だし親睦を深めよう。王になるのが早すぎたんだよな、あの王がクソだったから仕方ないんだけどさ。
「アレス様!退屈ですわ、早く行きましょ!」
元王女のこいつは懐いているけど、ヒロイン達と比べると一段落ちるしホント上手く行かない。
それでも俺は勇者なんだ。みんなをまとめて、魔王を止めて、世界を平和にしてやるぞ!
――――――――――
『ギャアシャア!』
「でぇりゃあぁぁぁぁ!!千手尖天撃!!」
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!!
超高速で繰り出されるマシンガンブロー!その一撃一撃が魔物の体を貫通し天へと突き上げられる!
『ギャアアアァァ…!』
気色悪いエイリアンの様な何かが細切れになって消えていく。ここはダンジョンの80階層。俺は以前よりも遥かに深く潜ることに成功していた。
以前の力を超えたわけじゃない、敵が弱くなった。これは恐らく俺が何かから開放されたことが影響しているんだろう。
まぁ細かい事は知ったことじゃない。ここにはいくらでも敵がいる。深く潜るだけで強い敵に出会えるんだ。
スキル発動による衝動に突き動かされ、ひたすらに敵を殴り続けてここにたどり着いた。以前のように何かに取り憑かれる様な感覚は無い。俺は俺の心のままに、敵を殴り倒し、自分を鍛えている。
「ふぅ、魔石しか残らなかったな。それと宝は宝石か、お土産だな」
仄かに明るい謎のダンジョンの中、腹時計を利用して夜には外に出る。俺は反省と改善の出来る男、がむしゃらに一晩中戦い続ければいい等とは考えていない。
俺は弱い、最強には程遠い。こんな緩いトレーニングであの頃の力を取り戻せるんだろうか?それでも休みも必要なのだ。
バランスだよバランス、俺自身はずっと戦いたいけどこれは仕方の無い事なんだ。強くなるためにはこの方が結局早道。俺は正しい道を歩んでいるだけ。あー!戦いてぇ!でも仕方ねぇんだ!
「おう、飯は出来てるか」
「坊主、俺はおめぇの嫁じゃねぇんだぞ」
「気色悪いことを抜かすな」
以前にも利用した宿を使っている。今はケトも居なくて俺だけだが、休むために仕方なくここを利用しているんだ。本当に仕方なく、休みたくないけど休んだほうがいいから、他に宿を知らないから。
「あ、アレキサンダーくんおかえり!今日も大丈夫だった?」
「お姉ちゃん!今日も大丈夫に決まってるよ!ほら、80階で宝石がでたんだよ!お土産!」
ファラオが装備してそうなクソデカ宝石ギラギラの首飾りをプレゼントする。普通の女性が装備するには重くて仕方ないな、首にかけてだいじょぶそ?
「ブフォォォ!!」
「ありがとう!でもちょっと私には重いかも」
「そっかー、じゃあ売っちゃおうか!」
「そうだね!」
「いやそれ金貨何千枚するんだよ…、娘が貢がれて荒稼ぎしてるの辛いんだが」
「アレキサンダーくん、寝る前に一緒にお風呂入る?」
「えーー!?……いいの?」
「駄目に決まってんだろうが!アンナ!そんな事したら承知しないぞ!」
「もー、冗談じゃない。それにアレキサンダーくんはこんなに小さいのよ?」
「駄目だ駄目だ!そいつの中身は血に飢えた野獣だぞ!」
「もー」
もー、なんて言っちゃったりなんかして。宿屋の姉ちゃんアンナとの夜を過ごす。
昼間は魔物の血を啜る修羅、夜はお姉ちゃんに甘やさかされるショタ、2つを使い分けることで俺の精神は完全に健全な状態を保っているのだ!
やはりおねショタ、おねショタは世界を救う概念。
冗談で言っているんじゃない、一時は本当にやばかったんだ。魔物の生肉を齧りながらダンジョンに入り、なんかやばい物に目覚めつつあった。偶然転移装置を踏んでしまったついでに久しぶりに人間の飯を食っていたらアンナに出会ったのだ。あの偶然が無ければ今頃どうなっていたことか。全てはおねショタの導きだ。おねショタに感謝を、全ての姉にありがとう。
朝、温かいベッドで目覚める。お姉ちゃん体温の柔らかくてふわふわで花の匂いのする幸せの布団だ。金貨3000枚で買い取れるかな?
お姉ちゃんが幸せそうな顔で寝ている。一緒に布団に入って俺より先に寝て昼まで爆睡するだけで、親父の生涯の稼ぎを一晩で稼ぐんだから大したもんだ。
「おう、朝飯出来てるか」
「俺はお前の母ちゃんじゃねぇんだぞ。娘には何もしてないだろうな」
「下衆な事を抜かすな、見ろ俺を、こんなんで何をするってんだ」
旅に出て半年、俺は6歳くらいに縮んでいた。食べた桃は10個。若返りの成分はかなり抜くことに成功していた。それでも縮んでしまったのは仕方ない。
「俺はちょっと里帰りしなきゃならん。娘を守れよ」
「あんなの持ってるのがバレたら何をしたって守れねぇよ、持って帰れ」
「でも一度あげたものだし…そんなの恥ずかしいし……」
「持って帰れ!」
「誰にも見られないようにしてあるからそんなに気にするな。それより移住したくなったら俺の国に来ていいからな。その時は竜と一緒に来て運んでやろう」
「そりゃ豪勢なこった。考えとくよ」
信じてねぇな。まぁいいんだが。
「じゃあな」
街を出て国を目指す。
ある程度力は戻った。4歳か5歳当時くらいの体力があり、技術はあの頃よりずっと上。走る時も時速300km程度は安定して出せている。
もう勇者くんは余裕で倒せるだろう。戦ってるところを見たことはないが、とても強そうには見えなかったぞ。
この状態で最も警戒が必要な相手が俺の力を吸った連中ってのが笑えねぇな。
「母者、約束通り半年で戻りました」
「アレキサンダー!無事だったのね!」
『みんな心配したのです!』
「アレキサンダー強くなってるよね?ぼく分かるよ!」
「ありがとう、まだまだだがそれなりに力は戻したぞ」
服を脱ぎミチミチに満ちた体を見せ付ける。素に戻った筋肉は再び密度を取り戻し、人の限界を遥かに超越した密度を誇っている。現在の体重は約500kg、常に魔力操作で周囲への影響を減らしていなければ地面の上を歩くことすらままならない。
結局強くなるために必要だったのはなんだったのか?
甘えのない環境だったのか、可能性の実が必要だったのか、厳しい戦いが必要だったのか、それともゲーム的な経験値が必要だったのか。分からない、きっと全てが俺の経験となり力になっているんだろう。
「ふぅぅぅぅっ」
呼吸により筋肉をパンプアップさせながらフロントリラックスの姿勢、そこから得意のバックダブルバイセップスで魅せる!
ここまで走ってきた汗が荒れ狂う海の様な筋肉山脈をテラテラと照らし、溢れる生命力が見るものを圧倒する!
「えぇぇ…前はあんなにかわいかったのに……」
「母者!?」
「ふふふ、凄く頑張ったのね。母は誇らしいです」
「母者……!」
その時、母者から小さな光の玉が抜け出した。それはふわりふわりと俺の元へ、これはあの時に見た俺から抜けた力か?
見ているとそれは俺に触れ、溶け込むように俺に吸収された。
ドクン!ドクン!
「うぉ、おおぉぉぉぉ!」
力が込み上げてくる!体が熱い!これは!?
「母者!なんともありませんか!?体から力が抜けたりは?」
「なんとも無いわよ?」
これは力が戻ったんじゃないのか?分からん、熱い衝動は少しで納まった。
『今のは祝福に似ていたのです。ずっと以前に一度だけ、精霊王である母が聖獣を生み出した時に似ていたのです。強い者から弱い者に行う物だと思うのですけど』
「弱いって言うな」
「アレキサンダー強くなってるよ!ぼく分かる!すごいよ!それでこそアレキサンダー!ぼくたちの王様だよ!」
はしゃぐフレアからも光の玉が現れる。そして俺の元へ。
「お!?うぉぉぉぉ!!!!!」
さっきの比では無い猛烈な力の本流!これはなんだ!?フレアの力と心が流れ込んで来るかの様だ!
荒れ狂う力はやがて俺の中で溶けて同化していく。それが納まった時、自分の中に力が戻っていることを確信した。
『少し分かったのです!祝福の様な何か、アレキサンダーを信じて慕う気持ちが力となっているのです!魂が強化されているのです!』
「なるほど、それで?」
『これは王になる儀式の続きなのです!すごいのです!だから竜王様は小さなトカゲに代わってしまわれた後に再び力を取り戻したのです!』
「ふむ、それで?」
『すごい事なのですよ!?これが王の力なのです!』
「で?」
『凄いのがわかんないのですか?やっぱりアレキサンダーは頭の方はからっきしなのです』
「ふむ」
ガッ!
目にも止まらぬ速度でケトを掴む!
『は、早いのです!ばかな!半年前はあんなにざぁこだったのに……!』
「てめぇやっぱり俺の事を舐めてるじゃあねぇか!考えてみりゃあおめぇには分からせをしたことが無かったからなぁ!」
「あーあ、ぼく知らないよ」
「遠くでやってね」
「行くぞオラァ!!」
その後、魔法で水竜を作り出したりウォーターカッターを駆使するケトを相手に分からせを実行した。
「何が精霊だ!敬礼しろオラァ!」
『こ、こんな筈ではなのです…!』
しかし最後までケトから光の玉は現れなかった。こいつやっぱり俺のこと舐めてんな。
――――――
1つ前の話を更新後にブクマが減り散らかして私の髪も抜け散らかしました!
割とよくできたと思っていたんですが難しいです!
悪くないじゃんと思っていただけましたら☆で髪を復活させてください!
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